エホバの証人の大会 Q&Aにおける児童虐待にあたる恐れ 国の調査を求める声
12月4日に宗教2世問題ネットワークによる記者会見が行われました。
代表の団作さん(仮名)はエホバの証人が全国で開催した大会について「厚生労働省の要請を行っていない恐れがある」と指摘します。
昨年12月に厚生労働省から「宗教の信仰等に関係する児童虐待等への対応に関するQ&A」(以下、Q&A)が出されており、「言葉や映像、資料により恐怖をあおる・脅す、無視する、嫌がらせをする、児童本人の自由な意思決定を阻害する」などが児童虐待にあたるとしています。
「児童虐待を容認していない」とするならば、信者への説明は必須
代表は「今年3月31日、厚生労働省はエホバの証人に事実確認を行い、教団側は『児童虐待を容認していない』と説明しました。その際、教団に対してQ&Aを信者に周知することを要請しました。それを受けて教団は5月10日に『児童虐待を容認していない』とする文書を信者へ周知しましたが、Q&Aについての記載がなく、その後も信者へ周知されたとの情報には接していません」といいます。
教団が「児童虐待を容認していない」とするならば、それが起こらないようにするために、どのようなものが児童虐待にあたるのかの指導を信者に行うべきで、公益法人である宗教法人としての務めだと思いますが、それを行っていないとすれば、由々しきことといえます。
学校を休んでの大会への参加を求めたとすれば、Q&Aに該当する恐れも
同代表は「今年6月から10月にかけて、教団主催の大会を公共施設及び教団施設合わせて42の施設において開催しましたが、この集会自体がQ&Aに違反している恐れがある」と話します。
大会は教団の公式HPにより2023地区大会プログラムとして発表されており、全ての会場で同様に行われているということです。
教団が信者向けに出した文書を示しながら「教団は『3日間全てにじかに参加できるよう、先生や雇い主に大会の日付を十分前もって知らせてください。他の会場に人があふれてしまうような事態を避けるため、できるだけ、割り当てられた大会にご出席ください』としています。Q&Aでは『適切な養育や教育機会の確保等を考慮せず、様々な学校行事等に参加することを制限する』を児童虐待としていますが、当該文書を読めば、子供自身が教職員等に大会の日程を伝え、学校を休んで3日間の大会への参加を求めたものと解されます。常日頃から信者らに宗教活動等に参加することや、児童には学校生活での行動規制(柔道・剣道の禁止、運動会の応援の禁止など)を求めているなかで、学校を休んで大会に参加することを、教団や信者の親から求められれば、児童がその求めを拒否することは難しく、致し方なく大会に参加した児童もいたものと推測される」としています。
大会内で流されたドラマについても、児童虐待の可能性を指摘
「教義を学ぶためのドラマが放送されましたが、これは子ども、大人の信者の区別なく一律に流されたものです。性的な表現を含んだドラマや、エホバの証人がそれ以外の間違った宗教を滅ぼすといったセリフが含まれたものも確認されました。教義を学ぶ名目であっても、このような行為はQ&A(「教育と称し、年齢に見合わない性的な表現を含んだ資料をみせる・口頭で伝える」)において性的虐待に該当すると明記されています」(代表)
それ以外にも、エホバの証人の家族らが武装地帯を抜け難民キャンプへ避難するという、児童の恐怖心を煽るような1時間以上のドラマも流されたといいます。
「武装集団から追われて逃げ隠れする場面や、児童が死体を発見する場面等、恐怖を煽るような場面を見せた上で、信者のいう通り難民キャンプへ避難した家族が安全を確保したというストーリーを展開し、ドラマの終盤では『組織の指示に従うことによってエホバを信頼していることを示します』として『理解できないような指示だったとしても、エホバが信頼する人を信頼すべきです』というナレーションも挿入されています。恐怖心を煽るような映像を用いており、これはQ&Aの児童虐待に該当する恐れがあります。特に未就学児や小学生の児童に対し暴力的表現や、死体を発見する場面を含むドラマを見せる行為自体が、児童の福祉を害するものといえます」(同代表)
大会に参加した2世らの声
同団体に寄せられた大会に参加した現役2世らのコメントが紹介されました。
「成人した現役2世は『未成年の兄弟が戦争映画のようなドラマ、特に武装集団に子どもが追いかけられたり、死体を見つけてしまうシーンを見て怖がっていた』と話されていました。『小さな子どもに見せるものではないと感じた』とのことです。未成年の2世の方は『大会の日程が登校日とかぶっていたため、保護者からは一応<どちらに行くか>と聞かれたものの、ものも言わせぬ雰囲気であり参加せざるをえなかった。同じような話が3日連続で8時間ほど続き、苦痛だった。大会には子どももかなり参加をしていて、ドラマについては、残酷な描写だから、教育に悪いと思いながら見ていた』ということです」
大会を開催した、自治体や運営会社の対応は?
