【河内長野市】なぜ河内長野に高野山大学があるの?空海の理想実現のため、真の教育者を育成する場所だった
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河内長野にある大学といえば、大阪千代田短期大学、そしてその敷地内に新設された高野山大学河内長野キャンパスがあります。
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先日、河内長野消防署のあたりから小山田にある企業の位置を確認するために歩いていたときのこと、歩道上に美しい花壇があるのを見つけました。それは後で知ったのですが、高野山大学の学生たちが荒れ地を耕してつくった花壇だったのです。
しかし、基本的な疑問として、なぜ河内長野に高野山を総本山とする真言密教の僧侶を育成する大学があるのでしょうか?
![高野山の金剛峯寺は高野山真言宗の総本山](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/okukawachiinfo/article/00375185/internal_1673433885395.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
当初私も思ったことですが、もしかしたら一般の人たちは河内長野には真言宗寺院が多いからだと思うかもしれませんね。
![京都の仁和寺は真言宗御室派の総本山](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/okukawachiinfo/article/00375185/internal_1673433918388.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
ところが河内長野市にある真言宗寺院の多くは、金剛寺や延命寺など真言宗御室(おむろ)派という京都仁和寺を総本山とする系統で、高野山直系の高野山真言宗は観心寺など少数派です。なのでそれが理由とは考えにくいですね。
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それ以前に、河内長野キャンパスは真言密教を教える密教学科ではなく、教育学科という学校の先生を育成するための学部でした。
それにしても高野山大学が真言宗の僧侶ではなく、なぜ学校の先生になる人を教えるのか。余計に疑問が湧きますね。いったいどういうことでしょうか?
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高野山大学はてっきり僧侶を育てる大学とばかり思っていた私は、余計に気になったので、高野山大学河内長野キャンパスの関係者にお話をお伺いしようと思い、接触を試みました。
すると河内長野森林ボランティア「トモロス」の堀さんのご紹介により、今回高野山大学の岡本正志副学長のインタビューが実現しました。
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高野山大学の歴史をおさらいすると、835年に朝廷が高野山を開いた空海に対して真言宗後継者育成制度を認めたことが源流です。
![画像提供:高野山大学文学部教育学科](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/okukawachiinfo/article/00375185/internal_1673586862164.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
1886(明治19)年に、古義真言宗大学林として古義真言宗尋常中学林(現:高野山高校)とともに開校しました。
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私立大学としての高野山大学という名前になったのは1916(大正5)年ですが、これは当時の専門学校令に基づくものでした。その10年後の1926年には大学令により、文部省の認可を受け、翌年高野山大学の学部が開設しました。
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こうして高野山大学は、空海の教えである密教の大学として高野山で長く続いてきましたが、21世紀になって新しく文学部教育学科を誕生させることになったのです。
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岡本副学長によれば、かつて空海は高野山とは別に、京都市の東寺の横に、身分の違いなくだれでも通える教育機関、綜芸種智院(しゅげいしゅちいん)を作ったそうです。
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そのような経緯から、以前から大学内で教育者を育てたいとの思いがありました。密教中心からの脱却という考えもあったそうです。
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高野山大学は2015年河内長野にあった旧南花台西小学校敷地に大学を建設する計画を発表し、2016年に開校する予定でした。しかし費用面の問題などもありいったん計画を凍結します。
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それでも教育学部への想いは諦めきれず、模索していたところ、2017年に同じ高野山真言宗系の短期大学であった千代田学園(大阪千代田短期大学)と包括協定を締結しました。
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千代田短期大学は、600名定員の学生が学べる施設なのですが、実際には半分程度しか稼働していなかったそうです。
![画像提供:高野山大学文学部教育学科](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/okukawachiinfo/article/00375185/internal_1673435390875.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
「だったら残りの300名分を使いませんか」という話になり、新設せずに既存の校舎が使えるということで話が一気に進みます。
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こうして2021(令和3)年に教育学部が新設され、河内長野市内に高野山大学が新たに誕生したのです。
教育学科の定員が50名で4学年あるので、最大200名の高野山大学の学生が千代田短期大学の学生と施設を共有することになりました。
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とはいえ、そもそも新しい学科を作ることについては、大学内の理事会でも議論があったそうです。
しかし岡本副学長は、教育をする人材はAIによって置き換えられるものではなく、むしろ今でも教育者が不足しているといいます。教育者不足が結果的にブラック現場になっているとも。
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例えば現在の学校は1人の教師につき1クラス35名程度ですが、多い時には40人を超えているときもありました。
しかし、海外では1クラス20人程度で教育をしています。そのあたりについて文部科学省も意識を始めているようですが、現状はまだまだとのこと。
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岡本副学長は今回の教育学科はこれまでにない教員育成プログラムを提案したそうです。
「今までの教育学科は文科省の決まりもあり、教員免許取得が目的となっていました。つまり文科省の決まりごとに従えば良かったのです」
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しかし、岡本副学長はそういう現在の教育学科のあり方に大いに疑問を持ち、独自のカリキュラムを構築しました。
![岡本副学長の著書](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/okukawachiinfo/article/00375185/internal_1673435576064.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
