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ふわふわと失点。攻撃は不発 5連戦を黒星発進/レノファ山口

上田真之介ライター/エディター
惜敗。イレブンは肩を落とした=筆者撮影、この記事の他の写真・図も

 J2レノファ山口FCは8月8日、山口市の維新みらいふスタジアムで栃木SCと対戦し、0-1で敗れた。後半の開始からわずか20秒で失点。攻撃では決定機を逃すなど、両ゴール前でのクオリティーと集中力の差が勝敗を分けた。

明治安田生命J2リーグ第10節◇レノファ山口FC 0-1 栃木SC【得点者】栃木=大島康樹(後半1分)【入場者数】1688人【会場】維新みらいふスタジアム

レノファの先発布陣。8月12日が誕生日の河野孝汰は、今節が16歳でのラストマッチ
レノファの先発布陣。8月12日が誕生日の河野孝汰は、今節が16歳でのラストマッチ

 20位(前節終了時)で真夏の5連戦に突入したレノファ。結果は振るわないが、最近の試合では相手よりもボールを効果的に運び、勢いよくゴールに迫っていくシーンが増えていた。

 課題は好機をゴールに結びつける決定力と、頻発するセットプレーでの失点。今節は栃木のストロングポイントを抑え、ウィークポイントを突くことはもちろんだが、内なる課題をどれだけクリアして連戦に入れたかを見る試合にもなった。

足りなかった「勇気」

 午後7時3分に開始のホイッスルが鳴らされた今節のゲーム。日中の暑さが残り、あらゆるフラッグがなびかない無風のスタジアムで、先に主導権を握ったのは栃木だった。

 栃木は前線からプレスを掛けてレノファ陣内でボールを奪い、ペナルティーエリアの中まで侵入する。前半16分には栃木が最初の決定機。ロングスローの跳ね返りから、昨シーズンまでレノファでプレーしていた瀬川和樹が鋭く左足を振ってゴール前へ。レノファはGK山田元気がクリアするが、セカンドボールも栃木が回収。再び瀬川が送ったクロスボールに明本考浩が頭で合わせた。このシュートは右へと逸れたものの、その後も栃木がシュートにつながるシーンを作り続ける。

ドクターと言葉を交わす吉濱遼平(中央)
ドクターと言葉を交わす吉濱遼平(中央)

 一方のレノファは栃木のプレスを外せず、パスの質が上がらなかった。不運も重なる。前半9分という早い段階で右サイドハーフで先発した吉濱遼平が負傷し、退出。吉濱はプレッシャーを受けてもパスを引き出せる選手だったが、吉濱がピッチを去ったことで、高い位置でボールを保持できる選択肢が一つなくなった。

 それでもレノファはボランチに池上丈二と高宇洋を置き、質の高いパスを送り出せる布陣は整っていた。ただ、守備から攻撃への切り替えや動き出しも機敏とは言えず、パスがつながらなかったり、レノファらしさに欠けるロングボールを使ったりと、苦しいゲームにしてしまう。

 「勇気が足りなかった。圧力を圧力だと感じてしまっていた。もうちょっとボールを動かし、相手を動かして、ボールを相手陣地で握りたかった」

 そう話したのは霜田正浩監督。プレッシャーに対して消極的になっていたと振り返り、テクニカルエリアの最前線から声を張り上げた。

シュートを放つ河野孝汰。攻守で存在感を示した
シュートを放つ河野孝汰。攻守で存在感を示した

 無風の蒸し暑さが影響したのかもしれないが、前半30分頃を境に栃木のプレスが弱まっていく。逆にレノファは前線でプレッシャーを与えられるようになり、同41分には相手のボールを河野孝汰が奪ってドリブルで猛進。得点こそ挙げられなかったが、左足で強くシュートを放ち、ゴールを脅かした。河野は相手のカウンターに対しても、戻りながらのランニングで相手のコースを切り、クレバーに立ち回った。

 前半は0-0。レノファが流れをつかみそうな手応えを得つつ、15分のハーフタイムに入る。

あっさりと失点。好機も生かせず

 「前半の立ち上がりと終わり、後半の立ち上がりと終わりのところは常に失点しないように声を掛けていたが…」(池上丈二)

 勝利を期した後半が始まって、ため息が漏れ出るまでに20秒しか掛からなかった。一瞬の隙だった。

大島康樹(背番号19)のシュートに対し、レノファは人数こそ揃っていたが…
大島康樹(背番号19)のシュートに対し、レノファは人数こそ揃っていたが…

 後半のキックオフを担った栃木は、自陣から長いボールを右サイドの高い位置に送り出す。レノファは一度はクリアするが、セカンドボールを栃木が拾うと、明本考浩のスルーパスを右サイドハーフで先発した大島康樹が受けて左足でシュートを放ち、右隅のネットを揺らした。

