「波乱の幕開け」となった杉並区議会、議長選出めぐり自民「混乱しております」
4月の統一地方選で女性議員が半数以上となり、注目を集めた東京都の杉並区議会。選挙後に初めて開かれた本会議で「異変」が起きた。
5月19日の議長選挙で、最大会派の自民党系の議員たちが投票したとみられる浅井邦夫(くにお)議員ではなく、共産党や立憲民主党の議員たちが投票したとみられる井口かづ子議員が新しい議長に選ばれたのだ。票差はわずか1票だった。
※参考記事:「クーデターが起きた」女性議員半数以上の杉並区議会で「女性議長」選出
◆ 杉並区議会の議長選挙の結果
・井口かづ子 24票
・浅井邦夫 23票
・洞口朋子(ほらぐちともこ) 1票
井口議員と浅井議員はいずれも自民党所属。杉並区議会でも同じ会派に属している。自民党の議員たちからすると「まさか」の結果だった。
そのため、議長選挙のあとの休憩中、自民党系会派の内部協議が紛糾。その後に予定していた副議長選挙などが実施できなくなるという異例の事態となった。
「事情が掴めず混乱しております」
自民党系の会派(自民党・無所属杉並区議団)は5月19日の夜、議長選挙に関する声明を発表した。
声明では、井口議員が議長に選ばれたことについて「会派内で別の議長候補を定めていたため、大変驚きました」としている。具体的な名前をあげていないが、選挙の結果からすると、自民党系会派は、浅井議員を「議長候補」として考えていたといえる。
その上で、井口議員が議長選挙後の挨拶で、事前に用意していた原稿を読み上げていたように見えたとして、「あらかじめ議長選挙の結果を予見」していたのではないかという見解を示した。
そして、議長選挙の後、井口議員から自民党系会派のメンバーに対して説明がなかったとして、「事情が掴めず未だ混乱しております」と当惑ぶりをあらわにした。
議会に現れなかった自民党議員
このような自民党系会派の内部の混乱により、杉並区議会の本会議の進行は大きく乱れた。
本来ならば、5月19日は、議長選挙のほか、副議長選挙や各委員会委員の選任、議案の上程などが予定されていた。しかし、それらは実施できず、翌週の22日に延期された。
当日の議会に参加していた区議や傍聴者によると、議長選挙後の休憩が2時間半近くに及んだ末、議会が再開されたものの、議場に井口かづ子議長以外の自民党系会派の議員10人が現れず、すぐに議事が終了してしまった。
議会を傍聴していたペヤンヌマキさんが撮影した動画には、再開後の議会の様子が映し出されている。議長選挙のときは、画面左上の議席に自民党系会派の議員が座っていたが、再開後は10人分の名札が倒れたままで、空席となっているのがわかる。
このような議会の異変に対して、維新の会の松本光博(みつひろ)議員はツイッターで「予定調和のない波乱の幕開けとなりました」「VUCAの時代を生きているなぁ…」とコメントした。
(注)VUCA(ブーカ)とは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つの単語の頭文字をとった言葉で、目まぐるしく変転する予測困難な状況を意味する。
「職務放棄ではないか」と批判する声も
一方、自民党系会派の混乱により、議会の進行が乱れたことに対して、一部の議員からは批判する声が上がった。
共産党の小池恵(めぐみ)議員はツイッターで「議事運営に多大な影響を及ぼした上、本会議に出席しないとは職務放棄ではないでしょうか」と非難している。
また、無所属の堀部康(やすし)議員は、予定されていた副議長選挙などが理由不明のまま先送りになったとして、「このような不透明な議会運営は改めるよう申入れをしています」とツイートした。
5月19日に実施できなかった副議長選挙などは、22日午前10時からの本会議で行われる予定だ。それまでに自民党系会派の混乱はおさまっているだろうか。それとも、なにか新しい動きがあるのだろうか。
杉並区議会の模様は、杉並区によってインターネットでライブ配信され、誰でも視聴できる。また、後日、録画中継を視聴することもできる。