都市対抗出場の日本製鉄鹿島・守屋功輝投手(元阪神)は「最高のチーム」と感謝
社会人野球は今、7月に東京ドームで開催される『第94回都市対抗野球大会』に向けて各地区の2次予選が、ちょうど終わったところです。きのう13日に最後の1枠だった近畿地区の第5代表が決定し、昨年優勝のENEOSを含む全32チームが出揃いました。
5月31日のNTT西日本を皮切りにミキハウス、三菱重工Westと出場を決めた近畿地区2次予選は、12日にパナソニックが第4代表の座を射止め、そのパナソニックに敗れた日本生命が13日に日本製鉄広畑と対戦。6対3で勝って最後の出場切符を手にしたわけです。
近畿地区2次予選でのカナフレックスや三菱重工Westについて、また改めて書かせていただきます。きょうは今月5日に見事、北関東地区の第1代表で都市対抗出場を決めた日本製鉄鹿島と、所属する元阪神・守屋功輝投手の話をご紹介しましょう。
守屋投手が日本製鉄鹿島に入った経緯などは、こちらの記事でご覧ください。→前阪神・守屋功輝投手が日本製鉄鹿島へ!「玉置さんと同じ道を歩みます」
なお日本製鉄鹿島は都市対抗の予選が始まる前に、早くも11月開催の『第48回社会人野球日本選手権大会』の出場権を獲得しました!しかも、今季最初に参加した日本選手権対象大会で優勝して決めたもの。まずはそのJABA大会3つを簡単に振り返ります。
① JABA日立市長杯大会
4月14日から茨城県日立市で開催された『第45回JABA日立市長杯選抜野球大会』。日本製鉄鹿島は 16日の初戦で大和高田クラブに3対5で負け。守屋投手は翌17日の東海理化戦で投げました。
【第45回JABA日立市長杯選抜野球大会】
4月17日 日立市民運動公園野球場
日本製鉄鹿島-東海理化
鹿島 000 100 023 = 6
東海 000 010 011 = 3
▼バッテリー
[鹿島] 佐田-山井-佐藤-守屋 / 松田
[東海] 金田-近藤-重川-河野-茶谷-山本 / 池間-池田
▼本塁打 東海:武藤ソロ(守屋)
1対1で迎えた8回、日本製鉄鹿島は2死から四球と3連打で2点を勝ち越し、その裏に守屋投手が登板。タイムリー二塁打を浴びて1点差に詰め寄られますが、9回1死一、二塁で松田選手のタイムリー。さらに柳内選手が2打席連続のタイムリー二塁打を放って計3点追加!
そのまま逃げ切りたかった守屋投手ですが、9回は先頭の武藤選手にホームランを打たれて、さらに二塁打と四球などで2死一、三塁とピンチ。でもここは最後の打者を左飛に打ち取って試合終了。6対3で勝ちました。
同18日は日本通運に2対1で勝ち、2勝1敗の成績で日本通運と並びましたが、ポイントが1つ上回った日本製鉄鹿島の決勝トーナメント進出が決定!決勝トーナメントは4月19日に準決勝と決勝が続けて行われています。
まず準決勝で日本製紙石巻に12対0というスコアで7回コールド勝ち!決勝は同じ北関東地区のSUBARUが相手で6対3の勝利!残念ながら決勝トーナメントに守屋投手は登板していませんが、これで早くも秋の日本選手権出場を決めた日本製鉄鹿島です。
② JABAベーブルース杯大会
次は5月1日から岐阜県で行われた『第75回ベーブルース杯争奪全国社会人野球大会』で、その初戦に守屋投手が先発!しかも相手は古巣のHonda鈴鹿でした。4回1/3で71球を投げて6安打3三振2四球の6失点。結果は10対2で7回コールド負けを喫しています。
【第75回JABAベーブルース杯争奪野球大会】
5月1日 大垣市北公園野球場
Honda鈴鹿-日本製鉄鹿島
鈴鹿 211 050 1x=10
鹿島 000 110 0 = 2
※7回コールド
▼バッテリー
[鹿島] 守屋-山井-北南-佐藤 / 揚村
[鈴鹿] 森田-八木-竹内 / 岡沢
▼本塁打 鈴鹿:松元2ラン(守屋)
貞光2ラン(守屋)
打線がなかなかつながらなかったことについて「それは僕のせいなんですよねえ。テンポが…。三者凡退でポンポンいっていればリズムもいいのに、先頭を出してしまうとやっぱり野手も。ほんとにもう申し訳ないです。3試合ともコールドの流れを(初戦で)作っちゃいました」と猛省。
その通り、5月2日の東邦ガス戦も10対2で、5月3日に行われた元阪神・藤田太陽監督が率いるロキテクノ富山戦は8対1と、すべて7回コールド負けでした。こんなことがあるんですねえ。
私は5月3日のロキテクノ富山戦を取材しました。守屋投手は試合前のキャッチボールしか見られなかったんですけど、話はしっかり聞いています。その前に日本製鉄鹿島・中島彰一監督にも少し伺いました。
◆中島監督の期待は大
