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原監督の「大竹への苦言」が象徴するNPB監督の残念な管理手法

豊浦彰太郎Baseball Writer

走塁で負傷した巨人の大竹に関し、原監督が苦言を呈したようだ。NPBでは日常的な監督による選手批判だが、このようなコメントは危険だ。選手が故障を隠すようになりかねない。また、このことはNPB監督のネガティブなアプローチでの人事管理を象徴しており残念だ。

6月3日、ヤフオクドームでのソフトバンク対巨人の6回表、2死三塁で打席に入ったこの日の先発投手大竹は遊ゴロを放った。ところが、一塁に走る途中で右太もも裏がつるアクシデント。結局、降板となった。

この大竹に対し、試合後の原監督のコメントは厳しかった。「あの程度でつってもらったら困る」。確かに大竹は一塁へ「駆け込んだ」訳ではなく、あまり恰好の好い負傷ではなかった。しかし、原監督の発言は身も蓋もない。

どうして選手をかばってやれないのか。プレー中の負傷は不可避である。故障の可能性はだれしもが抱えている。原監督は、大竹が「たるんどるからケガした」と思っているのだろうか。この場合、原監督が(少なくとも本人不在の場で)記者団に伝えるべきは、「大事に至らぬことを願う」であり「無理せず治療に専念して欲しい」だと思う。管理者である監督が守らずして、だれが選手を守るのか。

何も今回の原監督に限ったことではないが、監督が選手に対する不満をメディアにぶつけるのには心が痛む。選手に改めるべき点があるなら、マンツーマンの場で伝えてやれば良い。それをメディアに向けて発信するのはファンサービスでも何でもない。パワー・ハラスメントだと思う。

このような発言が容認されている背景には、選手にも「怒られている間がハナ」という認識があるからだと思う。これは大変不幸なことだ。スポーツ選手に限らず、部下が最も恐れるのは上司から諌められることではなく無視されることだ。部下(選手)は、常に上司(監督)からのストローク(心理学用語で、「気に掛けてあげること、人を認めてあげること」)を求めている。そして、プロ野球を始めとするスポーツの世界では、叱ること、怒鳴ること以外にストロークの方法を知らない残念な指導者が多いのだ。

話を今回の大竹の一件に戻すと、選手が負傷した際に監督が「不快感」を表明することは、今後選手が負傷を隠すという最悪のケースを誘発しかねない。それでなくても、選手は痛くても「大丈夫です」と無理しがちなものだ。その意味でも今回の原発言は残念だった。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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