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【宮城県 塩竈市】建物から時を味わう美術館 -塩竈市杉村惇美術館- [本町地区]

Molly Chibaフリーランスライター(東松島市・宮城郡・塩竈市)

宮城県が誇る港町の1つ『塩竈市(しおがまし)』の街なかに、昭和時代を色濃く残す美術館『塩竈市杉村惇美術館(すぎむらじゅん びじゅつかん)』がある。その建物は、元々市の公民館(本町分室)として1950年に誕生し、2014年改装後に現在の美術館としての役目を担い、再活躍している。

JR仙石線(せんせきせん)の『本塩釜駅(ほんしおがまえき)』から商店街を通り、歩いて約10分ほどで小高い丘の上に、赤いザクロ色をした同美術館の屋根が見えてくる。

▲ 商店街から少し奥へと入るようにして階段を少し登った先が美術館だ
▲ 商店街から少し奥へと入るようにして階段を少し登った先が美術館だ

館内に入ったら杉村惇氏の世界に触れるだけでなく、約70年以上の時を刻んできた建物の風合いや、空間もじっくりと味わってほしい。

▲ 写真は館内入り口の様子
▲ 写真は館内入り口の様子

コツン、コツン・・・
ギィ、ギィ・・
館内の木造の床を歩き進めるたびに、奏でられる足跡の音色が心地良くて、ついつい下を向きながらゆうらりと蛇行してしまう。天を見上げれば、ぼぅっとランプの火が広がるような、あたたかな照明がぽつりぽつり。今ではすっかり懐かしさを感じるデザインに、むやみにぐるりと色々な方向から眺めてみたくなるほど魅力的。

建物は外から見ると横に長く感じられるけれど、中に入ると中庭を取り囲むようにして、2階建ての「コの字型」のような設計になっているから面白い。

▲ 中庭には杉村惇氏がこよなく愛した「ザクロ」の木が植えられている
▲ 中庭には杉村惇氏がこよなく愛した「ザクロ」の木が植えられている

2階はメインの美術館で1階は主に公民館としてのスペース、と館内は上手に役割分担されている。

▲2階の美術館エリアはさらに独特の雰囲気がある(ここはあえて写真は出さずに・・直接体感をおすすめする)
▲2階の美術館エリアはさらに独特の雰囲気がある(ここはあえて写真は出さずに・・直接体感をおすすめする)

1階の広い玄関口から真っ直ぐ奥へと進んでいくと、大きなアーチ状の天井が美しい『大講堂(だいこうどう)』へとつづく。

▲ 『大講堂』への廊下
▲ 『大講堂』への廊下

じつは同美術館は芸術交流のほかにも地域交流の場として、大講堂を含めた『講習室』や『日本間』などの各部屋の貸し出しも行なっている。

▲ 『大講堂』の中の様子(写真提供:塩竈市杉村惇美術館)
▲ 『大講堂』の中の様子(写真提供:塩竈市杉村惇美術館)

そのため訪れたタイミングによっては、大講堂から合唱団の歌声が聞こえてきたり、ワークショップで楽しむ子どもたちの笑い声が響いたり。静かな佇まいの中には憩いのにぎやかさがあって、なんだかあたたかな雰囲気に包まれている。

近代的な今を生きる建物には無いものが、ここ塩竈市杉村惇美術館にはある。

地域のみんなに愛されていていることが、床の傷や壁の色滲みからじんわりと伝わり、現在の施設の在り方に、杉村惇氏もひょっとしたらニコリと微笑んでいるかもしれない。

■名称:塩竈市杉村惇美術館
■住所:宮城県塩竈市本町8番1号
■営業時間:
【美術館】10:00 - 17:00(最終受付16:30まで)
【公民館】9:00 - 21:00(館内施設の利用可能時間)
■休館日:毎週月曜日、年末年始(12月28日~1月4日)
※祝日・振替休日の場合はその翌日
■公式SNS:気になった方は施設の公式インスタグラムをチェックしてみよう!

フリーランスライター(東松島市・宮城郡・塩竈市)

Molly Chiba|日本出身|2022年2月からフリーランスのライターとして独立。日本と英国を拠点に活動中。日本国内の地域ニュースやコラムのほかに、日・英のサッカーに関するコラムを『Football Tribe Japan』に執筆中。2024年8月の「地域クリエイターMVA(Most Valuable Article)」を受賞。珈琲と自然と動物が好きです。

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