第一声が「守屋にもっと頑張ってもらわんと!」。これは少し笑いながらです。そのあと「ただヒジの調子が今ひとつだったので」と。これはのちほど本人のコメントで詳しくご紹介します。
Honda鈴鹿戦については「初先発ですからね、しかも古巣相手で気合も入ったんでしょう。本人が投げたいと言うので、じゃあ行ってこい!と送り出しました。他のチームは“元プロ”というので格上に見てくる。いつもより集中力も高めてくる。でも彼はそれくらいのものを持っていますよ」と中島監督。
そして「玉置もそうやって、やってきたんですから」と言われました。阪神を退団後の2016年から2019年まで日本製鉄鹿島でプレーした玉置隆さんは、在籍中の4年間すべてダブルドーム(都市対抗、日本選手権)出場に貢献し、その投げっぷりは今なお中島監督の胸に残っています。
その玉置さんと同じ、阪神~日本製鉄鹿島という道を進んでいる守屋投手。先日、偶然会った時に玉置さんは「守屋が点を取られているみたいやけど、僕もいっぱい取られましたからね」と思い出して苦笑いでした。
実は守屋投手自身も、片葺翔太コーチから「そんなところまで玉置に似るか~と言われた」とか。でもそれは、きっと吉兆ですよね?これから大車輪の活躍を楽しみにしましょう。
◆「あいつに賭ける」と片葺コーチ
玉置さんと同い年の片葺翔太コーチとも岐阜で会えました。ことしからコーチ専任となり背番号が36に変わったものの、人懐っこい笑顔も関西弁もそのままです。守屋投手のピッチングについて聞いたところ「やっぱりプロで投げていた時に比べると…」と言いよどむ片葺コーチ。
ついで「僕もめっちゃファンやったので知っているんですけど」という言葉だったので「え、めっちゃファンやったんですか?」と聞いたら「もちろんです!めっちゃ…ではないですかね。あはは」と。めっちゃ…ではないんですね(笑)。それで、どのあたりが気になりますか?
「今も真っすぐはメチャクチャいいんですよ。それに対する変化球、フォークがなかなか言うことを聞いてくれないというか、半速球になって。ツーシームもそうですけど。それをまとめて“いかれている”って感じですね」。なるほど。
「真っすぐ自体は弾かれていない。あとはそこだけです。そこがしっかりいければ、逆にもっと真っすぐも生きてくるはず」。役に立ってほしいと願っています!「いやもう、もちろん絶対に使いますよ!あいつで負けたら仕方ないってぐらいまで持っていくんで」
なんて嬉しい言葉。やっぱり熱いですねえ。
◆古巣相手に志願の先発
続いて守屋投手。先発は?と聞くと「鹿島では初です。オープン戦もなかったので、ぶっつけで先発。何年ぶりですかねえ。阪神3年目のシーズン前に一度やって、それ以来じゃないですか。めっちゃ前です」と言っていました。
志願したとか?「(大会前に)『先発で考えているんやけど、どう思う?』と片葺さんから言っていただいて。それで『投げられるんやったらどこ(どの試合)がいい?』と聞かれて、それはもちろん鈴鹿です!と答えました」。なるほど、それがたまたま初戦だったということですね。
初回はヒットと犠打などで2死三塁として4番にホームラン。「ツーシームですね。正直、打った瞬間は“ああレフトフライや”と思ったんですよ。球場も小さくて、レフトに伸びる風が吹いていた。そのへんをちゃんと考えて配球していたらよかったかもしれません」
2回は先頭に二塁打、バントで三塁へ進めてスクイズ。あるんですね、スクイズ。「正直、そこもビックリしました」。そうですよね、社会人あるあるでしょうか。「してやられました…」
3回は先頭に四球で犠打、2死後にタイムリー。5回にまた先頭に四球を与え、犠打のあとに2ラン。ここで交代しました。ちなみに5回の2ランもツーシームで、守屋投手は「あの試合の反省はもう、ツーシームを打たれすぎというか、打たれているのがほぼツーシームなんです」と言います。
それから「打者の反応が気持ち悪いんですよ。ツーシームをホームランされた時に『真っすぐ来てないわ~』と言っていたらしくて。ブルペンで聞こえたと後輩が教えてくれた。向こうはツーシームを真っすぐだと思っていたみたいです」とも話していました。
「それとフォークも。阪神の時はフォークで空振りをバンバン取れていたのに、社会人に戻ってから全然取れていないんですよ。振ってくれない。決め球として追い込んでからフォークでの空振りを、まだ一度も取れていない。カウント球として空振りはあるんですけど」
「Honda鈴鹿戦でも、カウント3-2で僕からすると完璧なフォークを投げたんですけど、微動だにせず見逃された。そのへんがメッチャ気持ち悪いと思いました」。なるほど、そういう違和感があったんですね。
◆新しいルールに四苦八苦?
