海外馬券91戦45勝の筆者によるサウジC展望。日本馬の連覇はあるのか?
日本馬4頭の展望は?
サウジC(GⅠ)がいよいよに迫った。
昨年はパンサラッサ(栗東・矢作芳人厩舎)が逃げ切って優勝。日本に歓喜を届けたこの世界最高賞金額のレース。今年はメイショウハリオ(牡7歳、栗東・岡田稲男厩舎)が取り消しとなったのは残念だが、それでも4頭の日本馬が出走する。
また、今年はJRAで馬券が発売される。新聞等で発表している当方の予想は、ここまで海外馬券が発売された91レース中、ほぼ半分の45レースを的中。1番人気馬に◎を打ったのは23頭のみで、日本馬に◎を打ったのとなると1レースだけ。それを考慮すれば、手前味噌ではあるが、上々の結果だろう。という事で、今回は簡単にではあるが、展望を綴り、参考にしていただければ、と思う。
まずは日本の両横綱格といえるウシュバテソーロ(牡7歳、美浦・高木登厩舎)とレモンポップ(牡6歳、美浦・田中博康厩舎)。
前者は昨年のドバイワールドC(GⅠ)を制しているように中東への遠征には何も不安はない。高木師は「1ターンの1800メートルというのがどうか?」と慎重に口にしたが、そもそもの能力が高い上に、展開も向きそうなのでチャンスはありそうだ。
一方、後者はその展開面が厳しそうに感じてしまう。フェブラリーS(GⅠ)とチャンピオンズC(GⅠ)というJRAに2つしかないダートのGⅠを昨年制したように、そのスピード能力は折り紙付き。しかし、今回のメンバーはとくに北米勢にスピードの持続能力のある馬が複頭数いて、激しい先行争いに巻き込まれないかが心配。1ターンの1800メートルというのも必ずしも好舞台とは思えない馬だけに、展開がカギになりそうだ。なんとかこの馬に向いた形で流れに乗ってほしいばかりである。
デルマソトガケ(牡4歳、栗東・音無秀孝厩舎)は3歳だった昨年、UAEダービー(GⅡ)を勝ち、ブリーダーズCクラシック(GⅠ)では2着。実力がピカイチなのは疑いようがない。ただし今回は輸送時にトラブルに見舞われた。音無師は「顔の左側を他の馬に噛まれ、逃げた拍子に右側を壁か何かにぶつけたみたいで目が開けられないくらい顔が腫れてしまいました」と言う。外傷性の鼻出血もあったそうで、実際、到着後、到着日を含め4日間、馬場入り出来ていないとの記録が上がっている。この点で仕上がり具合に不安は残る。もっとも、その後のリカバリーは至って順調のようで、追い切りやゲート練習も消化出来たので、何とか良い状態に戻し、出て来てほしいところである。
残す1頭の日本馬クラウンプライド(牡5歳、栗東・新谷功一厩舎)は日本勢の中ではレーティングが最も低い。ただし、絶好の6番枠からのスタート。枠順抽せん会でこの枠を引き当てた松田全史調教助手は「めっちゃ良い枠で、狙っていたところ。他馬の並びを見ても好位で競馬が出来そうです」と笑顔で語る。
迎え撃つ強力外国勢
これら日本馬が倒さなければいけない外国勢はハイレベルなメンバー構成だ。
大将格はなんといってもホワイトアバリオ(牡6歳、米ダトローJr.厩舎)。昨秋にはウシュバテソーロやデルマソトガケを破ってブリーダーズCクラシック(GⅠ)を制覇。当時、私はグリーンチャンネルや新聞各紙でもこの馬を本命に推したが、その理由の1つとして、転厩後すっかり安定感が増した走りぶりをあげた。レース前、現地アメリカで取材したところ「爪が弱かったので前脚2本を接着装蹄にしたら、弱点をカバーしてしっかり走れるようになった」とダトローJr.師。サウジアラビアでもその点を確認すると「今回は4肢全てを接着装蹄にしている」との事。ブリーダーズC以来の休み明けという点がどうかだが、速いペースを好位で流れに乗って抜け出せる能力には一目置かざるを得ない。
ペガサスワールドC(GⅠ)の1、2着馬、すなわちナショナルトレジャー(牡4歳、米バファート厩舎)とセニョールバスカドール(牡6歳、米フィンチャー厩舎)もまた怖い存在だ。
前者は昨秋のブリーダーズCダートマイル(GⅠ)で年度代表馬コディーズウィッシュと差のない2着に健闘後、ペガサスワールドCを制覇。時々見せるスタート難で信頼性に欠ける点はあるが、その先行力と臨戦過程から、侮れない。
後者は末脚勝負型なので、1ターンの舞台は合いそうだ。追い込み馬のわりに内を突くレースぶりが目立つので、今回は13頭を捌かなければいけない点がどうか。それでもこのメンバーに混ざっても末脚は充分に通用しそうで、一発が期待出来そう。
もう1頭、ペガサスワールドC組のホイストザゴールド(牡5歳、米スチュアート厩舎)はテンに速く、逃げが予想される1頭。日本馬にとっても展開のカギを握る馬であり、展開次第の馬でもある。前走のレースぶり(逃げて結果4着)からも距離は多少長いか……。
カーメルロード(牡4歳、沙アルバダー厩舎)は地元馬で、レーティングが低く、外枠になった点でも割り引かざるをえないが、前走の圧勝ぶりは目を引き、距離延長さえこなせれば、といったところか。
ドバイで休み明けを勝利で飾って参戦するアイソレート(牡6歳、UAEワトソン厩舎)だが、時計的には平凡な上、距離延長でどうか……。
以上、簡単にではあるが、有力各馬を紹介させていただいた。日本馬にとっては決して楽なメンバー構成ではないが、芝、ダートを問わず、中距離戦は日本勢にとっては最も実績を残せているカテゴリーなので、快哉を叫べる結果が待っている事を期待したい。また、他のレースにも日本馬計17頭が出走(サウジCと合わせると21頭)する予定だ。合わせて、応援したい。
※なお、予想の印に関してはグリーンチャンネルやスポーツニッポン、東京スポーツ等でも発表いたします。参考にしてください。
(写真撮影=平松さとし)