ラグビー日本代表の応援にと、板橋区の老舗パン屋が発売した実寸大ラグビーパンが好評
2023年はスポーツの年と言っても良いかもしれません。WBCでは侍ジャパンが世界一を奪還し、世界フィギア選手権・サッカーアジアカップにFIFA女子ワールドカップ、日本中が歓喜したバスケワールドカップなど。
そして、今注目はラグビー日本代表です。2019年のラグビーワールドカップ日本大会でのジャイアントキリングは「にわか」ファンを一気に増やし、大いに盛り上がりました。
本年度、板橋区産業振興公社の依頼をいただき中小企業向けのセミナーを担当させていただきました。そこで出会った街の老舗パン屋「のぐちやBakery」さん(東京都板橋区赤塚5-1-1)が、このラグビーワールドカップのビッグウエーブを捉え「乗っかった」商品を開発し販売したところ好評とのことで、お話をお伺いしました。
実物大のラグビーボールパンを開発
直径約30cmの実寸大「ラグビーボールパン」(500円)の第一印象は「でかい!!」の一言。
店頭で販売しているコッペパン生地の約5倍の質量ということもあり、店内でも異質ともいえるインパクトが印象的です。
写真の通り、楕円系のラグビーボールの横を半分に割った形で、昔懐かしいラグビーボールの縫い目にそって砂糖がまぶしてあります。中にはなにも入っていませんが、実際に持った感触も重くとても一人で食べるには大きすぎるので、店主曰く「家族や友人、恋人などと応援しながらつまんでほしい」とのこと。
お店にはラグビーボールも置いてあるため、実物大ということが人目を集め、販売を開始してから売れ行きは順調とのことです。
気になるお味は、小麦の香ばしい香りとバターの芳醇さが印象的で、飽きのこないシンプルな味わいで、好評だと言います。
なぜラグビーパンを?誕生秘話を訪ねてみた
「なにかインパクトのあることがしたくてノリで作ってしまいました」
そう語るのは、4代目の松戸淳哉さん。そもそものぐちやBakeryは昭和2年に板橋の地にお店を構え、創業95年となります。板橋区赤塚で、地域で愛されるパン屋さんです。
はじめは店の前でお酒を出すような立ち飲み屋さんから始まったとのこと。その後時代の流れに沿ってその形は変化し、金物やはがき・切手、雑貨や食品などを売る現代のコンビニエンスストアのような業態を経て、昭和55年に現在のパン屋さんとなりました。
このラグビーパンを作ったきっかけは、ずばり4代目がスポーツ観戦が大好きだったから。
2019年のワールドカップでラグビーの面白さに改めて気づかされ、今回のワールドカップを観戦している中で、パン職人としてなにか面白いことができないかと考えたとのこと。日本戦の初戦を見て、ラグビーボール実寸大の楕円系のパンを作ることを思いついたといいます。
当初、やきそばパンを3倍の大きさで作り、ラグビーボールにしようとしましたが、本来の味のバランスが崩れるため断念。シンプルに中身を濃厚な北海道産のバターで包み、こんがり焼き上げたところこれが美味しく、形も安定するということで、着想からたった3日ですぐに商品化するというスピード感には脱帽です。
スポーツの秋を迎え、ラグビーワールドカップへの観戦熱は高まっています。そうしたトレンドを捉えた観戦のお供になる商品として市場投入されたのが、今回のラグビーボールパン。こうして市場のトレンドを捉えたスピード感ある商品開発と販売の意思決定は、中小企業ならではの利点を生かした取り組みと言えるでしょう。
実際発売をSNSで告知したところ、ラグビーファンがこのパンを目的に来客するなど、手応えも感じているそうです。
「当初、ラグビーファンに喜んでもらいたいし、インパクトもあるはず!と商品開発を行いました。ただ、味の追求は勿論のこと こうした取り組みを通じて“のぐちやBakeryは様々なことにチャレンジするぞ”という姿勢も伝えられれば」と4代目の淳哉さんは話をしてくれました。
昨今物価上昇に伴う原材料費の高騰が加速しており、町のパン屋が次々と店を閉めている現状の中、その逆境の中でも新たな挑戦として巨大パンをワンコインで提供するのぐちやBakery。
新しい世代が世の中のニーズに合わせた取り組みを重ね、ラグビー日本代表とともに、ぜひトライを量産してほしいものです。