日銀は小手先の工夫などせず、長期金利の形成を市場に委ねれば良いだけの話では

財務省と金融庁、日銀は5月30日に国際金融資本市場に関する情報交換会合(3者会合)を開いた。これにはやや意外感があった。
たしかに円安が進み、節目とされるドル円の140円、ユーロ円の150円を上回ってきたタイミングではあった。
今回はヘッジファンドなどが仕掛けてきたような動きではなく、欧米の長期金利の上昇などを受けての自然な円安にみえていた。
政府・日銀は急速な円安が進んでいた2022年秋に円買い・ドル売りの為替介入に踏み切っており、今回の会合も為替介入を睨んだものとの受け止め方もあった。
たしかに2022年秋の動きと今回の動きには共通項があった。いずれも英国が先導していたようにみえたのである。
昨年秋にトラスショックが起き、英国債や英ポンドが急落した。英国債が大きく売られ、それはつまり英国債の利回りが上昇し、それが米国債利回りの上昇も招き、欧米の長期金利の上昇によって円安が加速した。
10月21日のニューヨーク時間にドル円は一時151円94銭まで上昇し、32年ぶりの円安水準を付けてきた。21日、24日には政府日銀が覆面介入を実施していた。
今回もその気配を察して早めに動いたとの見方もできるかもしれない。しかし、別にこの3者が会合など開かずとも、円安への対処は可能である。
2022年秋も今回も、欧米の長期金利の上昇が背景であったことは確かだが、もうひとつの大きな要因があった。日銀が異常な金融緩和を続け、イールドカーブコントロールの修正すら動いていないためである。
つまり日本の長期金利が0.5%以下に固定されており、欧米の長期金利が上昇すれば自然と欧米との金利差が拡大してしまうのである。
FRBやECBが今後もの利上げを継続するとの観測もあるため、日銀と欧米の中央銀行の金融政策の方向性の違いも当然ながら円安要因となる。
昨年秋の円安は結果として昨年12月のイールドカーブコントロールの一部修正要因となった可能性がある。
今回も3者会合など行って、市場をコントロールしようとしているのかもしれない。しかし、そのようななことなどせずとも、イールドカーブ・コントロールを即時撤廃すれば、市場は日銀の正常化を睨んだ姿勢を好感し、むやみに円売りはできなくなるはずである。
30日に日銀はチーペスト銘柄等にかかる国債補完供給の要件緩和措置も打ち出したが、このような小手先の工夫などしなくても、長期金利の形成を市場に委ねれば良いだけの話ではないのか。言うまでもないが、長期金利を市場に任すのが、世界の常識(グルーバルスタンダード)となっている。