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日銀は動かず、円安が進行

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 19日の日銀金融政策決定会合では、金融政策の現状維持を8対1の賛成多数で決定した。

 田村委員は経済・物価が見通しに沿って推移する中、物価上振れリスクが膨らんでいるとして、無担保コールレート(オーバーナイト物)を0.5%程度で推移するよう促すとする議案を提出し、反対多数で否決された。

 私は田村委員と同様に0.5%への利上げを望んでいたが、結果として多くの市場参加者が予想していたように現状維持となった。

 会合後の会見で植田総裁は、利上げにはもうワンノッチ必要と発言していた。そのワンノッチが本当は何であったのであろうか。

 市場参加者の多くは12月の利上げありとみていたが、11日のブルームバーグなどの日銀は利上げ急がずとの記事を受けて様相が変わった。

 これはブラックアウト期間前の記者レクによる記事とみられ、同様の記事が何社からか出ていた。

 結果として日銀は利上げに慎重となっていたのである。

 1月についてもトランプ就任直後であり、よりトランプリスクが高まりかねないことから今以上に不透明感を強めることが予想される。

 FRBが利下げに慎重となり、日銀が利上げに慎重となったことで、ドルを買って円を売る動きが強まった。植田総裁の会見中にドル円は11月につけた156円74銭近辺を突破した。

 チャート上からはドル円は再び160円台を目指すことも予想される。ある意味、日銀というか総裁会見の内容は、投機筋に燃料を投下したような格好となった。

 総務省が20日発表した11月の消費者物価指数は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が前年同月と比べて2.7%上昇した。

 3か月ぶりに伸び率が拡大した。要因として政府による電気・ガス代補助が縮小したエネルギーや生産コストが上がったコメの上昇があった。

 ただし、ここにきての物価の伸び率拡大は日本に限ったものではなく、欧米でも同様の動きとなっている。

 それがFRBの利下げ慎重姿勢のひとつの要因ともなっている。

 日本に関しては物価の高止まりにもかかわらず、日銀が利上げを躊躇していることで、円安圧力もかかり、当然これも物価に反映されることになる。

 「べき」論で言わせてもらえば、今回日銀は利上げをすべきであった。これを逃すと本当に利上げが困難となりかねない。

 金利が付かなければ、日銀に代わって国債保有を期待される銀行などの食指が動かなくなる懸念も出てこよう。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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