韓国軍の巡航ミサイルと短距離弾道ミサイル
昨年12月に長距離ロケット発射を、そして今月に核実験を相次いで行った北朝鮮に対し、韓国は牽制の意味を込めて国産の巡航ミサイルを公開しました。2012年4月の北朝鮮による長距離ロケット発射の際にも、韓国は国産の巡航ミサイルと短距離弾道ミサイルを公開しています。艦載型巡航ミサイル、潜水艦用水中発射巡航ミサイル、新型地対地短距離弾道ミサイルの発射と着弾の様子を初公開しています。
- 韓国国防部公式 公開日: 2013/02/13
- 前半はKDX-2型駆逐艦から発射される巡航ミサイル。
- 後半は214型潜水艦から発射される巡航ミサイル。
- 巡航ミサイルは玄武3シリーズの艦載型。
- 韓国国防部公式 公開日: 2012/04/19
- 前半の短距離弾道ミサイルは「玄武2B」、クラスター弾頭。
- 後半の巡航ミサイルは玄武3シリーズ。
韓国が潜水艦用水中発射巡航ミサイルを自力で開発出来た事は特筆に値します。潜水艦の魚雷発射管から巡航ミサイルを発射するには、巡航ミサイルをカプセルに入れて射出し、海面上に出てからキャップをロケットスラスターで飛ばして、カプセルを脱ぎ捨てて飛翔します。そのシークエンスが全て撮影されています。また韓国軍は地上発射型や艦載発射型の他に、戦闘機から発射する空中発射型の巡航ミサイルも開発中です。
短距離弾道ミサイルに付いて韓国軍はこれまで地対空ミサイルのナイキ・ハーキュリーズを地対地ミサイルに改造したものを使っていました。もともとナイキ・ハーキュリーズには対地攻撃モードが存在しており、転用は楽だったのです。しかし玄武2Bは全く異なる系統の短距離弾道ミサイルになっていました。外見上はロシア軍のイスカンデル短距離弾道ミサイルに酷似しています。
玄武2Bは「米韓ミサイル指針」の制限を受けて射程300kmですが、「米韓ミサイル指針」は昨年改定され短距離弾道ミサイルの射程を800kmに拡大されたので、韓国軍は新たな短距離弾道ミサイルを開発中です。なお玄武3シリーズの巡航ミサイルに付いては韓国は以前から「弾道ミサイルではないので米韓ミサイル指針の適用外」と主張しており、既に射程1500km級の玄武3Cが開発済みとなっています。1500kmとなると済州島の付近から発射しても北朝鮮を大幅に飛び越えて過剰な射程のように思えますが、巡航ミサイルは真っすぐ飛んで行かず蛇行しながら迂回して飛ぶ場合も考えると、射程の余裕が無いと運用上の不都合がある事も事実です。
なお韓国軍の巡航ミサイルと短距離弾道ミサイルの使い方ですが、実は巡航ミサイルは北朝鮮の弾道ミサイルを攻撃する用途には使われないでしょう。巡航ミサイルは速度が遅く目標到着まで時間が掛り過ぎる為、弾道ミサイルの移動式ランチャーを攻撃するにはまるで間に合いません。短距離弾道ミサイルは速度が速いですが命中精度が低く小さな目標を狙うには向いていませんが、玄武2BはGPS誘導とクラスター弾頭の採用により命中精度の低さをカバーしているので、敵弾道ミサイル移動式ランチャーへの攻撃にも投入可能です。但しどちらかといえば敵陣奥深くの固定された戦略的価値の高い目標や、兵站拠点などのあまり頻繁に移動しない重要な目標への攻撃に投入されるべき兵器でしょう。