中国で国債が人気化、安全志向など日本化との見方も
中国で国債が人気化しているという。不動産不況に直面する中国で、行き場を失ったマネーが国債市場に集中している。ある意味安全志向ともいえるものだが、やや過熱気味でもあるらしい。
中国の10年物国債の利回りは、4月26、29、30日に一時2.205%まで低下し、英LSEGでデータを取得できる2000年以降で最も低い水準となった(5日付日本経済新聞)。
5月22日に上海・深セン証券取引所に上場した30年物超長期特別国債は、初日は買い殺到で急騰し、それぞれ2回売買を停止。翌23日は一転急落するなどマネーゲームとなっていたとか。
1985年10月に東京証券取引所に長期国債先物が上場したあとの日本の債券市場のようなことが中国で起きている。
償還までの期間が30年の超長期の特別国債を5月17日に発行したが、24日には20年債、6月に50年債の発行も始まった。
李強首相は3月の全人代で、2024年から数年かけて超長期国債を発行すると説明していた。2024年は1兆元(約22兆円)を発行し、重要な国家プロジェクトや国家安全に関する分野に投じると指摘した(5月13日付日本経済新聞)。
中国では不動産不況をきっかけに、株式投資に対する根強い不信感などが背景にある一方、預金が増え、企業の資金需要の停滞で銀行が優良な貸出先を見つけられず、国債に資金が集中する構図となっている。国債買いの主役は国有大手銀行と比べて相対的に顧客基盤や体力が弱い農村金融機関だとか(5日付日本経済新聞)。
国債が大量に発行されてマーケットに厚みが増し、銀行からのニーズが強まり、マネーゲーム化した構図は、たしかに日本の状況に似ている面もあるかもしれない。
これに対して中国人民銀行(中央銀行)は過熱する国債買いに、売り介入を示唆したとか。人民銀の保有国債は1兆5240億元(約33兆円)で、その規模は国債市場全体(30兆7000億元)の約5%にとどまる。空売りの可能性も排除できないという。
これに対して日本銀行は国債残存の半分ほど保有している。日銀は国債の買いオペだけでなく、売りオペも制度上は可能である。しかし何故か、売りオペなどは言語道断、少し減らすだけでも慎重にやらざるを得ないというような状況に陥っている。
同じ国債を取り扱っているのに、この差はいったい何であろうか。ちなみに日本で日本国債が不人気などでは当然ないのだが。