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別居の「小林麻耶」さんの「夫の姓」が「小林」に!?~「姓」はどういう場合に変わるのか

竹内豊行政書士
小林麻耶さんの夫・國光吟氏が「小林姓」に変わったという報道がありました。(写真:つのだよしお/アフロ)

小林麻耶さんと夫・國光吟氏のお二人は、2018年5月に出会ってから、2か月後の同年7月、「交際ゼロ日」で電撃結婚しました。しかし、最近、別居しているとの報道がありました。

そして、夫の國光吟氏の姓が、妻の「小林姓」に変わったという次の報道がありました。

実は、夫婦をめぐっては別の動きもあった。國光氏が「小林姓」になっていたというのだ。國光氏の知人が語る。 「國光さんは、昨年の春に『國光』から『小林』に姓を変更しています。当時は知人に姓が変わったことを話していましたが、なぜ結婚してから2年近くも経ったこのタイミングなのかと不思議でした。それまでは事実婚で、本当はその時期に入籍したのではないかと言う人もいましたが、真相はわかりません」

引用:別居発覚の小林麻耶 夫・國光吟氏が「小林姓」になっていた謎

姓は簡単に変えることができるのでしょうか。そこで、今回は、「姓」について考えてみたいと思います。

氏の「取得」~氏を取得するのはどういうときか

まずは、氏(法律では「姓」のことを「氏」といいます)はどのようなことが原因で取得するか考えてみましょう。

日本人は出生によって氏を取得します。そして、氏の取得は、「婚内子」(父母が婚姻中に出生した子)と「婚外子」で次のように異なります。

1.婚内子の場合

出生時の父母の氏を称します(民法790条1項)。

婚姻関係にある父母は「同氏」ですから、子の氏は当然定まります。そして、父母の氏を称する子は、父母の戸籍に入ります(戸籍法18条1項)。これを「夫婦・親子同氏一戸籍の原則」といいます(戸籍法6条)。

2.婚外子の場合

婚外子は、出生時の母の氏を称します(同条2項)。

氏の「変動」~「当然」変わる場合

現行制度では、氏は家族関係の変化に伴って次のように当然に変わる場合があります。

1.「結婚」(婚姻)をした場合

婚姻により、夫または妻のどちらか一方は氏を改めます(民法750条・「夫婦同氏の原則」)

民法750条(夫婦の氏)

夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。

2.「養子縁組」をした場合

養子縁組により、養子は養親の氏に改めます(民法810条・「養親子同氏の原則」)。

民法810条(養子の氏)

養子は、養親の氏を称する。ただし、婚姻によって氏を改めた者については、婚姻の際に定めた氏を称すべき間は、この限りでない。

3.「復氏」をした場合

離婚・婚姻の取消、離縁・縁組の取消により復氏(婚姻または養子縁組によって氏を改めた者が婚姻または縁組前の氏に服すること)する(民法767条1項、749条、808条1項、816条1項)

氏の「変更」~「当時者の意思」で変わる場合

氏は当時者の意思に基づいて次のように変わる場合があります。

1.民法による氏の変更~子が父または母と氏を異にする場合

子が父または母と氏を異にする場合には、子は自分自身で家庭裁判所の許可を得て、父または母の氏を称することができます(民法791条1項)。子が15歳未満の場合は、法定代理人が子に代わって申立てをします(同条3項)。

子が父または母と氏を異にする事例としては、

・父母の離婚による一方の復氏

・死亡による生存配偶者の復氏

・父または母の再婚

・父母が養子になる

・父母が婚姻をしていない

こうして氏を改めた未成年の子は、成年に達してから1年以内であれば、届出によって従前の氏に復することができます(同条4項)。

その他、生存配偶者の復氏(民法751条1項)、離婚復氏者の婚氏続称(民法816条)、離縁復氏者の縁氏続称(民法816条)があります。

2.戸籍上の氏の変更~「やむを得ない事由」がある場合

次のようなやむを得ない事由がある場合には、戸籍法により氏を変更することができます(戸籍法107条1項)。

・珍奇・難解な氏

・内縁関係で長年、相手方の氏を通称として使っていた場合

・元暴力団員として周知されている者が更生するのに必要と認められる事情がある場合

・離婚に際し婚氏続称の届出期間を超えた者の婚氏への変更

・婚氏続称した者の婚姻前の氏への変更

また、外国人と婚姻した者は、婚姻の日から6か月以内に限り、届出によって外国人配偶者の称している氏に変更することができます(戸籍法107条2項)。ただし、カタカナ・漢字などの日本文字でなければなりません。その後、離婚や死別した場合には、3か月以内に限り、届出によって元の氏に変更することができます(同条3項)

「旧姓」の使用~「住民基本台帳法施行令等の一部を改正する政令」

これは、戸籍の問題ではありませんが、旧姓を使用できる制度が設けられています。この制度は、社会において旧姓を使用しながら活動する女性が増加している中、様々な活動の場面で旧姓を使用しやすくするために設けられました。

詳しくは、住民票等に「旧姓」が併記できる新制度スタート!~制度を活用するための知識と手続の方法をご覧ください。

さて、小林さんの夫が「小林姓」になったのが事実だとすれば、記事でも紹介されているように、当初は事実婚の状態であって、その後「婚姻届」を役所に出して、その際に夫婦の姓を「妻の小林姓」を選択したというのが現実的でしょう。

その他、婚姻届は夫の「國光」を選択し、その後、夫が偶然「小林姓」の人の養子になり、それに伴い、妻も「小林姓」になったということもあり得ます。ただし、極めてまれなケースでしょう。

日頃、当たり前のように使っている氏ですが、以上見てきたように、家族関係の変化などによって変わることがあります。また、女性の社会進出等によって、選択的夫婦別姓制度の議論が高まっています。時代や社会の要請によって今後「氏」の制度が変わるかもしれません。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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