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中国が日本産水産物を段階的に輸入再開へ 日中合意もなお不透明感 ホタテ、ナマコは #専門家のまとめ

中島恵ジャーナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

9月20日、日中両国政府は、東京電力福島第1原発の処理水放出を巡り、昨年8月から中国が全面停止してきた日本産水産物の輸入を段階的に再開することで合意したと発表した。国際原子力機関(IAEA)が中国も交えたモニタリング(監視)の追加実施を決めたことから決まった。

中国は規制を段階的に緩和するとしているが、緩和の具体的な道筋、スケジュールなどは不透明で、水産業関係者の間では、「ようやく再開できる」という喜びもある反面、中国側に振り回されてきた経緯から不安感や不信感も残る。どのような経緯があったのか。

ココがポイント

中国外務省は20日、中国政府が福島第1原発の処理水放出を理由に禁輸措置を講じた日本産水産物について、輸入を段階的に進めると発表した。

出典:JIJI.COM 2024/9/20(金)

中国外務省は(中略)IAEA=国際原子力機関の枠組みの中で中国などが独立したサンプル採取を行う(中略)体制を構築すること(中略)で日本側と合意(後略)。
出典:NHK NEWS WEB 2024/9/21(土)

具体的な再開の時期はわかっておらず、新潟県佐渡市で中国向けにナマコの養殖している企業は今も不安を抱えている。

出典:FNNプライムオンライン2024/9/26(木)

中国は「条件付き」と説明しており、禁輸の早期撤廃につながるかは不透明だ。(中略)問題の解決に向け「科学」を重視(中略)との論調が目立ち始めている。

出典:JIJI.COM 2024/9/27(金)

エキスパートの補足・見解

中国が日本産水産物の輸入を禁止したのは2023年8月のことだった。中国が日本の処理水海洋放出に強く反発したことによる。日本にとって中国は水産物の最大の輸出先であり、農林水産省の22年のデータによれば、そのシェアは22%を超えていた。そのため、水産業者にとっての打撃は非常に大きかった。とくにホタテは中国向けが輸出の5割を超えていたことから、関係者は大量の在庫を抱え、頭を痛めた。中国にある日本料理店などでも日本からの水産物が手に入らず、経営危機に陥ったところも出た。

こうした問題があったことから、今回、中国が輸入再開に合意したことをホタテやナマコなどを扱う漁業関係者は歓迎し、期待の声が高まっている。しかし、「徐々に再開するというが、道筋が見えない。本当に再開するのだろうか」との不安もぬぐいきれず、複雑な心境だ。中国では高級食材として人気があったナマコは、禁輸措置以降、国内で買い手がつきにくいという問題があった。

処理水について中国側は「核汚染水」と呼び、1年以上にわたり、日本を非難し続けてきたという経緯がある。海洋放出の開始からの約2ケ月間で、中国の国番号「86」から日本の福島県を始め、各地の飲食店、企業、団体などに嫌がらせの電話が殺到した。1日に1000回以上の迷惑電話がかかったところもあり、日本側が中国政府に、厳正な対処を求めてきた。

今回の合意は、岸田文雄首相と中国の習近平国家主席が昨年11月の会談の場で、問題を解決する方向を見いだすことで一致。関係者の間で協議、交渉が継続されていた。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「日本のなかの中国」「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミア)、「中国人のお金の使い道」(PHP新書)、「中国人は見ている。」「日本の『中国人』社会」「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国を取材。

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