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「記憶にない」連発の主任検事は過去の取調べで「死ぬほど思い出せ」と罵声。プレサンス元社長冤罪事件国賠

赤澤竜也作家 編集者
蜂須賀三紀雄検事に対する証人尋問後、会見に臨む山岸忍氏(中央)と弁護団 筆者撮影

「過去の取調べで大声を出して怒鳴ったりしたことはありますか?」

「ありません」

「机を叩いたことは」

「ありません」

6月14日に行われた証人尋問においてそう語ったのはプレサンスコーポレーション元社長冤罪事件の捜査を主任として指揮した蜂須賀三紀雄検事。

二度目の尋問となる18日の法廷で、原告の秋田弁護士が何度も、

「机を叩いていない。大声で怒鳴っていない。本当ですか?」

「いいんですね?」

と念を押したのだが、

「記憶にない」

と言う。

そこで弾劾証拠として出されたのは2009年4月16日に判決があった奈良県生駒市の公園用地取得や足湯施設建設をめぐる汚職事件での裁判だった。

蜂須賀検事は背任と2件のあっせん収賄の罪に問われた元市議会議長の取調べをしたのだが、被告人が被疑者ノートの記載に基づき事情聴取の不当性を主張。検事自身も当時、公判廷に呼ばれていたというのである。

元市議会議長への取調べにおいては、

「死ぬほど思い出せ」

「娘や息子を逮捕する」

と恫喝されたという。

大声で怒鳴りつけたり、何度も机を叩いていたということを蜂須賀検事自身も認めており、彼が録取した調書は「任意性に問題がある」として証拠調べ請求を却下されていたというのである。

ちなみに部下である末沢岳志検事は14日の法廷において、蜂須賀検事に対し、

「逮捕は待った方がいいのではないか」

と進言し、

「(不動産会社社長が供述撤回を申し出たので)訂正調書を取った方がいいのではないか」

と二度にわたって申し出たと証言しているが、同日行われた証人尋問で蜂須賀検事はいずれの発言も、

「覚えていない」

と言い切っている。

プレサンスコーポレーション元社長冤罪事件では田渕大輔検事が机を叩く、大声で怒鳴り続けるといった取調べをしていたことが問題視されているが、蜂須賀検事は起訴前の時点で総括審査検察官からその事実の報告を受けていたにもかかわらず、取調べの状況を記録した録音録画映像を見直すことなく起訴をしたとも証言した。

作家 編集者

大阪府出身。慶應義塾大学文学部卒業後、公益法人勤務、進学塾講師、信用金庫営業マン、飲食店経営、トラック運転手、週刊誌記者などに従事。著書としてノンフィクションに「国策不捜査『森友事件』の全貌」(文藝春秋・籠池泰典氏との共著)「銀行員だった父と偽装請負だった僕」(ダイヤモンド社)、「内川家。」(飛鳥新社)、「サッカー日本代表の少年時代」(PHP研究所・共著)、小説では「吹部!」「白球ガールズ」「まぁちんぐ! 吹部!#2」(KADOKAWA)など。編集者として山岸忍氏の「負けへんで! 東証一部上場企業社長VS地検特捜部」(文藝春秋)の企画・構成を担当。日本文藝家協会会員。

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