「社会人に帰ってきて、ことしからルールが増えていました」と話す守屋投手。そうそう!ピッチクロックですよね。社会人野球でも2023年シーズンから“スピードアップ特別規定”を導入。それによりピッチャーの投球間隔や、バッターの打席を外す回数などが制限されています。
けっこう大変ですか?「走者なしが12秒、走者ありで20秒。Honda鈴鹿戦でも一度取られました。20秒はめっちゃ短いです。僕は、サインに首を振ったりして時間を使っちゃうタイプなので。いかに自分の投げたいボールをキャッチャーが出してくれるか、ですよね」
「今このボールを投げたいんやろなって思ってもらえるように、普段のキャッチボールでしっかり会話をしていかないとダメですね。ピッチング練習でも今のボールはこういう意思で投げたとか、試合でこうやってつなげたらと話をしてわかってもらわないと」
意思の疎通が大事になってきますね。「あと、牽制もですよ。打者1人につき3回までしか牽制できないんです。その3回目で刺してアウトにできないと自動的に進塁ってルール…」。ええっ!それは厳しい。
「牽制もバッターのタイミングをずらしたり、いろいろ意味があるし。野球が変わるというか、駆け引きの面白さとか深みがなくなっちゃうような気がします」。うーん、確かに。納得していたら守屋投手は「打たれた後にこんなこと言うてたら、めっちゃ言い訳に感じちゃうかもしれないですけど」と苦笑い。
そして「慣れていかないといけないですね。その世界に飛び込んだので。みんな同じルールでやっている。1つの“ボール”が、めちゃくちゃでかいです」と自分にも言い聞かせているようでした。
◆初めて味わうヒジの痛み
ところで、ヒジの調子がよくなかったと聞いたんですけど、いつから?「こっち(鹿島)に来て最初の方は大丈夫だったんですけど、ちょっと力を入れて投げ始めた頃にアレ?となって…。だいぶ出遅れましたね」
「ヒジの違和感や痛みって今回が初めてだったので、これくらいならいけるという感覚がわからなくて。でも病院でMRIやCTの検査をさせてもらって、異常はないと言われました。じゃあ、もうちょっと上げても大丈夫だと気持ちに余裕ができたせいか、そこからよくなってきた感じです」
「都市対抗予選が1年間で一番大事な大会。そこへ向けてどういうふうに持っていったらいいか考えて。このまま上げていって予選前に爆発して投げられませんってのが一番怖かった。そのへんが難しいと思っていたんですけど、異常がないとわかったので上げていけました」
「オープン戦も3月29日の関メディ戦が初登板です。その頃はブルペンに入ったらヒジが痛かったので、試合はぶっつけで…。徐々に登板を重ねて日立市長杯の時は次の日に相当痛かったけど、ベーブルース杯はだいぶ不安がない状態でいけて、翌日もキャッチボールができるぐらいでした」
都市対抗予選には間に合いますね。「もう都市対抗予選にすべてをささげます!」。でも本大会で投げられなかったら…。「いや実際、出なきゃ意味がない。出るための戦いなんで、本大会のことは考えないです。とりあえず予選を全力で。リミッター解除して全力で腕を振ります!」
③ JABA東北大会
日本選手権対象大会の最後は『第53回JABA東北大会』。5月9日から宮城県で開催されました。日本製鉄鹿島はCブロックで初戦は5月9日、IMF BANDITS富山に4対0の完封勝利。守屋投手は翌10日の明治安田生命戦で中継ぎ登板したのですが、すごい試合になりました。
【第53回JABA東北大会】
5月10日 石巻市民球場
日本製鉄鹿島-明治安田生命
鹿島 011 101 040 = 8
明治 160 200 00X = 9
▼バッテリー
[鹿島] 佐田-諸見里-守屋-金城 / 松田
[鈴鹿] 三宮-小玉-石毛-中崎 / 森川
▼本塁打 鹿島:陶山2ラン(小玉)
高畠2ラン(石毛)
