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「金正恩住宅」の断末魔…現場で倒れる人が続出

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
金正恩氏(朝鮮中央通信)

 北朝鮮は現在、首都・平壌で、2025年までに5万世帯分の住宅建設を行うプロジェクトを推進中だ。

 市内北西部の西浦(ソポ)地区では、今年中に4000世帯分の住宅を完成させる目標の下に工事が進められている。

 工事には多くの突撃隊(半強制の建設ボランティア)が参加させられているが、その多くが栄養失調に苦しめられている。デイリーNK内部情報筋が伝えた。

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 金正恩総書記は、今年2月の着工式で、この地区に「4000余世帯の住宅を建設して一つの特色ある市街を形成する重要な対象建設を社会主義愛国青年同盟と白頭山英雄青年突撃隊に一任する」と述べ、社会主義愛国青年同盟の傘下組織の速度戦青年突撃隊が建設にあたることになった。

 1日10時間の無報酬での長時間労働に加え、極めて貧弱な食事のせいで、彼らは栄養失調に苦しめられている。現場で倒れる人も相次いでいるという。

 その食事とはトウモロコシ飯やトウモロコシ麺、塩漬けの大根、大根の葉のスープがすべてで、より栄養のあるメニューに変わる兆しはまったくない。トウモロコシばかり食べていると、ペラグラ(ナイアシン欠乏症)にかかるとされる。最悪の場合は死に至る恐ろしい病気だ。大根の葉である程度は栄養を補っているとは言え、そもそも栄養価が低すぎて栄養失調になるのだろう。

 そのせいで働けなくなる人が続出。出勤率は常に7割を下回っている。情報筋は、突撃隊の食糧事情が悪いのは今に始まったことではないが、こんなに栄養失調の人が出るのは初めてだと述べた。

 食べるものがなく出勤できないという話は、他からも聞こえてくる。

 そろそろ麦やジャガイモの収穫期を迎えることから、北朝鮮全体の食糧事情は改善に向かうと思うが、突撃隊はあまり期待できない。大量の食糧が動くところでは横流しが起きるのが常。いつの間にか量が減っていたり、コメだったはずがトウモロコシに入れ替えられていたりするのは、よく起きることだ。

 国が対策に乗り出さない限りは、西浦地区の今年中の完成は難しいだろう。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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