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美人ウェイトレスの涙…北朝鮮レストラン、経済制裁で閉店相次ぐ

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
北朝鮮レストランのウェイトレス

90年代から北朝鮮の貴重な外貨収入源となってきた北レス。世界に130店舗、中国だけでも100店舗が存在すると言われている北朝鮮レストラン(北レス)は、1990年代から北朝鮮の貴重な外貨収入源となってきた。しかし核・ミサイル問題を巡る経済制裁の影響で、その前途に暗雲がただよっている。

(参考記事:女性接待員が外貨を稼ぐ…「北朝鮮レストラン」の舞台裏

メイン客である韓国人旅行者に対し、韓国政府が利用自粛を勧告。客足が急減し、営業を中止せざるを得なくなる店が続出しているのだ。そして、そのしわ寄せは当然のごとく、「かんばん娘」である美人ウェイトレスたちにも及び、給料未払いに困惑してさめざめと泣く日々だという。

中国や東南アジアなどで営業する北朝鮮レストランは、焼肉や冷麺などの朝鮮料理と並び、ウェイトレスも兼ねた女性従業員たちによる歌や踊り、楽器演奏などのショーが最大の売りだ。近年では、特に容姿端麗なウェイトレスの写真がネットで出回り、韓国の若者たちの間でアイドル並みの人気を博している例もある。

(参考記事:美貌の北朝鮮ウェイトレス、ネットで人気爆発

彼女たちの多くは良家の出身と言われ、観光客の興味本位の質問にも意外とあっけらかんと答える女性も中にはいた。

その素朴な表情や振る舞いは、「やはり北朝鮮も普通の人々が暮らす国なんだな」という感慨を外国人に与え、険しさを増す情勢の中でホッとするものを感じさせる効果を持っていた。

ところが最近では、彼女らの失踪が相次いだり、経営者による「強制売春」の噂が出たりと、眉をひそめたくなる状況が生じていた。

もとより、北レスを統制する本国の当局が人権重視の方針を持っているとは思えず、経営難が続けば、彼女らへのしわ寄せはいっそう大きなものになるだろう。金正恩氏が暴走を止める気配も今はなく、ならばいっそ、一斉に店をたたんで本国へ撤収してもらった方が、彼女たちのためには良いのかもしれない。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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