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【Jリーグ勝負のカギ】浦和を救ったズラタンのプレスバック(名古屋グランパス×浦和レッズ)

河治良幸スポーツジャーナリスト

豊田スタジアムで行われた名古屋グランパス×浦和レッズは前半に武藤雄樹が先制点、後半に途中出場のズラタンが追加点を決め浦和が0−2で勝利。4連勝で2ndステージの首位に躍り出た。その浦和にとって最大のピンチを迎えかけた80分にチームを救ったのはズラタンのビッグプレーだった。

1点をリードされて前半を終えた名古屋は77分までに3枚のカードを切り、5バックから4バックに変更して攻勢をかけていた。そして迎えた80分、右サイドから仕掛けた名古屋はアタッキングサードに6人が攻め込んだ状態で、右サイドバックの矢野貴章がエリア内へクロスを送り、そこに松田力と小川佳純が飛び込む。

そのボールをボランチから後方をカバーしていた阿部勇樹が辛うじてかき出すが、阿部のポジション移動によって生じていた手前のスペースに名古屋の田口泰士が走り込んだ。そこでボールを拾って前を向けば得意のスルーパス、あるいはフリーでミドルシュートも狙える状況だったが、田口は背後からプレッシャーをかけてきたズラタンにバランスを崩され、ファウルのないまま浦和にボールを奪われることとなった。

ズラタンは全体が押し込まれた状況であらかじめ自陣寄りに引いていたが、セカンドボールに対する彼の素早いプレスバックが無ければ名古屋にとって大きな得点チャンス、浦和にとっては最大のピンチになった可能性は極めて高い。まさにチームを救うビッグプレーだったが、その直後にはカウンターに合わせてゴール前まで駆け上がり、クロスのターゲットになった。

短い出場時間の中でのハードワークが前線で報われたのは87分。GK西川周作からのロングキックを名古屋ディフェンスが処理し損ねたボールに走り込み、浮き球を右足で合わせてゴールに流し込んだ。チームの勝利を決定付けるゴールはズラタンにとって今シーズンのJ1で2得点目。厳しい状況の中で与えられたチャンスに結果で応えた形だが、短い時間ながら献身的な守備やハードワークでも大きく勝利に貢献したことは間違いない。

好調の李忠成、オーバーエイジとしてリオ五輪に参加していた興梠慎三とチーム内の“ライバル”は強力だが、悲願のタイトルを狙う上で重要な戦力の1人であることを改めてアピールした試合だった。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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