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ブラック企業大賞2017はどの企業?NHKや東京オリンピック関連企業等がノミネート、その理由

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
ブラック企業大賞実行委員会の記者会見

 長時間労働や残業代未払い、低賃金、パワハラ、セクハラ…劣悪な労働環境で人々を働かせるブラック企業。その中でも特に話題となったり、悪質であったりした企業を選ぶブラック企業大賞が今年も選考される。

 今回、不名誉な「ブラック企業大賞2017」にノミネートされたのは、9社。日本放送協会(NHK)、ヤマト運輸、東京五輪の新国立競技場工事を行っている大成建設株式会社・三信建設工業株式会社などの名前が挙がった。

 ブラック企業大賞は、ジャーナリストや弁護士、NPO関係者などにより選考される他、ブラック企業大賞実行委員会の公式ウェブサイト上での一般投票も行われ、来月23日の授賞式で大賞が発表される。

ブラック企業大賞実行委員会

http://blackcorpaward.blogspot.jp/

〇「ブラック企業大賞2017」にノミネート企業とその理由

 「ブラック企業大賞2017」にノミネートされた企業、およびノミネートの理由は以下の通り。

ゼリア新薬工業株式会社

同社では時22歳の男性社員が、新人研修受講中の2015年5月18日に自殺した。かつて吃音だったことやいじめを受けていたことを大勢の同期の前で告白させられるなどした結果、「強い心理的負荷」を受け精神疾患を発症。自宅に帰された帰宅途中で自ら命を絶った。今年8月には遺族がゼリア新薬と同社に研修を委託された人材コンサルタント企業「ビジネスグランドワークス」らを相手取り、東京地裁に合計約1億500万円の損害賠償請求を提訴したことを明らかにした。

株式会社いなげや

4か月にわたり長時間労働を続けていた同社の社員が2014年6月5日の夜に店の駐車場で倒れているところを客に発見され、意識が戻らないまま同月21日に脳血栓により亡くなった。男性の死は労災と認定され、今年4月に遺族側代理人が会見したことで本件の存在が明らかになった。いなげやでは2003年10月にも従業員が過労自殺し、のちに労災と認定されており、過労による死者が出たのは2度目。

パナソニック株式会社

同社では2016年6月、富山工場に勤務する40代の男性社員が自殺。これが2017年2月に砺波労働基準監督署により過労による自殺であったと認定された。さらにこの過労自殺を端緒として始まった調査により、2017年3月15日には法人としてのパナソニックと幹部社員2人が、上記富山工場に勤務していた社員3人に対し最長で月97~138時間の違法な長時間残業をさせたとして、労働基準法違反の容疑で書類送検されている。

新潟市民病院

2016年1月、37歳女性研修医が、長時間勤務が続いたことで睡眠薬を服用して自殺した。女性の月平均残業時間は187時間、もっとも長い月で251時間だった。

 ブラック企業大賞2017ノミネート記者会見(OurPlanetTV撮影)

日本放送協会(NHK)

NHKでは、2013年7月、当時、31歳だった女性記者がうっ血性心不全で死亡。翌年、女性の死因は長時間労働による過労が原因であるとして労災認定された。渋谷労基署によると、亡くなる直前の2013年6月下旬から7月下旬まで1カ月間の時間外労働(残業)は159時間37分。5月下旬からの1カ月間も146時間57分にものぼった。遺族側の調査では、亡くなる直前の残業時間は209時間とされている。NHKは、今年10月、女性の過労死事件があったことを公表した。

株式会社引越社・株式会社引越社関東・株式会社引越社関西

「アリさんマークの引越社」として知られる引越社グループでは、労働組合に加入した男性社員に対し、シュレッダー係に配転したり、懲戒解雇したりした上、男性の顔写真と解雇理由を入れた「罪状ペーパー」を、引越社グループの店舗に掲示するなどした。

大成建設株式会社・三信建設工業株式会社

大成建設は、東京オリンピック・パラリンピックで使用するメインスタジアム「新国立競技場」の建設工事の元請け企業。三信建設工業は、「新国立競技場」建設において、大成建設から地盤改良工事を請け負った一次下請け企業。今年3月、三信建設工業の新人男性社員(当時23歳)が自殺した。同10月、男性の自殺は長時間労働による過労が原因の労災であると認定された。

大和ハウス工業株式会社

今年9月、同社が埼玉西支社に営業職として勤務していた20代男性に違法な時間外労働をさせ、川越労働基準監督署から同6月29日付で是正勧告を受けていたことが、男性が加盟する「ブラック企業ユニオン」の会見で明らかになった。男性は、月109時間もの残業など、長時間労働によりうつ病を発症、2016年5月に退職を余儀なくされていた。

ヤマト運輸株式会社

2016年12月には、ドライバーへの残業代の未払い、2017年5月にはパート従業員の勤務時間改ざんと賃金の未払いが労基署から指摘され、さらに今年9月、ドライバーに労使協定で定めた残業時間上限(1カ月95時間)を超える月102時間の残業を違法にさせていたとして、福岡地検に書類送検されている。

〇過去のブラック企業大賞受賞企業

過去のブラック企業大賞企業は以下の企業。

第1回(2012年)東京電力株式会社

第2回(2013年)ワタミフードサービス株式会社 *大賞とWEB投票賞のダブル受賞

第3回(2014年)株式会社ヤマダ電機 *大賞とWEB投票賞のダブル受賞

第4回(2015年)株式会社セブンイレブンジャパン

第5回(2016年)株式会社 電通

(了)

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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