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家の中と家の外で刺される蚊の種類が違うって知ってた? 刺されないために知っておきたい対策法

有吉立アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当
写真はイメージ(写真:アフロ)

日本で刺される蚊は、屋内では「アカイエカ」屋外では「ヒトスジシマカ」が中心となっています。今回はよく見かけるこの2種類の蚊について、生態と対処法をご紹介します。

家の中が好きなアカイエカ(インドア派)

アカイエカの体長は約5.5mm、薄い茶褐色の体をしています。春~11月頃まで活動していますが、梅雨の時期にあたる6~7月に活発化します。真夏にいったん少なくなりますが、9月中旬〜11月上旬まで活動します。夜間吸血性の蚊なので、夕方から夜にかけてよく刺してきます。

探索型の蚊なので、二酸化炭素や熱を感知して人を探すと人に付いてきて、家の中に入り込んでしまいます。日中明るいうちは、人に見つかりにくい天井やカーテンや家具の裏、狭い隙間、テーブルの下などに隠れています。夕方になると活発に動き出し、人を刺して吸血します。

アカイエカの対処法

・家の中に入れないためには

窓や玄関からの侵入を防ぐには、リキッドタイプの蚊とり器(液体蚊とり器)を使用することをお勧めします。ピレスロイド剤を有効成分としているので、それらを感知した蚊は吸血意欲を失いその空間から離れてしまうので入ってきません。窓を開けて使用しても効果があります。玄関などコンセントがない場所で使用する場合は、電池タイプが便利です。

・消灯後に耳元の「ぶ~ん」で気付いたときは

人が寝ようとして電気を消すと「ぶーん」という羽音、そこで初めてアカイエカの存在に気づく場合もあるかもしれません。電気を付けると隠れてしまい、探すのは大変です。そんな時は、蚊に刺されない空間を作りましょう。ピレスロイド剤を有効成分とする「ワンプッシュ式蚊とり(スプレー)」を使うと効果的です。寝室空間に1回プッシュすれば、朝まで効果が持続します。また、伝統的なものですが、寝床を覆う「蚊帳(かや)」も有効です。

写真はイメージ
写真はイメージ提供:イメージマート

アカイエカについてもっと詳しく知りたい方はこちらから↓

蚊はいつどこから家に入ってくるの?侵入の防ぎ方と刺されないための裏技は?

次に、屋外で活動する際に注意が必要なヒトスジシマカについて見ていきましょう。

家の外が好きなヒトスジシマカ(アウトドア派)

ヒトスジシマカの体長は約4.5mm、名前の通り、背中に縦一筋の白い線があり、全体に黒白のしま模様です。本州では5月から10月頃まで活発に活動しています。昼間活動性の蚊で、最もよく吸血する時間帯は朝夕です。特に夕方4~6時がいちばん多く、人を好んで刺してきます。

待ち伏せ型の蚊なので、潜伏場所である雑草が生い茂る場所、例えば、人家の庭や公園、墓地、雑木林などを好みます。近づいてきた人や動物を狙って吸血します。1日の移動距離はせいぜい100メートルで、潜伏場所から離れてまで吸血源を追うことはあまりありません。

キャンプやアウトドアスポーツ、花火大会、ガーデニングなど、屋外活動をする場所は雑草が多く、そこで私たちを狙ってきます。

ヒトスジシマカの対処法

・服装も考えましょう

蚊は人間のように目が見えていませんが、黒い色に寄ってきます。明暗のコントラストで識別しているので、コントラストの強い服、例えば白黒のボーダー柄のTシャツなどは黒色だけのTシャツより刺されやすいです。刺されないためには、白っぽい明るい単色の服を着るとよいです。また、肌の露出をしないことも有効です。特に足には多くの汗腺があり足元を狙ってくることが多いので、サンダルではなく靴下と靴を履くことが望ましいです。

・「風」も効果があります

蚊は軽いので、風に弱く、簡単に吹き飛ばされてしまいます。身体に風を当てておけば、蚊は近寄ることができません。でも、身体の一部だけならうちわなどで風を当てることもできるかも知れませんが、そうでない部分は狙われます。風のない日に、野外で全身に風を当てることはかなり難しいかもしれません。

虫よけ剤も効果的です。ただ、塗り方には気をつけて

・虫よけ剤の効果的な塗り方

虫よけ剤を使うとき「虫が嫌いなニオイをかけているんだから、ふわっとスプレーしておけば大丈夫」と思っていませんか? それは間違いです。虫よけ剤のニオイが蚊を寄せ付けないのではなく、その成分が蚊の感覚器官を混乱させ、人や動物を認識できなくさせるのです。

虫除け剤を塗った部分は、蚊から見たら透明人間になるというイメージを持ってもらえばいいかと思います。完璧に塗れば蚊は吸血源だと認識できません。逆に塗りムラがあるとそのわずかな肌を認識して寄って来てしまいます。

写真はイメージ
写真はイメージ写真:イメージマート

スプレータイプの虫よけ剤は、肌から15センチくらい離してスプレーした後、塗りムラができないよう手で伸ばして、しっかりと広げます。顔や首筋には、手のひらにスプレーしてから塗ることでムラを防げます。お子様には、いったん大人が手の平にスプレーしてから塗ってあげましょう。

ヒトスジシマカについてもっと詳しく知りたい方はこちらから。

虫よけスプレーを使っても蚊が寄ってくるのには理由があった!? 外で刺されない秘訣は

蚊が媒介する感染症には注意が必要

アメリカやブラジルでデング熱が流行していて、コロナ明けで世界中からの旅行者が急増しています。今夏のパリオリンピック開催に伴い、人の動きが活発化することで、日本でもデング熱の流行リスクが高まっています。デング熱は日本では、ヒトスジシマカによって媒介されます。感染を防ぐためには「蚊に刺されない」ことが最も重要です。虫よけ剤を正しく使用して、感染症から自身を守りましょう。

アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当

兵庫県出身。都内の美術学校卒業後、 家具店店員、陶芸教室講師など虫とは全く関係のない職業に就いていたが、1998年に地元・赤穂のアース製薬に入社以来、害虫の飼育を担当している。しかし、現在も虫は好きではない。著書に「きらいになれない害虫図鑑」(幻冬舎)※記事は個人としての発信です。

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