『サムい空気を一変させた理不尽』浦和vs武漢浦和vs福岡【浦和レッズ川柳試合レビュー】
■アウェー席の充実に驚き
今シーズンの埼スタ最終戦。出かける前から寒いのは覚悟して、シャツの上にセーターを重ね着するなど、思い切り着ぶくれしてスタート。こういう時期のナイトゲームは、少々体にこたえる。
だが、試合開始25分くらい前、ちょうど先発メンバー発表のころあいに埼スタのスタンドに着いたら、予想していたよりもちゃんとお客さんが集まっていたのに驚く。さすがにファミリー層はほぼ見かけないものの、私のような「ソロ活おじさん」ばっかりではなく、ぼちぼちとカップルもいた。それ以上の驚きが武漢サポの数の多さだ。
その「暴れっぷり」はしばしば話題になっているものの、まさか国外のアウエー戦で、サポ席のほとんどを埋めるほど動員力があるとは思わなかった。これ、「中国の浦和レッズ」じゃないか。たぶんこれからACLでの強力なライバルになるな。
埼スタで レッズとレッズが ガチバトル
■最後の最後に緊迫感溢れる展開に
とはいえ、キックオフとともに展開されて行く試合は、さほど緊迫感があるようには見えなかった。ここのところ勝ちのないレッズの選手たちはどこか連戦の疲れを引きずってるみたいで、武漢もスゴいのはラフプレーだけで、そんなに決定力があるようには思えない。
1点目、入ったのも、飛びあがったリンセンの顔に相手DFがぶつかったファウルがPKにつながった感じで、ちょっと「もらい物」っぽい。レッズの攻撃が鋭かったよりも、向こうが荒っぽかったのだ。
前半終了直前に、相手と接触した高橋がタンカで運ばれるなど、その武漢の荒っぽさは相当なもの。ただし、それで試合のテンションが上がる気はしない。妙に殺伐としていて、見ていてもワクワクしないのだ。
後半になっても、どうもその「ワクワクしない感」は続く。それなりにチャンスは作るものの、じゃあ一体最後は誰が決めるの、と問いただしたいくらいに点につながらないままに、荒っぽいだけのはずの武漢の前線に、あっさり同点ゴールを決められる。
いきなり寒さが襲ってきた。気候もそうだが、試合そのものも「サムい」。
チャンスにも 決める人ない サムさかな
どうすんだろ。きょうに関していえば引き分けは負けと一緒。ここで勝ち点3が取れなければ確実にACL予選リーグ敗退だ。
そこでようやく動きがあった。シャルク、パンヤ、そしていきなりの引退表明で誰もがビックリしたカンテ投入だ。これでカンテが「引退記念」で一発決めてくれれば、途端にどんよりした空気は一掃できる気がしたものの、どうも、そうもいきそうにない。関根、大久保、それにカンテも、決める決定的チャンスがありながら、見事にスベる。いい場面で「サムいギャグ」を飛ばしまくって、観客を白けさせるお笑い芸人にちょっと似てる。
どうやら11月の埼スタは、勝ちに見放されたままで幕が下りるのかな、と諦めかけたところで、飛び出したのが「引退カウントダウン」のカンテの一撃だ。
途端に、ダラダラしたドロー試合が、緊迫感溢れるファインゲームに変貌した。最後の残り4分、寒さ吹っ飛んで、「点取られるなよ」とドキドキワクワクになったもんね。
サッカーの、この、1点入るだけで場の状況がすべてひっくり返るあたりは、なかなか他のスポーツでは味わえない魅力だろう。
引退の カウントダウンで 最後っ屁
こりゃちょっと汚いか。やはり、かつて槙野が天皇杯で決勝点をあげた時に出て来た「置き土産」と言う言葉を使うのがキレイかな。
引退の カウントダウンで 置き土産
って。だが、私はなぜか「最後っ屁」って言葉は好きだ。
希望はつながった。12月はベトナムにもサウジにも行かなきゃいけないし、いろいろ大変だが、この最後っ屁で、ガラッとチームの雰囲気も変わるのを期待している。
動画:パン屋さんと良き穂とフライデー。浦和レッズ川柳2023【10月編】
山中伊知郎
1954年生まれ。1992年に浦和に引っ越して来て、93年のJリーグ開幕時にレッズのシーズンチケットを取得。以後30年間、ずっとシーズンチケットを持ち続け、駒場、ならびに埼スタに通う。2021年より、レッズ戦を観戦した後、「川柳」を詠むという「レッズ川柳」を始める。現在、去年一年の記事をまとめた単行本『浦和レッズ川柳2022』(飯塚書店)が好評発売中。
代表を務める「ビンボーひとり出版社」山中企画では、8月、テレビの夢グループCMで、石田社長の横で「社長~! 安くしてエ~!」の甘え声でお馴染の歌手・保科有里の『愛人!? 困っちゃう・・・』という本を出し、11月には『タブレット純の日本芸能イジン伝・その① おひとりさま芸能人 エド山口に訊く!』を出す。