【宮城県 塩竈市】建物から時を味わう美術館 -塩竈市杉村惇美術館- [本町地区]
宮城県が誇る港町の1つ『塩竈市(しおがまし)』の街なかに、昭和時代を色濃く残す美術館『塩竈市杉村惇美術館(すぎむらじゅん びじゅつかん)』がある。その建物は、元々市の公民館(本町分室)として1950年に誕生し、2014年改装後に現在の美術館としての役目を担い、再活躍している。
JR仙石線(せんせきせん)の『本塩釜駅(ほんしおがまえき)』から商店街を通り、歩いて約10分ほどで小高い丘の上に、赤いザクロ色をした同美術館の屋根が見えてくる。
館内に入ったら杉村惇氏の世界に触れるだけでなく、約70年以上の時を刻んできた建物の風合いや、空間もじっくりと味わってほしい。
コツン、コツン・・・
ギィ、ギィ・・
館内の木造の床を歩き進めるたびに、奏でられる足跡の音色が心地良くて、ついつい下を向きながらゆうらりと蛇行してしまう。天を見上げれば、ぼぅっとランプの火が広がるような、あたたかな照明がぽつりぽつり。今ではすっかり懐かしさを感じるデザインに、むやみにぐるりと色々な方向から眺めてみたくなるほど魅力的。
建物は外から見ると横に長く感じられるけれど、中に入ると中庭を取り囲むようにして、2階建ての「コの字型」のような設計になっているから面白い。
2階はメインの美術館で1階は主に公民館としてのスペース、と館内は上手に役割分担されている。
1階の広い玄関口から真っ直ぐ奥へと進んでいくと、大きなアーチ状の天井が美しい『大講堂(だいこうどう)』へとつづく。
じつは同美術館は芸術交流のほかにも地域交流の場として、大講堂を含めた『講習室』や『日本間』などの各部屋の貸し出しも行なっている。
そのため訪れたタイミングによっては、大講堂から合唱団の歌声が聞こえてきたり、ワークショップで楽しむ子どもたちの笑い声が響いたり。静かな佇まいの中には憩いのにぎやかさがあって、なんだかあたたかな雰囲気に包まれている。
近代的な今を生きる建物には無いものが、ここ塩竈市杉村惇美術館にはある。
地域のみんなに愛されていていることが、床の傷や壁の色滲みからじんわりと伝わり、現在の施設の在り方に、杉村惇氏もひょっとしたらニコリと微笑んでいるかもしれない。
■名称:塩竈市杉村惇美術館
■住所:宮城県塩竈市本町8番1号
■営業時間:
【美術館】10:00 - 17:00(最終受付16:30まで)
【公民館】9:00 - 21:00(館内施設の利用可能時間)
■休館日:毎週月曜日、年末年始(12月28日~1月4日)
※祝日・振替休日の場合はその翌日
■公式SNS:気になった方は施設の公式インスタグラムをチェックしてみよう!