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8月5日と6日の東京市場、大荒れの2日間

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 8月5日の東京市場は史上希に見る大荒れの相場となった。東京株式市場ではパニック的な売りとなり、下げ幅を大きく拡大。円高も急速に進行したことも相まって、日経平均は4000円を超す下げとなった。

 後場に入り日経平均先物はサーキットブレーカーが発動。さらに年初来の安値も更新、つまり年初から上昇していた分が剥がれ落ちた格好となった。この日の日経平均の引けは4451円安となり、ブラックマンデー時の下げ幅を上回った。

 5日の外為市場では円高の動きが加速され、ドル円は一時141円台に低下。2日は149円台をつけていたことで8円近い下落となっていた。

 2日の米雇用統計と米株の下落などを受けて、米10年債利回りは3.79%と大きく低下していた。5日の債券市場では、この米債が大きく買われたことと、東京株式市場の急落によるリスク回避の動きによって、債券先物は2円を超す上昇となってサーキットブレーカーが発動した。引けは2円26銭高の146円06銭。10年債利回りは0.755%と前日から0.2%もの低下となっていた。

 これらの動き、つまり日本での株安・円高・債券高は、円資金が低い金利で調達できたことで、その調達資金を株などの投資を行う、円キャリー取引を解消する動きといえた。

 ヘッジファンドが大規模なポジションを解消したことが要因となったとみられる。そのひとつのきっかけが日銀の利上げであった可能性はある。

 ただし、これは日銀が利上げをしたためではなく、円キャリー取引は日銀は利上げをしないという前提で組んだポジションであったことで、日銀が利上げが出来たことで、そのポジションを解消せざるを得なくなったとの見方もできよう。

 そのポジションは米国では半導体関連株などを中心に買入れ、出遅れていたとみられた日本株も半導体関連株を主体に購入。さらに外為市場ではドル買い円売りのポジションを取り、米債や円債はインフレトレードとして、ショートポジションを作っていた可能性が高い。

 しかし、7月10日あたりから米国株式市場では半導体関連株が下落し、ドル円が下落基調となり、米債も買い戻されてきた。そこに日銀の利上げが加わり、ロスカットのような動きが大きなポジションで生じた。

 6日に日経平均は今度は過去最大の上げ幅となった。この日の日経平均は3217円高で引けており、上昇幅は過去最大となった。10年債利回りは一時0.950%まで上昇し、ドル円は一時146円台を回復した。

 ポジション解消が一服したことで、売られ過ぎ、買われ過ぎの反動が起きたとみて良いかと思う。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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