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春本番のような陽気が続き 15日(木)は蔵王の“モンスター”に試練の雨に

小杉浩史気象予報士 / ウェザーマップ所属
蔵王の樹氷(2月10日 筆者撮影)

今週は季節先取りの暖かさが日本列島にやってきています。宮城県においても、きょう14日(水)の最高気温は平年を約11度も上回り、暖かなバレンタインデーとなりました。

きょう14日の宮城県の最高気温 2月として過去一番高い気温になった地点も(ウェザーマップ提供のものを筆者加工)
きょう14日の宮城県の最高気温 2月として過去一番高い気温になった地点も(ウェザーマップ提供のものを筆者加工)

寒いのが苦手な方にとってはこの暖かさは嬉しいものかもしれませんが、宮城・山形の観光資源である樹氷にとっては試練とも言える気温の高さになっています。

蔵王の樹氷とは

樹氷とは、山頂付近に生えている常緑樹(アオモリトドマツ)に冬の季節風が吹きつけることによってできるものです。単に木が雪をかぶっているだけではなく、季節風の中の水分がぶつかって凍りつき、そこに雪が組み合わさってできるもので世界的にも珍しい現象とされています。

蔵王山頂の樹氷原(2月10日 筆者撮影)
蔵王山頂の樹氷原(2月10日 筆者撮影)

宮城・山形の県境に位置する蔵王連峰はその樹氷ができる代表的な場所で、その貴重さから冬の観光資源となっており、海外の観光客の方からも「スノーモンスター」「アイスモンスター」と呼ばれ人気を得ています。

実際、私が10日(土)に樹氷を見に行こうとしたところ、ロープウェイ乗り場には長蛇の列ができていて、その列では異国の言語がにぎやかに飛び交っていました。

樹氷にとって試練の暖かさと雨

今シーズンは暖冬の中でも何度か強い寒波がやってきたことで樹氷は十分「モンスター」らしい姿に成長してくれていましたが、上述したように今週に入ってからは平年を上回る気温が続いています。

きょう14日の上空約1500mの暖気の様子(ウェザーマップ提供のものを筆者加工)
きょう14日の上空約1500mの暖気の様子(ウェザーマップ提供のものを筆者加工)

秋田地方気象台では上空の気温も観測しており、その上空約1500mの気温は、今月初めが-10度くらいだったのに対して、きょう14日はピッタリ0.0度。山の上でもプラスに転じようかという気温の高さになっています。この暖かい空気に包まれている中、あす15日(木)は前線が近づいてきます。

15日(木)夜遅くの雨と雪の予想 東北南部においては月山や鳥海山をのぞき山の上でも雨として降る予想(提供:ウェザーマップ)
15日(木)夜遅くの雨と雪の予想 東北南部においては月山や鳥海山をのぞき山の上でも雨として降る予想(提供:ウェザーマップ)

蔵王山頂付近の高さでも気温はプラスですから、降るものは雪ではなく雨になる見込みです。樹氷にとっては雨が一番の大敵です。気温が高いだけでも樹氷はジワジワと溶けて小さくなっていってしまうのですが、雨だと樹氷内部にまで水分が入っていくため一気に崩壊してしまうのです。今年は2月半ばにして早くもモンスターが一度姿を消してしまうかもしれません。

この冬の暖かさは未来の「リハーサル」

今シーズンの暖冬はエルニーニョ現象や北半球の寒気の偏りなどによってもたらされているもので、来冬も同じかどうかはまだ分かりません。ただ今後地球温暖化が進行していけば、今シーズンのような気温の高さが当たり前になっていく可能性があります。

そうすると、観光資源である樹氷は「モンスター」と呼ぶほどは成長しなくなり、スキー場は標高の低い所では営業が難しくなるかもしれません。実際、宮城県内では予定より圧倒的に早く今シーズンの営業を終えたスキー場や、あるいは今シーズンを最後に営業を終了するスキー場もあります。

また東北地方においては、山に降り積もる雪は翌年の夏に向けての貴重な水資源になりますが、温暖化が進めばその水資源が蓄えられないようになっていく可能性もあります。(天気に関することわざに「雪多い年は豊年」というものがあるほどです)

今シーズンの気温の高さは一過性のものかもしれませんが、これを機に地球温暖化について今一度考えてみてください。

日本の気候変動2020(気象庁HP)

気象予報士 / ウェザーマップ所属

東京都出身。大学卒業後、会社員やフリーターなどを経て、2012年に気象予報士を取得。2015年からミヤギテレビにて気象キャスターとして出演中。趣味はバイクに乗ること、目標は「宮城の天気と言えばこの人!」と言われること。南東北の北東から、天気の怖さと面白さをお伝えします。

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