1回に1点先取されるも直後の2回に追いついた鹿島。しかしその裏、先発の佐田投手が死球や連続二塁打などで3点、代わった諸見里投手も押し出し四球や味方エラーで2点。なおも1死満塁、打者が一巡するところで登板した守屋投手も犠飛で1点と、この回6点を奪われます。
打線は3回、4回、6回と1点ずつ返し、その間に守屋投手は4回に2点追加されますが、5回と6回は三者凡退締め。続く金城投手も7回を0点に抑え、9対4で迎えた8回。1死から1番・陶山選手が2ラン!さらにヒットのあと3番・高畠選手も2ラン!しかし反撃はそこまで。9対8で敗れています。
守屋投手のコメントをご紹介します。出ていきなり犠牲フライを打たれたんですね?と聞いたら「そうです。満塁で」とひとこと。そのあと4回も2点取られて、これがのちに大きな意味を持つわけで…。「そう、その2点がヤバかったんです」
ピッチング自体は?「今までツーシームの割合が多く、それを痛打されて」。ベーブルース杯ですね?「はい。で、今回はキャッチャーと話して真っすぐをどんどんいこうと。それで変えていけたので手応えがありました。きょうもツーシームは2、3球しか投げず、真っすぐばっかりです」。その手応え、都市対抗予選へ続けましょう。
④ 都市対抗1次予選・茨城県大会
5月20日と21日に茨城県日立市で『第94回都市対抗野球大会』の茨城県大会が行われました。1次予選とはいえ日本製鉄鹿島と日立製作所は既に2次予選出場が決まっているので、その代表順位を争うもの。1回戦に勝てば1位か2位、負ければ3位か4位ということです。
第1代表での勝ち抜けを狙った鹿島ですが、1回戦は茨城トヨペットに終盤で追い上げられながら6対5で逃げ切ったものの、第1・第2代表決定戦で日立製作所に6対2で敗れ、第2代表となりました。
【第94回都市対抗野球(1次予選)茨城県大会】
5月20日 1回戦
茨城トヨペット-日本製鉄鹿島
トヨ 000 012 020 = 5
鹿島 010 302 00X = 6
▼バッテリー
[トヨ] 高崎-鈴木 / 大松
[鹿島] 山井-金城 / 揚村
▼本塁打 トヨ:坂巻ソロ(山井)
比留間ソロ(山井)
【第94回都市対抗野球(1次予選)茨城県大会】
5月21日 第1、第2代表決定戦
日立製作所-日本製鉄鹿島
日立 220 010 100 = 6
鹿島 100 100 000 = 2
▼バッテリー
[日立] 青野 / 桂
[鹿島] 山口直-諸見里-守屋 / 松田
▼本塁打 日立:真砂ソロ(守屋)
守屋投手は1回戦(日立製作所)に登板。5対2とリードされて迎えた7回、左の諸見里俊投手が先頭を右飛に取ったあと右打者が2人続くところで出ています。まず右飛で2死となってからホームランを打たれました。それも元ソフトバンクで、ことしから日立に入った真砂勇介選手に。
◆好相性の真砂選手に1発…
阪神時代にファームで対戦は?「ありますよ。メチャクチャやっています!何なら“真砂合わせ”とか、ばっかりしていました。『ここで真砂に回ったら守屋行くぞ』みたいな」。真砂合わせって(笑)。ということは相性がよかった?「相性いいですよ。あいつは僕のこと、メッチャ嫌いですよ」
へえ~そうなんですね。「『マジ、守屋さん嫌いです』って何回も言われています」。あら。なのにここで…。「僕はファウルやと思ったんですけど伸びていきましたね、風に乗って」。球は?「真っすぐです。ちょっと高さが。外の甘め、ちょうど手伸びで芯に当たりところに投げちゃったんです」
真砂選手も嬉しかったでしょうね。嫌いな守屋さんからホームランで。真砂選手とはこれから何度も対戦しますよ。「いや~ほんまに。うっとうしいですねえ(笑)」。ただし「ホームランの次の打席では、バチバチに狙って三振を取れた」そうなので、現時点では1勝1敗です。
ちなみに、北関東大会で真砂選手に聞きました。守屋投手のこと好きですか?と。答えは「嫌いです!人としては好きですけど、ピッチャーとしては嫌い」でした。嫌いなままでいてもらわないといけませんね。
