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ハリルジャパンに必要なラストピース……左利きの男たち

清水英斗サッカーライター
小林祐希、本田圭佑(写真:田村翔/アフロスポーツ)

日本代表がロシアワールドカップを戦う上で、現状、足りないピースは何か? しかも、ないものねだりではなく、現実的に手に入るものは? 1-3で惨敗したブラジル戦の後、そんなことを考えてみた。

…。…。…。うん、やっぱり左利きが必要だ。

ハリルホジッチは最終予選の間から、「ゴールに近い位置でのフリーキックやPKがない。それは私には受け入れられない」と言い続けてきた。だが、このブラジル戦はどうだったか。前半に原口元気が、後半は乾貴士が仕掛けてフリーキックを得た。

ただ、ファウルをもらったというより、抜き切れず、つぶされた印象。アジアの相手ならばペナルティーエリアへ侵入し、チャンスに昇華しそうな場面でも、その前の素早い寄せでつぶされる。守備の良いチームと戦えば、このように崩しきれず、チャンスがセットプレーに転換される比率は増えるかもしれない。ならば、それを大切にしたいところ。

後半17分、槙野智章はコーナーキックから、2006年の玉田圭司以来となる対ブラジル戦のゴールを挙げた。こんなことを言っている。

「監督含めてコーチングスタッフと、ブラジルのセットプレーの守備の映像を見たんですけど、僕が入ったところ(ファーポスト辺り)がルーズなのはわかっていました。井手口(陽介)選手に蹴って欲しかったけど、なかなか(ボールが)こなかった。まあ、やっときて、うまく入れたかなと思います」

なかなか美味しいところに蹴ってくれなかった井手口。でも、無理はない。

彼は左右両方のコーナーキックを蹴っていた。この得点シーンまでは、右CKがほとんどだったので、右利きの井手口が蹴ると、アウトスイング(ゴールから離れる軌道)になる。これを相手GKに触らせず、ファーポストへ届けるのは難しい。

しかし、後半17分の場面は、左サイド側でCKを獲得したため、井手口は初めてインスイング(ゴールに向かう軌道)で蹴ることができた。相手GKの手が届かないように、カーブを描いてファーポスト付近へすとん。そこに槙野が走り込み、見事に押し込んだ。

もったいないじゃないか。

せっかく良いねらい、分析があっても、左利きのキッカーがいなければ、やれることが限られてしまう。宝の持ち腐れ。チャンスが半減する。また、フリーキックで左足側に原口を立たせたところで、彼が蹴るとは1ミリも思わなかった。大したフェイントにもならない。

やはり左右のキッカーをそろえたい。左利き……左利き……。メンバーを見ると、車屋紳太郎1人だけ。今回は本田圭佑も小林祐希もメンバーから外れたため、特に左利きが乏しい。

ブラジル戦を見るにつけ、世界レベルの組織的な守備を破ることの難しさ、同時にセットプレーで点を取る重要性を強く感じた。もし、劇的にパフォーマンスが上がる可能性があるとしたら、ココだろう。今のところ、ハリルホジッチにそれほど準備している様子はないが、本大会に向けては、この左利き枠が重要になるのではないか。

左利きのみなさん、日本代表のココ、空いてますよ。

サッカーライター

1979年12月1日生まれ、岐阜県下呂市出身。プレーヤー目線で試合を切り取るサッカーライター。新著『サッカー観戦力 プロでも見落とすワンランク上の視点』『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』。既刊は「サッカーDF&GK練習メニュー100」「居酒屋サッカー論」など。現在も週に1回はボールを蹴っており、海外取材に出かけた際には現地の人たちとサッカーを通じて触れ合うのが最大の楽しみとなっている。

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