金正恩体制が犯した「女性・児童虐待」の罪…終わりなき国連の追及
北朝鮮人権問題に関する国連特別報告者のマルズキ・ダルスマン氏が、人権問題をめぐり金正恩(キム・ジョンウン)体制に不信感を表した。
ダルスマン氏は12日、韓国の聯合ニュースとのインタビューのなかで、北朝鮮の人権問題について「体制まで含めた全システムの問題だ」と指摘。さらに、女性や子ども、障害者、高齢者など社会的弱者にアプローチしながら、国際社会との信頼関係を築くことが人権問題を改善できる効果的な方法と述べたという。
児童への性犯罪も
北朝鮮で最も知られている人権侵害といえば、政治犯収容所、そして衆人のまえで無慈悲に銃殺される公開処刑がある。記憶に新しいところでは、昨年5月、玄永哲元人民武力相(国防大臣にあたる)が公開銃殺され、金正恩党委員長の残忍さを世界に知らしめた。
(参考記事:北朝鮮の「公開処刑」はこうして行われる)
こうした問題もさることながら、女性や子どもなど、社会的弱者に対する人権侵害に積極的に取り組む姿勢を見せたダルスマン氏の功績は評価できる。
北朝鮮の女性たちは、軍隊内や職場内で性的暴行などを受けても、明らかにすれば、被害者である女性が侮辱されたり不利益を受けたりするので、女性は沈黙するしかない。そもそも人権の何たるかを知らないために、自分が人権侵害の被害者であるということにすら気づかない。
(参考記事:脱北女性、北朝鮮軍隊内の性的暴力を暴露「人権侵害と気づかない」)
子どもに対する人権侵害も根が深い。北朝鮮の児童は、今の時期の「田植え戦闘」からはじまってクズ鉄集めなど、様々な奉仕労働に動員される。学校では忠誠の献金を要求され、これが払えない貧しい家庭の子どもたちは学校に行けなくなるケースもある。また、世界的に問題になりつつある「児童への性虐待」も、以前から存在するという情報が内部から伝わってくる。もちろん、北朝鮮当局がこうした問題について自発的に明らかにしたり、改善する姿勢を見せたことは一度もない。
(参考記事:北朝鮮の「児童性虐待」、救われぬ現実)
国際社会が、北朝鮮の女性と子どもの人権侵害を追及しているという情報が、国内に伝われば、徐々に北朝鮮国民の人権意識も変わっていく可能性がある。北朝鮮当局も痛いところを突かれたのか、国連とダルスマン氏に対して猛反発した。今年1月には、ダルスマン氏に対して「米国の手先」「操り人形の役割をする汚い守銭奴、穀潰し」などと罵倒した。しかし、いくら北朝鮮が罵倒しようとも、この先、国連の追及がやむことはない。
北朝鮮の人権侵害の多くは、金日成氏によってシステム化され、正日氏に受け継がれた。正恩氏は、自身の正当化の拠り所とする祖父と父親の偉大性とともに、「負の遺産」である人権侵害を受け継がざるをえなかった。北朝鮮の人権侵害は体制維持のためにシステム化されたものであり、解明や改善は体制不安につながりかねないからだ。
金正恩体制にとって人権問題とは「前門の虎、後門の狼」といえる。