「現場の教育者としてが、いちばん重要なことは人に寄り沿う力、つまり人間力が大事なんです。このことを教師育成の場に持ち込みたかったのです」
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しかし岡本副学長のカリキュラムは従来の教育方法と異なるため、文科省と何度も話し合いながら、ついに副学長の強い思いが通じて、発案したとおり認められました。
![画像提供:高野山大学文学部教育学科](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/okukawachiinfo/article/00375185/internal_1673435642217.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
「大学の教育学科では、小学校などに行く教育実習というシステムはありますが、それとはまったく別です。教室での学びだけではなく、いろんなことを学生に体験させる。それは、これまでの彼らの人生で出逢ったことのない人に会わせることなのです」
と、岡本副学長は熱く語りました。
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それが週に1度行われている体験の日というものです。
たとえば、今回副学長を紹介していただけるきっかけとなった堀さんの森林ボランティアトモロスさん。つまりトモロスさんの活動を学生にいっしょにやってもらうというもの。
![画像提供:高野山大学文学部教育学科](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/okukawachiinfo/article/00375185/internal_1673435773658.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
普段の生活で木を切るなどの森林保全作業の機会はなかなかありませんから、これを通じて学生に貴重な体験をしてもらおうというのです。
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また、羽曳野にある乗馬クラブのクレインさんにも体験に行きます。
これは学生が現場で馬の世話(ホースセラピー)を体験するのですが、これがすごく学生の感情育成に効果があるそうです。
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「馬と接しても馬は語りません。こちらから察する必要があります。つまりこれが子供の様子を察することにつながるのです」(岡本副学長)
言われてみれば確かにそうですね。
![里山ひだまりファーム](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/okukawachiinfo/article/00375185/internal_1673435890678.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
そのほかにも、里山ひだまりファームさんの棚田での農作業体験などがあります。
奇しくもインタビューの日は、学生は体験の日で誰もいなかった(大阪千代田短期大学の学生だけ校舎内にいた)のは、そいういうことだったんですね。
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また、高野山大学は4学期制を導入。これは早稲田大学などでも取り入れている制度で、そのため試験が年間4回あるそうです。
「科目数を減らせると、勉強に集中しやすいです」(岡本副学長)
![画像提供:高野山大学文学部教育学科](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/okukawachiinfo/article/00375185/internal_1673435967662.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
これはひとつの科目をしっかりと学ばせたいためなのだそうで、欧米方式をあえて採用しました。
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このほかの活動としておもしろいものでは、昼休みを使った柿畑の利用があります。
![画像提供:高野山大学文学部教育学科](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/okukawachiinfo/article/00375185/internal_1673436046299.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
これは手が足りないため放置されていた柿の木畑を、持ち主の農家さんと交渉して世話をしているとか。その木の数4・50本ということですが、収穫した柿の実は花の文化園で販売体験もしています。
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それから、記事の冒頭にあげた花壇活動もあります。バス停前の空き地が草ぼうぼうだったところに花壇を作ったらどうかということになり、市の土地をお借りして土地を開墾というところから始め、花壇を作り花の文化園の協力で花を植えたのです。
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これは、いわゆる産学官連携というもの。このことは隣にある病院から大変感謝されたそうで、「ありがとうの体験」という教育につながりました。
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高野山大学の教育学科の気になる学費はこちら(外部リンク)に詳細があります。
そのほか独自の奨学金制度があります(外部リンク)。これは表を見てかなり驚いたことなのですが、なんと10を超える奨学金制度があり、最大の特徴としてあくまで給付なので卒業後の返還義務がないことです!これはありがたいですね。
そのほか日本学生支援機構の返還が必要な月額貸与や提携教育ローンも利用できます。
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また岡本副学長が口頭でおっしゃったのですが、下宿の利用者や遠方からの通学の際にも金銭的補助があるとのこと。詳しくは大学にお問い合わせください。
また学生だけでなく社会人向けにも講義を開放しており、1科目あたり2万円で学べるそうです。
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なお、以前は教育学部を卒業すると保育士、幼稚園教諭や小学校の教諭一種免許が取得できましたが、2023年度から新たに中学校や高等学校の英語の一種免許が取れるようになったそうです。
卒業後どの年齢の子供への教育者になるか選択肢が広がったわけですね。
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「高野山」という名前のため、どうしても僧侶を育てる学校という印象がありますが、そうではなく、かつて空海が目指していた「あらゆる人に教育の場を提供する」という考えが源流となり、指導するべき教師を育成する機関であるということ。
ということで、これまでどんな学校なのか疑問だった点、高野山大学教育学部について岡本副学長からお話を伺いました。
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それも文科省のやり方をそのままなぞるのではなく、日本初の教育育成プログラムを構築し、新たな教育者への育成に情熱を燃やしている。河内長野にはこんなに素敵な教育の指導者と教育者育成機関があるのかと、お話を伺い、ただただ頭が下がる思いでした。
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高野山大学文学部教育学科では現在、来年度の学生を募集しているそうです。もし真の教育者を志す受験生がいたら、他の大学の教育学科とはひと味違う高野山大学を選択肢に考えてもよさそうですね。
高野山大学 教育学科 河内長野キャンパス(外部リンク)
住所:大阪府河内長野市小山田町1685 大阪千代田短期大学内 本館
電話番号:0721-53-1101
アクセス:近鉄・南海河内長野駅及び南海千代田駅からバス 東峯口バス停下車徒歩2分
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