周東佑京に続け!北の最果てからドラフト指名と日本一を目指す男たち
白い息を吐きながら、今年も「北の最果て」とも言える北海道網走市の東京農業大学北海道オホーツクキャンパスでNPB入りを目指す2人のドラフト候補選手がいる。
冬場には1日の最低気温で氷点下10度を下回ることもある地から飛躍を目指す熱い思いを聞いた。
成長続ける未完の大型右腕
東農大北海道オホーツクは、東京都世田谷区などにキャンパスがある東京農業大学の生物産業学部として網走に1989年に開学。世田谷キャンパスもプロ注目選手を擁する伝統校だが、キャンパス開学と同時に創部されたオホーツクの硬式野球部も30年ほどの歴史ながら周東佑京(ソフトバンク)らNPBに14人の選手を輩出し、全国4強にも昨春など2回進んだ強豪校だ。
大型右腕の中村亮太は身長185cmの長身を生かした投げっぷりの良さが光る投手。昨年の全日本大学野球選手権では試合待機時の神宮球場横でシャドウピッチングをしている姿からも将来性を感じさせた。マウンドに上がっても3試合に抑えや中継ぎとして登板し平均で140キロ台中盤、最速で151キロのストレートを投げ込んだ。
千葉県四街道市の出身。千葉市リトルシニアでは同期に藤平尚真(楽天)、中島隼也(城西国際大)がおり3番手。それでも丸佳浩(巨人)らを輩出した千葉経済大附高ではエースとしてチームを4強に導くも、最後の夏は早川隆久(早稲田大)を擁する木更津総合に敗れた。
大学進学後も2年春に北海道学生野球リーグで優秀投手賞のタイトルを獲得するが、伊藤大海擁する苫小牧駒澤大に優勝を奪われた。
「中・高・大と良い投手に目立つ場面を阻まれているので、その壁を乗り越えたいですね」と苦笑いを浮かべながらも、その言葉には力強さもあった。
創部から2017年まで率いた樋越勉前監督(現東農大監督)から2018年に引き継いだ三垣勝巳監督も「本気で苦しいことにも向かっていって欲しい」と心身両面での成長を期待しており、中村自身も「今年は先発で長いイニングを投げてもブレが無いように下半身や体幹を強化しています。まずはリーグ戦で自分が5戦5勝して全国に行きたいです」とモチベーションは非常に高い。
強打の三塁手
主将を務めるブランドン大河は、昨年の春秋のリーグ戦でともに首位打者を獲得。全日本大学野球選手権でも本塁打を放った強打の右打ち三塁手だ。178cm84kgの引き締まった体格から力強い打球を放つ。
沖縄県うるま市でアメリカ人の父と日本人の母の間に生まれ、伊波中学時代は横浜スタジアムで開催された全日本少年軟式野球大会に出場。地元の石川高では高校通算30本塁打を放つともに最速147キロを投じる本格派右腕として活躍した。
南国から北国にやってきて「一番遠いところに来てホームシックはあったし、今もこの寒さには慣れません」と苦笑いするが、1年春から4番打者として全日本大学野球選手権を経験。「チームが勝つことだけを意識しました」と自覚十分の状態で神宮に戻ってきた昨春はチームの躍進を支えた。
今年は抜群の統率力を見せていた田辺直輝から主将を引き継いだ。「プレッシャーもありますが、相当経験させてもらったので、上手く声もかけながらやっていきたいです」とし、「最後の学年なのでこれまでの4強を超えて全国優勝したいです」と決意を語った。
ともに高校時代は全国大会に出場できず華やかな舞台とは無縁だった。この極寒の地で鍛錬を積んで身につけた力は本物だと証明するために、チームの目標である大学日本一のために、そして自らが幼い頃ら憧れ続けた舞台にのぼるために。勝負の1年が始まっている。
文・本文中写真=高木遊