米長期金利が再上昇、5%が視野に
米10年債利回りは11月14日の4.45%が目先ピークとなり、その後は低下基調となっていた。12月6日には4.1%台に低下した。
12月3日にクーグラーFRB理事は、インフレ率は2%への持続可能な道筋にあると述べた。シカゴ連銀総裁は来年にかけて金利は今より下がるだろうと従来の見方を示した。
しかしその後は再び上昇し、16日には4.4%台にまで回復基調となっていた。
3日に発表された米地区連銀経済報告(ベージュブック)では、11月に入って経済活動が若干拡大し、米企業は需要見通しについて楽観を強めたと指摘していた。
6日に発表された11月の米雇用統計では、非農業雇用者数が前月比22.7万人増と予想を上回った。失業率は10月の4.1%から4.2%に上昇、平均時給の伸び率は予想を上回った。
FRBのボウマン理事は政策金利の引き下げは緩やかかつ、慎重に進めたいと述べた。このあたりから米債の地合が変化してきた。
11日に発表された11月の米消費者物価指数は、前年同月比の上昇率が2.7%となった。市場予想通りではあったが、2か月連続で加速。
12日に発表された11月の米卸売物価指数は前年同月比3.0%上昇と前回の2.6%上昇から加速した。
米雇用の改善とともに物価の高止まりが意識されてきた。これを受けて来年に入ってから、FRBは利下げをいったん停止するのではないかとの観測が強まった。
さらにトランプ次期大統領の関税などの政策が、さらなる物価の上昇要因となることが予想される上に、米財政を悪化させるとの懸念を強めさせた。
トランプ第1次政権時(2017年1月~2021年1月)でも減税と関税の引き上げが行われたが、そのときは問題になるようなインフレの上昇は起こらなかった。
だから今回も起こらないとの見方はむしろ危険である。2022年以降、世界的な物価上昇が引き起こされたことで物価そのものを取り巻く環境が変化した。
さらに米経済も底堅い状況となっているなかで、やっと落ち着くかに見えた物価上昇が再燃するリスクはむしろ高いと思われる。
米長期金利の上昇は、今後の物価上昇のリスクとともにFRBの利下げ中止を見込んでの動きとみられる。
昨年10月に米長期金利は5%近くまで上昇したが、そこがピークとなって跳ね返された。今後再び米長期は金利が5%をトライしてくる可能性もないとはいえなくなってきた。
物価上昇だけでなく、財政悪化も加わるとスパイラル的な米長期金利上昇が起きる懸念も出てくる。
2022年秋に英国で当時のトラス政権が成長戦略を発表した際に発生した金融市場の混乱、いわゆるトラスショックの米国版が起きる懸念も出てこよう。