それにしても、北関東2次予選で絶対当たるのに1次から対戦って大変。「ほんとですよ。でも北関東予選の前に日立と戦えば、相手の現在地を知ることができるのでいいと思います。北関東でいえば、一番倒さなくちゃいけない相手で、そこと事前に戦えるのはいいですね」
なるほど。守屋投手も投げられてよかった?「そうですね」。調子はどうですか?「調子が一番よかったのはベーブルース杯のHonda鈴鹿戦ですけど、僕の使い方などもキャッチャー間で情報を共有して、わかってくれてきたんじゃないかなと感じました」
⑤ 都市対抗2次予選・北関東大会
茨城県5チーム、栃木県2チーム、群馬県1チームの計8チームで争われる2次予選、『第94回都市対抗野球北関東大会』は5月29日から日立市民運動公園野球場で行われました。7月に東京ドームの本大会へ行けるのは2チーム。
この北関東大会は玉置さんが在籍中も、毎年、毎回、本当に熾烈な戦いで。初めて観戦した2019年も第1代表決定戦で敗れたあと翌日の第2代表決定戦で逆転勝ちするなど、アドレナリン大放出の試合だったのを覚えています。
茨城県の日本製鉄鹿島と日立製作所、群馬県のSUBARUが代表争いをしてきて、そこに最近はエイジェックが割って入るという形。エイジェックは2021年に本大会初出場を果たしていますからね。
さて、ことしの北関東大会。1回戦から日本製鉄鹿島は負けなしの3連勝で、見事に第1代表として本大会出場を決めたわけですが…守屋投手の登板はなく、それがちょっと残念でした。
【第94回都市対抗野球(2次予選)北関東大会】
5月30日 1回戦
全足利クラブ-日本製鉄鹿島
足利 000 000 02 = 2
鹿島 022 500 04x =13
※8回コールド
▼バッテリー
[足利] 岩崎海‐早川 / 秋山-岩崎昂
[鹿島] 山井-佐藤 / 揚村-松田
▼本塁打 鹿島:今里2ラン(岩崎海)
山田3ラン(早川)
【第94回都市対抗野球(2次予選)北関東大会】
6月1日 2回戦
日本製鉄鹿島-茨城トヨペット
鹿島 001 200 002 = 5
トヨ 000 000 000 = 0
▼バッテリー
[鹿島] 山口直 / 松田
[トヨ] 中島-織田-高崎-菊地-武藤公 / 大松-峯尾
まず5月30日の1回戦で全足利クラブに13対2で8回コールド勝ち。6月1日の2回戦は、日立製作所がエイジェックに5対1で勝ち、日本製鉄鹿島は茨城トヨペットに5対0で勝って、第1代表決定戦は日立と鹿島の顔合わせです。
大雨のため2日連続で中止となり、5日に延期された第1代表決定戦は現地観戦!コロナ禍で自粛を余儀なくされていた社会人野球ならではの応援も復活し、スタンドのお客様の声も合わさって熱気あふれる試合となりました。
【第94回都市対抗野球(2次予選)北関東大会】
6月3日 第1代表決定戦
日本製鉄鹿島-日立製作所
鹿島 001 100 002 = 4
日立 000 200 000 = 2
▼バッテリー
[鹿島] 諸見里-金城 / 揚村
[日立] 岡-田川 / 桂
《試合経過》※敬称略
鹿島は初回に2死満塁と攻めたものの無得点。しかし3回は先頭の池間が中前打、それを日立のセンター・真砂が後逸し二塁へ。2死後、5番の松田が右前タイムリー!4回には2死一、二塁で3番・山田が中前タイムリー!2対0とします。
ところが、3回まで1安打無失点だった諸見里は4回、先頭へ四球を与え、続く真砂が大きな当たり…これをレフトの生田目がナイスキャッチ!次打者のヒットで1死一、三塁となったところで交代しました。
代わった金城は5番・大塚の左前タイムリーを浴び、さらに四球で1死満塁として犠飛。これで2対2、追いつかれます。しかし5回以降の金城はヒットを許しながらも要所を締めて追加点を与えません。
その力投に応え、5回から8回まで完璧に抑えられていた打線が9回2死ランナーなしからつながります。1番・陶山がサードへのバントヒットで出ると初球で二盗を決め、池間の中前タイムリーで一気に生還!送球の間に二塁へ進んだ池間も、続く山田の左二塁打で還りました!