宗教2世問題ネットワークは、今年6月に教団主催の大会の開催に際して、本人の意思に反して児童が参加の強制をされたり、修学に支障を来したりするものとならないよう、34の開催施設に関係する自治体や運営会社に対して要望書を送付しており、一部の自治体や運営会社の対応について紹介します。
さいたまスーパーアリーナでは「指定管理者が主催者に対しQ&Aを踏まえ適切な対応をとるよう申し入れ、参加者に向けて適切に注意喚起を行っている旨説明を受けた」としており、富士山メッセでは「市と指定管理者が、主催者から要望書に記載されたような児童虐待及び児童虐待が疑われる行為をしないことについて確約を得ている」としています。西日本総合展示場新館では「主催者に対し『本人の意思に反して児童が参加を強制されることや、児童の修学や日常生活に支障を来すことはないか』を確認し、教団は『大会への参加を強制していない。子どもたちの参加は家族に任せている。児童の修学や日常生活に支障を来すものでは決してない』」との回答があったということです。
教団の説明は実態とは、かけ離れているとの指摘
代表は「各自治体への教団の説明は大会の実態や、教団が信者に出した文書の内容とはかけ離れたもので、極めて不誠実なものです。大会に際した公式の文書についても、教団は出席を指示したり強制したりするためのものではないとメディアに回答していますが、わざわざ信者への文書の『3日間全てに』に下線まで引いています。これが参加を求める教団の指示でなかったら何なのでしょうか。これが教団のやり方です。形式的には児童虐待を容認していないメッセージを発したとしても、実態はかけ離れたものであり、教団内における児童虐待が今後も継続していく可能性が高い」と懸念を示します。
カルト思想を持つ団体においては、上からの言葉は神様の言葉としてとらえて絶対視しなければなりません。「お願い」「依頼」の形をとっていても、それは指示と同様なものとなります。信仰が篤い親ほど、その傾向は強くなり「大会に参加しない」という選択肢はなくなると考えられます。親の信仰が深い人ほど、忠実に2世たちに信仰の強制を行うことにもなりかねません。
Q&Aの児童虐待にあたる恐れがある行為を弁護士は指摘
同団体の監事である阿部克臣弁護士は「各大会での実態の確認によって、現在でもQ&Aにおける児童虐待にあたる恐れがある行為を、エホバの証人が継続していることが明らかになったと思います。こども家庭庁は、今年の10月から宗教虐待に関するQ&Aの周知状況等を調査していますが、これは特定の団体を問うものではなく、虐待の状況を調査するものに過ぎません。すでに11月20日にエホバの証人の弁護団で網羅的な虐待の結果が発表されて、JW児童虐待被害アーカイブの方では性的被害の調査を行うなど、弁護団や民間の団体による調査結果が相次いでおりますので、やはり国として、きちんと当該団体について調査を行うことが必要ではないかと思います」と話します。
さらに「宗教虐待と呼ばれるものは、親の上に宗教団体があり、親が信仰に基づいて虐待にあたる行為をしている構図があるので、現在の児童虐待防止法の枠組みでは捉えきれないものがあります。第三者虐待防止法のような新しい法律が必要なのではないか」とも話します。
「周知は、宗教組織として行うことではない」
12月19日、エホバの証人、厚労省の虐待対応指針を周知せず…「政府・行政の役割」(読売新聞)の報道がありました。
エホバの証人は、厚労省から要請のあった児童虐待に関するQ&Aの内容の周知を行っていないことを認めたうえで「周知は政府・行政機関の役割であり、宗教組織として行うことではない」と取材に答えているということです。
教団が今後も、責任をもって児童虐待を起こさせない指導を信者に徹底させないとすれば、阿部弁護士が話すように、民間の団体にだけ任せるだけではなく、国の調査など強い姿勢が求められることになります。