「バケツ拷問」で即決処刑…北朝鮮収容所の凄惨な現場
北朝鮮の「管理所」と言えば、政治犯収容所の正式な呼称だ。収監者は公民権を剥奪され、基本的人権はおろか、人間として生きることさえ否定される。看守は「収監者を人間と思うな」「危険な者はただちに射殺せよ」などと教育される。
暴言も暴力も当たり前で、公開処刑も当たり前。中でも咸鏡北道(ハムギョンブクト)の清津(チョンジン)にある25号管理所は、スパイや反革命分子など罪状の重い人が収容される施設として、北朝鮮の人々の間でも恐怖の対象になっているとされる。
近年では、秘密施設の建設工事に携わる人員を確保するため、収監者の数を意図的に増やしているとも伝えられている。
(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面)
その25号管理所で、収監者5人が銃殺される事件が起きたと、デイリーNK内部情報筋が伝えた。
事件が起きたのは先月中旬のこと。管理所内のある区域の収監者が野外作業に出かけたが、点呼を取ったところ、2人がいなくなっていることがわかり大騒ぎになった。
しばらくして、日陰で倒れているのが見つかった。その日は猛暑で、おそらく熱中症だったのだろう。しかし保衛員(看守を務める秘密警察)は、収監者の健康に気を使うどころか、騒ぎを起こしたことに腹を立て、2人に首から水の入ったバケツを持って立たせる体罰を課し、他の収監者に監視させた。
当然のことながらフラフラになった2人。うち1人がよろめいて水をこぼしそうになった。すると監視に当たっていた収監者が体を支えようとした。それを見た保衛員は「処罰対象を義理や同情心で助けるのは、同様に処罰の対象になる」として、監視に当たっていた収監者にも体罰を課した。天秤棒の両端にバケツを引っ掛けて、3人で持つというものだ。
誰かが力尽きて倒れれば、3人が連帯責任を取らされる。精神的に追い詰める拷問と言える。やがて1人が倒れた。保衛員はその収監者を助けようともせず、管理収容者(他の収監者を監視する役割を持たされた収監者)と、点呼を取る習慣者にも体罰を課した。
やがて4人は、口裏を合わせたかのように、ほぼ同時に倒れた。「起きろ」と言う保衛員に収監者は「いっそのこと殺してくれ」と叫んだ。保衛員の許可なく収監者が発言することは許されておらず、著しい反抗とみなされる。
保衛員はその場で、5人の処刑を命じ、哨所(監視塔)で監視していた警備兵が機関銃を持って降りてきて、他の収監者の目前で刑を執行した。
この件は、「監理所内で集団騒擾が発生し、規定通りに処理した」と国家保衛省(秘密警察の本部)に先月末、報告された。今月に入って国家保衛省の幹部がやって来て現場で状況把握を行い、「複数名の収監者が1名の保衛員に食って掛かり、内部の指針通りに即決処分を行った」と結論を下して、事件は終結した。つまり、「問題なし」と処理されたということだ。
処刑命令を下した保衛員は、管理所内の別の区域に異動となった。情報筋によると処罰ではないとのことだ。
管理所の収監者はたとえ釈放されたとしても、「移住民」という身分を与えられ、監理所の周辺に住むことを強いられるため、その実情が国外に知られることはさほど多くない。
その数少ない人権侵害事例は、韓国のNGO、北朝鮮人権情報センター(NKDB)が、「来るべき日」に備えて、収集し、アーカイブ化している。