勝ち越してもらった金城はその裏、1死から連打を許しますが、あとは二飛と左飛に仕留め、2点のリードを守りきって試合終了です。
◆「僕の仕事はここまで。あとは選手が」
試合後、ホッとした表情の日本製鉄鹿島・中島監督から聞かれたのは「最後の最後は本当に“どっちがドームに行きたいんだ?”という気持ちの差。戦ってくれた選手の、思いの成果です」という言葉。それにしても、この決定戦もそうですが、2死からの得点が本当に多くて、鹿島らしい戦いでした。
「ことしは沖縄キャンプから始まったので、きょうは沖縄デー(笑)。諸見里でいって、金城で締めて、ちょっと調子を落として準決勝はスタメンから外した池間を、きょうは2番に上げてはまったというか。我慢してやってきてよかったなあという感じがします。選手をほめてやってください」
4回に金城投手が追いつかれたものの、以降をゼロに抑えましたね。「まあ彼は実績があって、うしろに守屋もいますし。だから金城には、お前がヘタるまでいって来いと。まさに、日立市長杯の決勝(2回途中から9回までを無失点)を見ているが如く、しっかり勝ってくれました」
そのあと中島監督は「最終回の、あの陶山の盗塁ですよ!あれしかないです」と質問を受けずに自ら続けます。「なかなか走れないですよ、左ピッチャーで。あれには僕も『いや、すげ~!』って自分のチームの選手ながら、ちょっと熱くなりましたねえ」。中島監督らしい言葉です。
コロナ禍で味わえなかった応援も復活しました。「声で気持ちを上げたり、盛り上げたりというチームなので、うちにとっては非常にありがたい。これが本来の野球の姿じゃないですか。楽しみですね、応援が戻ってきて。あとは選手がやるでしょう。ここまで来るのが僕の仕事ですから、あとは選手がやります。大丈夫です」
◆嬉しさと悔しさと…
登板はなかったものの、いつでもいけるよう投球練習をしていた守屋投手。終わった瞬間は大喜びで、全員と抱き合うくらいの勢いだったと告げたら「あはは!」と大声で笑います。あんなにはじける守屋投手を見たことがない。「確かに(笑)。そういうチームなんです」
嬉しい?「嬉しいです。嬉しいですけど、ちょっと…。いや、これ以上はないんですけど、自分が投げて、もっと貢献したかった気持ちもあります」。とはいえ、やっぱり第1代表というのはいいでしょう?「デカいっす!」。このチームで行けてよかった。「ほんま、ええチームです!最高っす!」
そこに、守屋投手も飛びっきりの笑顔で胴上げしていた清水茂雄部長が来られました。守屋投手は私に「ほら、ここ見てください」と右ヒジの内側を見せます。「きょうも部長に書いてもらった」と指差しますけど、うっすら何か書いてあったかなという程度しか残っていません。「消えてるやん(笑)」と突っ込む清水部長。
実は1次予選の前に守屋投手が「僕、ネズミ(遊離軟骨)がいるので」と言ったら、清水部長が右ヒジに『猫』と書いてくださったそうなんです。ネズミが暴れないように、というおまじないですね。「だから部長と一緒に、部長の魂と一緒に投げました!」と守屋投手は言っていました。
毎試合、書いてあげているんですか?「はい。それで、僕も守屋と一緒に投げていますから!」。守屋投手も「そうです、そうです」とうなずき、また清水部長の「ドキドキしちゃったりしてね」という言葉に2人で大笑い。「でも大丈夫、信じていますので」と、ここは真顔でキッパリと言ってくださった清水部長。
中島監督や清水部長、チームの皆さんと本当にいい信頼関係を築いている守屋投手を見て、とても安心しました。都市対抗野球大会、社会人日本選手権大会のダブルドーム出場を決めた日本製鉄鹿島。夏は東京で、秋は大阪で、守屋投手が投げるところもぜひ見たいですね。
<掲載写真はチーム提供、※印は筆者撮影>