犬とオオカミの違いとは?人間と暮らすために進化したこと
人間はこれまで様々な動物を家畜化してきましたが、最もその歴史が長いのが犬です。
犬の家畜化はおよそ3万3000年前に中国で始まり、1万5000年前ごろに世界に広まったと言われています。
犬の家畜化はハイイロオオカミを飼いならしたことから始まったとされていますが、犬とオオカミはどのような点が異なるのでしょうか?この記事では、人間と暮らすことで生じた犬の進化についてご紹介していきます。
犬が大きくしっぽを振るのは人間が好むから
犬が喜んだときなど大きく尻尾を振りますが、実はオオカミはあまり尻尾を振ることがありません。オオカミにとって、尻尾を振る行動は群れの中の序列を示すためのもので、犬のように感情を示すものではないためです。異種族である人間に対して尻尾を振るのは犬ならではの行動と言えます。
また、人間に対して犬が尻尾を振る行動については、先日おもしろい学説が発表されました。犬が尻尾を振るのは「人間がその動作を好んでいるから」だというのです。
犬とオオカミの尻尾の振り方の違いは、飼育されてるか否かによるものではありません。同じ条件で飼育された子犬と子どものオオカミを比較しても、犬はしばしば喜んで尻尾を振りますが、子どものオオカミは尻尾をあまり振りませんでした。
つまり、犬は数千年にわたって人間と暮らす中で尻尾を振って感情を伝えるように進化したのです。そしてその進化は「人間が無意識に尻尾を大きく振る犬を好んでかけ合わせる」ことによって生じた可能性が高いと言います。
犬が尻尾を振る様子を好む理由について、学説では「人間はメトロノームのような規則正しいリズムを刻む動きや音を好む傾向があるためではないか」とされています。その傾向については正直ピンとこないものの、犬が尻尾を振るようすは確かに可愛らしいので、よく尻尾を振ってくれる犬が優遇され生き残っていったのは頷ける気もしますね。
丸く表情が豊かになった犬の目
「捨てられた子犬のような目」という言い回しがあるように、犬が人間の顔を伺うように見る視線は、なかなか無視できないものがあります。実はこれもオオカミにはない犬ならではの進化のひとつです。
イギリスのポーツマス大学で自然死した飼い犬6頭と野生のハイイロオオカミ4頭を解剖し比較したところ、犬は品種によらず眉頭を引き上げるための内側眼角挙筋がありましたが、オオカミでは見られませんでした。また、目を大きく開くための外側眼角後引筋についても犬の方が大きく発達していたと言います。
この結果から、犬とオオカミでは目の周りを動かす能力が大きく異なり、表情豊かな目元は犬ならではの特徴であることが示されました。
犬が眉頭を上げたときの表情は人間の子どもの表情や、人が悲しいときに浮かべる表情に似ていると言います。確証はありませんが、犬は「この表情を浮かべると人間は要望を聞いてくれることが多い」ことを経験則的に学び、少しずつ目の周りの筋肉を進化させていったのかもしれません。
犬の進化は人に思いを伝えるため
古くから人間と一緒に暮らしてきた犬は、人間と生活するために進化させてきた部分がたくさんあります。犬の脳の容量はオオカミよりも大きいのですが、その進化も人間の要望に応えるものと言われているのです。
犬の尻尾も、目も、人間へ思いを伝えるために進化しました。人間である私たちは犬のそんな挙動を見逃さず、犬の思いをしっかり受け止めてあげたいものですね。