中国が日本産水産物を段階的に輸入再開へ 日中合意もなお不透明感 ホタテ、ナマコは #専門家のまとめ
9月20日、日中両国政府は、東京電力福島第1原発の処理水放出を巡り、昨年8月から中国が全面停止してきた日本産水産物の輸入を段階的に再開することで合意したと発表した。国際原子力機関(IAEA)が中国も交えたモニタリング(監視)の追加実施を決めたことから決まった。
中国は規制を段階的に緩和するとしているが、緩和の具体的な道筋、スケジュールなどは不透明で、水産業関係者の間では、「ようやく再開できる」という喜びもある反面、中国側に振り回されてきた経緯から不安感や不信感も残る。どのような経緯があったのか。
ココがポイント
エキスパートの補足・見解
中国が日本産水産物の輸入を禁止したのは2023年8月のことだった。中国が日本の処理水海洋放出に強く反発したことによる。日本にとって中国は水産物の最大の輸出先であり、農林水産省の22年のデータによれば、そのシェアは22%を超えていた。そのため、水産業者にとっての打撃は非常に大きかった。とくにホタテは中国向けが輸出の5割を超えていたことから、関係者は大量の在庫を抱え、頭を痛めた。中国にある日本料理店などでも日本からの水産物が手に入らず、経営危機に陥ったところも出た。
こうした問題があったことから、今回、中国が輸入再開に合意したことをホタテやナマコなどを扱う漁業関係者は歓迎し、期待の声が高まっている。しかし、「徐々に再開するというが、道筋が見えない。本当に再開するのだろうか」との不安もぬぐいきれず、複雑な心境だ。中国では高級食材として人気があったナマコは、禁輸措置以降、国内で買い手がつきにくいという問題があった。
処理水について中国側は「核汚染水」と呼び、1年以上にわたり、日本を非難し続けてきたという経緯がある。海洋放出の開始からの約2ケ月間で、中国の国番号「86」から日本の福島県を始め、各地の飲食店、企業、団体などに嫌がらせの電話が殺到した。1日に1000回以上の迷惑電話がかかったところもあり、日本側が中国政府に、厳正な対処を求めてきた。
今回の合意は、岸田文雄首相と中国の習近平国家主席が昨年11月の会談の場で、問題を解決する方向を見いだすことで一致。関係者の間で協議、交渉が継続されていた。