新型「V-STROM 1050/XT」国内デビュー 80年代パリダカを舞った怪鳥DR-Zの再来か!?
コンセプトは「冒険の達人」
スズキから新型「V-STROM 1050/XT」が4月24日より発売された。
2014年に国内でも発売されたスポーツアドベンチャーツアラー「V-Strom 1000」をベースに全面改良を施した後継モデルとなる。
開発コンセプトは「The Master of Adventure(冒険の達人)」で主に長距離ツーリングでの快適性の向上を目指し、エンジン性能の向上および電子制御システムと装備の充実が図られている。
DR750Sをモチーフに7psアップ
エンジンは従来モデル同様の水冷V型2気筒DOHC4バルブ1,036cc。吸排気系ともにカムプロフィールとカムタイミングを最適化し、バルブリフト量を増加させつつオーバーラップ量を減らすことで燃焼効率をアップ。電子制御スロットルの採用やECUの改良などにより出力特性を向上し最高出力も5kW(7ps)上乗せの106psへと向上。同時に今年12月より導入される令和2年排出ガス規制に対応させた。
電制も進化し、3種類の出力特性から選択できるSDMS(スズキドライブモードセレクター)や3段階のトラコンに加え、ABSや一発始動のスズキイージースタート、発進・Uターンで安心なローRPMアシストなどを含む統合型の電子制御システムS.I.R.S(スズキインテリジェントライドシステム)を新たに搭載しているのが特徴だ。
スタイリングも大きく変更されている。1988年登場の「DR750S」をモチーフに現代風にアレンジすることでスポーツアドベンチャーツアラーらしい力強いイメージを強調。タンクカバーと一体化したビーク(くちばし)形状が印象的だ。大型化された高さ調整可能なウインドスクリーン、アルミ製テーパーハンドルバーを標準装備するなど本格的に。シートも前後分割タイプとなりライポジも上体が起きたよりアドベンチャーツアラーらしい形に見直されている。
XTは電制テンコ盛りの上級スペック
一方の「V-STROM 1050XT」はワイヤースポークホイールやナックルカバーを装備するなどよりアドベンチャー色を強めた上級版で、アルミ製アンダーカウリングやアクセサリーバー、センタースタンド、2段階シート高調整機能とサイドケースアダプター、LED式ターンシグナル、12Vアクセサリーソケットなども標準装備。
また、電子制御もより高度な機能が組み込まれているのが特徴で、新たにボッシュ製6軸IMUを採用し、クルーズコントロールやヒルホールドコントロールの他、2段階調整式ABSや前後連動モーショントラックブレーキ、荷重や下り坂に応じてブレーキを制御するロードディペンデントコントロールやスロープディペンデントコントロールなども新たに採用されている。
そして、XTには1988年のパリ・ダカール・ラリー出場マシン「DR-Z(ジータ)」がまとったマルボロカラーを彷彿とさせる特別色の「ヘリテージスペシャル」が設定されていることもポイントだ。
正統派アルプスローダーの系譜
さて、新型「V-STROM 1050/XT」の立ち位置だが、従来型「V-Strom 1000」がオンロード主体に設計された多目的スポーツツアラーであったのに対し、基本スタンスはそのままに冒険のフィールドを広げたモデルと言えそうだ。
それはコンセプトとして掲げられた「ザ・マスター・オブ・アドベンチャー」の言葉にも表れているし、かつて“ファラオの怪鳥”と呼ばれパリダカを疾走したデザートレーサー「DR-Z」をオマージュしたデザインにも強く投影されている。
昨年のEICMA2019でワールドプレミアとして発表された新型モデルの横には実際にパリダカを走ったファクトリーマシンも展示されるなど、その世界観をアピールしていたことも記憶に新しい。
エンジンも強化され電子制御もより進化したが、その内容から高速移動やロングツーリングでの快適性や安全性を高める方向性でのアップグレードと見ていいだろう。ちなみに電制の設定にはオフロードモードがないこと、装備の充実と引き換えに車重が増加してること、タイヤもオールパーパス対応のBS製「A41」を採用していることからもそれはうかがえる。
ということで考えると、新型「V-STROM 1050/XT」の砂漠を突っ走るガチなラリーマシンレプリカではなく、もう少し懐が広くマイルド。立ち位置としては初代Vストロームシリーズから続く正統派アルプスローダーの系譜であると言っていいだろう。
※原文より筆者自身が加筆修正しています。