遺伝子で美しくなる「DNA美容」って何? 飽くなき探究心、ついにここまで。
夏も近づき、ボディラインを気にしてダイエットを始めるなど、女性は美容への熱が高まる時季です。
体内をデトックスするプチ断食「ファスティング」、肌質を改善するために洗顔料を使わないで顔を洗う「水洗顔」……。美の世界はじつに奥が深いもので、日替わりでいろいろなテーマが登場しては消えていきます。
そんな中、最近注目されているのが、DNA美容というジャンル。
遺伝子で美しくなる!?
DNA美容とは、自分の遺伝子を分析して、自分の身体に合った食事法や運動法、美容法を把握して、きれいになることを目指す、いわば美に特化したDNA解析です。
自分の身体の「設計図」を調べることで、自分の身体にとって何が必要なのかが具体的にわかるようになります。
自分の設計図をチェックして美に役立てる
糖質と脂質のどちらの代謝が苦手な身体なのか(何を食べたら太りやすいのか)、肌のリスク(シワになりやすいか、シミになりやすいか)、有酸素運動と筋トレのどちらがダイエットに効果的なのか、食べる順番、適切な料理法、自分に合った生活習慣……。
近い将来、「私、遺伝子的にお米食べるとすぐに太っちゃう体質だから」なんて会話が交わされるようになるかもしれません。美意識の高い職業(美容師やセラピスト)、首都圏在住の20 〜30代の女性を中心に人気が広がっているとのこと。
理科の授業を思い出す
具体的な作業は、意外と簡単。
ほほの内側を綿棒でこすって細胞を採取し、生活習慣に関するチェックシートを記入し、指定の機関に渡すか郵送するだけです。学生時代、理科の授業で細胞を顕微鏡で観察する実験のとき、綿棒をほほの内側にグリグリ当てた時のことが思い出されます。
アンジェリーナ・ジョリーも遺伝子検査で人生が変わった
ヒトゲノム(遺伝情報)の解析は、2003年にすべて終わっています。さらに、2013年には、女優のアンジェリーナ・ジョリーが、遺伝子検査の結果をもとに乳房の切除手術を決意。このニュースのおかげで、将来の不安を回避するため、遺伝子検査を用いるという選択肢がひろく知られました。
理屈上は、発症してから薬を投与して病を治すのではなく、設計図に沿って原因を取り除くことの方が効果的なはずです。とはいえ、「そこまで知ってしまうのって怖い」「まだ発症してないのに切っちゃうなんて」と、及び腰になってしまう人も多いのではないでしょうか?
整形とは何が違うのか?
美と科学技術の関係でいうと、「美容整形」が思い出されます。こちらも、人為的に美を作り出そうというアプローチでは同じ。
どれだけタレントが整形手術をカミングアウトして「韓国では常識」という報道がされようと、プチ整形という言葉が登場しようと、「ありのままのものに手を加えるのはよくない」というモラル(自然信仰ともいうべき)が、日本では根強くあります。
整形なんてもってのほかで、バッチリメイクはぎりぎりOKだけど、できれば、すっぴんのままできれいなのがいいなあ、という理想(妄想)が、この国の美意識です(男性からだけでなく、女性たち自身も)。
どこまでが自然? どこからが不自然?
「ダイエットはOK、メイクもOK、ピアスもOK。なのに整形はNGなんて、おかしい! どこまでが自然で、どこからが不自然なんだ!?」という冷静な指摘をよそに、理屈では説明できない抵抗感を持つ人が少なくないのです。
健康や身体に気をつかうことはよくても、アンチエイジングや美魔女というと、とたんに「そんなに必死にならなくても……」と眉をひそめる人が現れる。
でも、当人たちは、どこ吹く風と受け流す。それがまた、周囲の人をイライラさせる……。
欲望とモラルがぶつかりあう
このように、根強い「自然信仰」と飽くなき美への探究心が、バチバチとせめぎあう中で登場したのが、自分の遺伝子を調べて美に役立てようという「DNA美容」。
遺伝子と言えば、「下手にいじってはいけない」というタブーの代名詞で、内容をよく知らずに反射的に「そこまでするなんて、よくない!」と嫌悪する人もいそうです。
つまりこの技術は、多くの人の欲望とモラルの境界線を絶妙にくすぐるもので、となれば、今後、巷に広まれば広まるほど賛否両論が噴出しそうな予感がしてなりません。
一過性の美容トレンドではなく、深いテーマを秘めた「DNA美容」から、今後ますます目が離せません。