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大阪桐蔭にとって府下最大のライバルは履正社ではない? 実はもっと苦手なチームがあった!

森本栄浩毎日放送アナウンサー
大阪桐蔭が伝統的に苦手とする金光大阪。春の大会決勝でも土をつけた(筆者撮影)

 現在の高校球界をリードする大阪桐蔭。全国のチームから目標にされ、子どもたちからは憧れと羨望の眼差しを向けられている。それでも全国屈指の激戦と言われる大阪を勝ち抜くのは並大抵のことではないと思うのだが、特にコロナ以降は大阪でまったく負けていなかった。その大阪桐蔭が3年ぶりに府下公式戦で金光大阪(タイトル写真)に敗れた。

履正社には甲子園が懸かった夏に12連勝中

 大阪桐蔭のライバルということで真っ先に名前が挙がるとすれば履正社だろう。実際の実力で言えば、「大阪2強」は履正社で間違いない。直近の公式戦敗戦となった2020年夏の「独自大会」では、3-9で履正社に敗れている。少なくとも大阪府下の大会で今世紀以降、大阪桐蔭の次に勝っているのは履正社で、プロ球界で活躍する選手も多く、4年前の夏には全国制覇も果たした。しかし、夏の甲子園を懸けた直接対決では、昨夏まで大阪桐蔭の12連勝中(独自大会は甲子園出場につながらない)という意外な結果なのだ。イメージとして「履正社は大阪桐蔭以外にはまず負けない。大阪桐蔭は、履正社には勝つが、意外なチームに取りこぼす」といったところか。

コロナ以降、大阪で初めて土をつけた金光大阪

 ではその「意外なチーム」とはどこか?それは前述のコロナ以降、大阪桐蔭に初めて土をつけた金光である。大阪桐蔭は、金光が苦手だったのだ。履正社同様、金光には専用の寮がなく、ほぼ全選手が、自宅通学をしている。校舎に隣接する人工芝のグラウンドは広いが他部との共用で、全国の強豪校と比較すれば、決して恵まれた環境とは言えない。しかし今春の勝利以外に、少なくとも3回は大阪桐蔭の甲子園出場を阻んでいる

中田翔、最後の夏は金光に敗れる

 大阪桐蔭がPL学園を凌駕し始めた2007年夏は、履正社を5回戦で破り順調に勝ち進んだ。エースで4番に中田翔(巨人)がいて、捕手が岡田雅利(西武)、2年生の浅村栄斗(楽天)がスタメンに名を連ねる豪華な布陣で、決勝で当たる金光には好左腕・植松優友投手(元ロッテ)がいたが、大阪桐蔭有利と見られた。しかし試合は、初回に中田から3点を奪った金光のペースで進み、9回にも1点を追加。粘る大阪桐蔭は9回裏、懸命に挽回し、2点を返すが及ばず、4-3で金光が逃げ切った。2年生春のヒジ痛から復活した中田だったが、初回の3失点が重く、最後の夏は大阪大会決勝で涙をのんだ。

秋の近畿大会でセンバツを懸け、大阪決戦

 翌年は記念大会で、大阪桐蔭は北大阪代表として全国制覇を果たした。夏春連覇を期待された08年秋、1年生左腕・福本翼投手(青山学院大~東芝、現東芝コーチ)を軸に大阪大会ではPLに敗れたものの、3位で近畿大会に出場。

下級生エースとしてチームを引っ張った福本翼投手。この試合はサヨナラ負けしたが、翌年秋はPLを破って大阪で優勝。近畿大会でも準優勝してセンバツ切符を手にした(08年10月26日、京都で筆者撮影)
下級生エースとしてチームを引っ張った福本翼投手。この試合はサヨナラ負けしたが、翌年秋はPLを破って大阪で優勝。近畿大会でも準優勝してセンバツ切符を手にした(08年10月26日、京都で筆者撮影)

 初戦で滝川二(兵庫)にコールド勝ちして、金光との準々決勝に進んだ。金光は2位での近畿出場だったが大阪大会での両校の対戦はなく、事実上のセンバツを懸けた戦いとなった。試合は降りしきる雨の中、大阪桐蔭が序盤に失策絡みで2点を奪って主導権を握り、福本投手の好投もあって逃げ切るかと思われた。

金光・陽川の同点弾で追いつき、サヨナラ勝ち

 しかし雨による中断で流れが変わり、8回には4番・陽川尚将(西武)が同点弾。

降りしきる雨の中、8回に同点弾を放ち喜ぶ金光の4番・陽川。阪神で長打力を発揮して活躍し、現役ドラフトで今季、西武へ移籍した。19日には待望の一発も出て、長打力は健在だ(筆者撮影)
降りしきる雨の中、8回に同点弾を放ち喜ぶ金光の4番・陽川。阪神で長打力を発揮して活躍し、現役ドラフトで今季、西武へ移籍した。19日には待望の一発も出て、長打力は健在だ(筆者撮影)

 9回にはエース・木場健志郎投手がサヨナラ犠飛を放って、3-2で金光が鮮やかなサヨナラ勝ちを収めた。阪神で活躍した陽川は先日、西武への移籍後第1号を放って、長打力健在ぶりをアピールしている。一方、サヨナラ負けした福本投手は翌年のセンバツにエース兼主将として出場した。大阪桐蔭の現エース・前田悠伍(3年)は、福本投手以来の投手主将である。

4年前の夏はタイブレークで金光が逆転サヨナラ

 上記の2試合はいずれも金光が直接対決に勝って甲子園をつかんだが、19年夏は金光が大阪桐蔭を破ったにもかかわらず、甲子園を逃した。大阪大会準々決勝で当たった両校は、1-1のまま譲らず、壮絶なタイブレークの死闘を演じる。14回に2点を勝ち越した大阪桐蔭だったが、エース・中田惟斗(オリックス)が息切れし、連続押し出しとスクイズで逆転サヨナラ負けした。前年に2度目の春夏連覇を果たしていた大阪桐蔭は、この敗戦で春夏とも甲子園出場を逃したが、金光は決勝で履正社に敗れ、甲子園には行けなかった。

夏にまた直接対決があれば…

 こうして振り返ると、大阪桐蔭が全国優勝した直後に、金光が待ったをかけていることがわかる。大阪桐蔭は昨季、センバツで優勝したが、1年後の今春、金光に敗れた。せめてもの救いは、これが甲子園に直結しない試合だったことである。選手は毎年、入れ替わるが、両校監督はこの対戦を忘れるわけがない。大阪桐蔭の西谷浩一監督(53)にとって金光は、履正社以上にやりにくい相手なのではないか。夏にまた直接対決があれば、過去の対戦がよみがえってくるかもしれない。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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