 大島が「(明本とは)近い距離で練習中からできていた。外に張るというよりはコンビネーションで崩すことは意識していた。相手の隙を突けたと思う」と話したゴールシーン。15分間のインターバルで栃木のストロングが戻り、プレスを効かせてセカンドボールを拾い、二次攻撃を含めて崩すという狙いが凝縮されていた。

 これをレノファの視点で見ると、何ともお粗末な失点劇だ。強いプレスを掛けられるタイミングもあれば、シュートブロックができる余裕もあった。ペナルティーエリア付近ではオレンジの選手たちのほうが人数で勝っていたにも関わらず、集中力を欠いていたと言わざるを得ないふわふわとした失点だった。

 1点を追いかけるレノファは、ベンチスタートだった高井和馬と田中パウロ淳一を投入。吉濱のピンチヒッターとなった森晃太は左サイドに回り、果敢に飛び出して行く。

 フレッシュな選手を入れ、レノファは前半よりも相手陣にボールを運べるようになるが、後半19分の森のシュートは枠を捉えられず、同27分にはCKの跳ね返りから川井歩が右足を振るもゴールの上へと外れてしまう。

右サイドを駆け上がる川井歩。サイドバックの攻撃参加もカギを握る
右サイドを駆け上がる川井歩。サイドバックの攻撃参加もカギを握る

 なおもカウンターやセットプレーからチャンスは作るが、「山口のサイドを使った攻撃があったが、中で跳ね返すことができていた」(栃木・田坂和昭監督)と栃木が築いたボックス内の守備を崩しきれなかった。

 最終盤にはCKの好機にGKの山田元気が上がって同点弾を試みたが、最後まで1失点が重くのしかかり、また1得点が遠くにかすんだまま近づくことはなく、勝ち点は拾えなかった。0-1で敗れ、レノファは暫定21位に順位を下げた。

再現性は高くなっているが…

 冒頭に挙げた二つの課題。セットプレーを跳ね返す守備力とチャンスを決めきる決定力について述べるなら、1勝1敗といったところだろう。

 相手のセットプレーでは瀬川のシュートを山田のファインセーブで逃れる場面があったものの、GK頼みになる前に跳ね返せるシーンが多かった。今節に関しては及第点の出来だったと言えそうだが、その分だけ集中力を欠いた流れの中からの失点が悔やまれる。

 決定力不足は解消できていない。ただ、FW陣の決定力にフォーカスできるのは、一定数のチャンスが作れているからでもある。もしチャンスが全く作れていないのであれば、決定力を論ずる以前に、どうサッカーを作るのかを考えなければならないが、そこまで致命的な事態ではない。

マイボールにしようと奮闘する森晃太(左)。積極性を出し攻撃のリズムを作った
マイボールにしようと奮闘する森晃太(左)。積極性を出し攻撃のリズムを作った

 今月5日の練習後、霜田監督は「僕らは再現性の高いサッカーをやろうとしている。高井和馬のクロスに森晃太が飛び込むシーンは、今シーズンだけで5回も6回も作っている。それを得点にできないところが僕らの甘さだ」と話していた。

 今節もクロスだけではなく、同じサイドを縦に破っていったり、サイドチェンジや緩急で優位性を出したりする攻撃を見せる時間帯はあった。ゲームの入り方の悪さや負傷というアクシデントがあっても、確かに「再現性の高いサッカー」はできてきている。

 決定力は一朝一夕には上向かないが、そのレノファらしい時間を長くできれば、シュートの試行回数は増える。だが、現状は相手が疲れてきたり、相手に得点が入ってからレノファの攻撃スイッチが入っているように見える。これでは結果は厳しい。

 キャプテンの池上は「置かれている状況から逃げずに、目の前の試合で勝ち点3を取れるようにやるだけだ」と前を向く。覇気をエネルギーに、自分たちからスイッチを入れる力強さをプレーで示さねばならない。

 サッカーチームにとって、勝負できる時間は90分。そのうちのどれだけを自分たちのコントロール下に置けるかで、今のレノファの勝敗は決まる。1分を無駄にすることなく、緊張感を持って試合に臨みたい。

 レノファは次戦はアウェー戦で8月12日午後7時から新潟市でアルビレックス新潟と対戦する。次のホームゲームは同16日午後7時から行われる大宮アルディージャ戦。いずれも超厳戒態勢で行われる見通しのため、アウェーサポーター向けの席は設けられない。

ライター/エディター

世界最小級ペンギン系記者・編集者。Jリーグ公認ファンサイト「J's GOAL」レノファ山口FC・ギラヴァンツ北九州担当(でした)。

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