軽量級選手でありながら、アメリカのボクシング界でもWBC世界スーパーフライ級王者ジェシー・“バム”・ロドリゲス（アメリカ/帝拳）の評価は高まる一方だ。

　24歳にしてすでにフライ級、スーパーフライ級の２階級を制覇。その過程でカルロス・クアドラス（プエルトリコ ）、シーサケット・ソールンビサイ（タイ）、サニー・エドワーズ（英国）を下し、６月29日の最新試合では引退後の殿堂入りも確実なファン・フランシスコ・エストラーダ （メキシコ）を完璧な７回KOで破ってみせた。　

　リングマガジンのパウンド・フォー・パウンド・ランキングでも早くもトップ10入り。今後はさらなるビッグファイトが視界に入って来そうだ。

　ロサンゼルスのホテルに姿を見せたロドリゲスに８月２日、ゆっくりと話を聞いた。必ずしも自分のことを話すのが得意なタイプではないが、キャリアを重ね、喋りもかなり滑らかになった。これまで多くの強敵を撃破し、中でも特に“レジェンド”のエストラーダに完勝した前戦は大きな自信になっているようだ。

日本での休暇を楽しんだばかり

――あなたはもともとお喋りなタイプではないですが、注目度の高さにもだいぶ慣れて来ましたか？

ジェシー・ロドリゲス（以下、JR） : 以前はインタビューのたびにナーバスになっていましたが、今では普通の会話のように話せるようになってきました。取材対応も世界王者としてやらなければいけないこと。特に今日は他にやることがないので、楽しい時間の使い方になっています（笑）

――エストラーダ戦後に日本に行ったとのことですが、いつ、どの街を訪れたんでしょうか？

JR : 試合の３日後、東京に行って８日間滞在しました。ボクシングから離れ、ガールフレンドと一緒にいい時間が過ごせました。多くの人から試合（井岡一翔（志成）対フェルナンド・マルティネス（アルゼンチン）戦）を観に行ったのかと聞かれましたが、あの旅は楽しむためのもの。おいしい食事を食べ、観光をし、ボクシングのことはまったく考えなかったですよ。

――東京で最も記憶に残った思い出は？

JR : チームラボというミュージアムのような場所を訪れたのが印象に残っています。あとはディズニーシーにも行きました。他にも楽しかった経験は数え切れないほどあり、素晴らしい休暇になりました。私には必要な時間だったのだと思います。

――日本で美味しかった食事は？

JR : マクドナルドのテリヤキチキンバーガー（てりやきチキンフィレオ？）です。私のフェイバリットフードになりました（笑）。あとはラーメンもアメリカより種類が豊富だったので、かなり気に入りました。

会心の出来で”伝説”を撃破

――最新試合を振り返ってほしいのですが、軽量級の重要ファイトとして注目されたエストラーダ戦ではほぼ理想に近い戦いができたのでしょうか？

JR : 確かにあの日はいい試合ができ、“バム”・ロドリゲスがどんなボクサーであるかを世界の人々に示せたと思っています。ただ、もちろんまだ課題は残っています。あれだけの勝ち方をした後で、もっといいパフォーマンスを見せたいという新たな意気込みも生まれました。

――完璧に近いパフォーマンスの中で、６ラウンドに初めて味わったダウンをどう振り返りますか？

JR : 不思議な感じでしたね。コーナーからは賢明に、それまでやっていた通りにアウトボクシングをしろと指示を受けていました。ただ、私はちょっと自信過剰になり、油断してしまったのです。ゲームプランから外れ、ダウンを経験することになりました。これもいい経験。何があるかはわからないので、常に集中し続けなければいけないと学びました。

――ダメージはなかったんですよね？

JR : はい、ダメージはなく、フラッシュノックダウンというやつです。フロアに落ちる前から、（しまったと）笑ってしまったくらい（笑）。ああいうこともありますが、もう２度と起こらないように気をつけたいです。

――すでにクアドラス、シーサケット、エドワーズ、そしてエストラーダといったビッグネームを下して来ました。自分自身の期待感をも上回るようなキャリアが歩めているのでは？

JR : 自身の期待以上ということはないですね。クアドラス戦も試合前から勝てると思っていました。ソールンビサイ戦も試合前からメディアにKO勝ちすると宣言していました。そんな言葉を信じてくれた人もいれば、そうではなかった人もいましたが、自分自身ではこれまでやり遂げて来たことはすべて可能だと信じて戦って来ました。

――対戦した中で最強の相手は？

JR : たぶんエストラーダですね。

――次戦はまだ具体化していないと思いますが、プラン、希望は試合直後に話していたのと変わっていませんか？

JR : はい、エストラーダとの再戦か“プーマ”・マルティネスとの統一戦ですね。個人的な希望を言えば、井岡を破り、WBA、IBFの２冠王者になった“プーマ”と対戦したいです。どう戦えば彼に勝てるかはわかっていますし、ベルトを奪いたいです。

――井岡対マルティネス戦の前に予想を聞いたとき、井岡が勝つと思うと話していました。あの内容、結果には驚かされましたか？

JR : 井岡がアウトボクシングすると思っていたのですが、彼はゲームプランを間違えたように感じました。正面に立ち、マルティネスと打ち合ったのは適切ではなかったと思います。井岡はマルティネスを捌き切るだけの力はあったと思いますが、調子が悪かったのか、加齢が影響したのかはわかりません。結果的にいい試合になり、マルティネスが勝ったことには驚かされました。

To be continued,,,　インタビュー後半は井上尚弥、中谷潤人とのビッグファイトなどについて