【体操競技】岡村真 天性の愛らしさも魅力のパリ五輪“ニューフェイス”候補 #体操競技
9、10月に中国で開催された杭州アジア大会の体操競技で、日本人史上初となる平均台の種目別金メダルに輝いた18歳の岡村真(おかむらまな)が、10月26日に三重県四日市市で行われた全日本団体選手権に出場し、ハツラツとした演技で会場を沸かせた。
開催地・三重県の相好体操クラブに所属するホープは、パリ五輪で団体メダルを目指す日本女子の“ニューフェイス候補”。「美しく綺麗な体操でしっかり代表を勝ち取りたい」という意気込みを胸に、今年最後の大会に臨んだ。
■地元で大きな声援を受けて
岡村は三重県津市の小学校1年生だった時から体操を始め、現在は四日市市・暁高校の3年生。まだ2年生だった今年2月のW杯コトブス大会で平均台優勝を果たして注目され、4、5、6月の代表選考シリーズでは世界選手権代表は逃したものの、アジア大会代表の座をつかんだ。
今回の全日本団体選手権では、地元選手らしくスタンドから拍手や声援を盛んに浴びた。
「小学生の頃に一緒に練習をしていた子たちがいたり、顔を知っている子たちが応援してくれていて、力になるような感じでした」(岡村)
その言葉通り、左ひざ負傷の影響でゆかと跳馬を回避したものの、出場した2種目ではさすがの演技を見せた。
自身最初の種目だった段違い平行棒では予定していた降り技を抜いたというが、「ひとつひとつの演技を丁寧にできた」と、持ち前の正確な実施を披露。Dスコアは5.0であまり高くないが、Eスコアを8.066と8点台に乗せて13.066点をマークした。
■アジア大会金メダルの平均台ではさらに難度を上げる試みも
最終種目は得意の平均台。岡村は、金メダルを獲ったアジア大会よりもさらなる高得点を目指すべく、ボーナス加点が多くつく3連続技に挑む予定で準備を進めてきた。しかし、演技の最中にわずかなズレを察知してリスクを回避。「側宙、スワン、バック転」と3つつなげる予定だったところを、これまでと同じ「側宙、スワン」の2連続にとどめた。
全体的にはスムーズな流れの演技で、難度を示すDスコア5.7、実施評価のEスコア8.100、合計13.800点という高得点。しかし、試合後の岡村は硬い表情で反省の弁を繰り返した。
「3連続を入れる予定だったんですけど、守りの姿勢になってしまって、うまくつなげられなかった。普段の2連続だったら多少曲がっても修正するスキルが身についているんですけど、3連続になるとうまく修正できなかった。流れ的には良かったのですが、ほんの少し曲がってしまい、修正できなかったのでやめた、という感じです」
■田中光・女子強化本部長「体線が美しく、芸術性が高い」
ただ、採点結果は悪いものではなかった。2021年北九州世界選手権金メダリストで今年の世界選手権でも5位入賞を果たした芦川うらら(日体大)の13.866点に次ぐ全体2位の高得点。ジュニア時代から全国大会で好成績を残してきた期待の選手は、順調な成長を見せている。
田中光女子強化本部長は「体線が美しく、芸術性が高い。高いEスコアを取れる選手なので、日本にとっては非常に戦力になる選手だと思っている」と高く評価。「あとはパワー、瞬発力のところを冬場のトレーニングで上げてもらって、得意種目の平均台に加えて、ゆかや跳馬を上げてもらえると、五輪などの代表メンバーに入って来られる位置にいると思う」と期待を寄せている。
今回の全日本団体出場権では見られなかったが、「カノン」の曲に乗って軽やかに演技するゆかでは、緊張感の漂う試合会場を瞬時にパッと明るくするほどの、天性の愛らしさに満ちている。技のこなし方のひとつひとつには丁寧さが感じられ、審判や観客へ挨拶する時に片足を一歩引いておじぎする動作には折り目正しい美しさがある。
■「減点させない演技を目標に」
パリ五輪の代表選考会は来年4月に始まる予定だ。代表入りするために必要なことは何か、という問いに岡村は「今から技をたくさん増やすというよりは、自分が持っている構成をもっと丁寧にやって減点させない演技を目標に、もっと安定性を出せるようにしていきたい」と、キリッとした表情で前を見据えた。