新型コロナによる心臓の後遺症 日本人の回復者の3人のうち2人に心筋障害がみられた
新型コロナに感染し回復した後も後遺症に悩まされている方がいらっしゃいます。
新型コロナの後遺症は多岐に渡り、様々な臓器に影響を与えます。
今回は新型コロナによる心臓に関する後遺症についてご紹介します。
新型コロナの後遺症とは?
新型コロナに感染した人のうちほとんどの人は回復後、通常の健康状態に戻る一方で、回復した後も数週〜数ヶ月間様々な症状が続く方がいます。
これらは海外では「LONG COVID/Ongoing COVID」「Post COVID」など様々な呼称がありますが、日本国内では「後遺症」と呼ばれることが多いため、ここでも新型コロナ後遺症という表現を使います。
この新型コロナ後遺症は、単一の病態ではなく、実際には4つの病態が複合的に絡み合った病態ではないか、ということが分かってきました。
4つの病態とは、
(1) 肺、心臓への長期的障害
(2) 集中治療後症候群(post intensive care syndrome:PICS)
(3) ウイルス後疲労症候群(post-viral fatigue syndrome)
(4) 持続する新型コロナの症状
を指し、これらがオーバーラップしていると考えられています。
今回は、(1)のうち心臓への長期的障害についてご紹介します。
日本人の日本人の回復者の3人のうち2人に心筋障害がみられた
国立国際医療研究センターから、日本人の新型コロナ回復者の心筋障害に関する報告がCirculation Journal誌に発表されました。責任著者(コレスポ)はKutsuna氏です。
新型コロナの発症から約2ヶ月経過した209人に高感度トロポニンTを測定したところ、135人(65%)に有意な上昇がみられ、特に男性、高齢、高血圧の既往のある人、新型コロナの急性期に重症度が高かった人で上昇していました。
トロポニンは筋肉を構成する蛋白質の一つであり、心筋障害を反映するマーカーとして、心筋梗塞や心不全などの診断に用いられています。
今回研究に参加した209人は、心臓の超音波検査では収縮機能は保たれていたことから、超音波検査では明らかな問題はないような方でも心筋障害が見られることがある、ということが分かりました。
また、発症から数ヶ月が経過した回復者からもトロポニンTは検出されており、新型コロナによる心筋障害は長期的に続くことが示唆されます。
本研究は新型コロナの回復期にある日本人患者に心筋障害の評価を行った初めての研究であり、患者の平均年齢が45歳と若かったにもかかわらず、高感度トロポニンTの陽性率が高かったことは、新型コロナが軽症であっても心筋障害が存在する可能性を示唆する注目すべき結果です。
一方で、これらの心筋障害のあった方々に実際にどのような影響があるのか、あるいはないのかについては継続的な調査が必要となります。
その他の心臓への長期的な影響
海外からは、高感度トロポニンT以外にも心臓への影響に関する調査が行われています。
・新型コロナ発症から6ヶ月経過した時点でも、9%の人が動悸を訴えていた
・ICUに入室し退院後4カ月の時点で症状が持続していた人のうち、10%で心臓収縮能が低下していた
・新型コロナから回復した人のうち、重症度に関係なく心臓MRI検査で78%で異常所見が認められ、60%で心筋炎の所見がみられた
このような新型コロナによる心臓への影響についても、その後どのような転帰につながるのか、今後長期的に見ていく必要があります。
新型コロナ後遺症を予防するためには?
新型コロナ後遺症を確実に回避するには、新型コロナに感染しないようにするしかありません。
特に緊急事態宣言中である現在は、
・できる限り外出を控える
・屋内ではマスクを装着する
・3密を避ける
・こまめに手洗いをする
といった基本的な感染対策をより一層遵守するようにしましょう。