「世界平和への最大の脅威と思う国」世界各国での違いと一致と
世界の平和は誰もが皆望むところではあるが、現実にはロシアによるウクライナへの侵略戦争をはじめ、いつもどこかで平和を打ち壊す戦争や紛争が起きている。諸外国の人達は、どの国が「世界平和への最大の脅威」であると思っているのだろうか。今回は新聞通信調査会が2023年2月に発表した、アメリカ合衆国やイギリス、フランス、中国、韓国、タイへのメディアに関する世論調査「諸外国における対日メディア世論調査(2022年度調査)」(※)の内容を基に、その実状を確認していく。
次に示すのは調査国に対してロシア、中国、北朝鮮、アメリカ合衆国、イラン、ウクライナ、日本の国名を挙げ、「世界平和への最大の脅威と思う国」はどの国かを択一で答えてもらったもの。選択肢に回答者の属する国が含まれていても、選択対象として選ぶことはできる。なおすべての選択肢を足しても100.0%にならない国があるため、公開資料には記載されていないが実際には「分からない・無回答」の回答もあると思われる。
ロシアによるウクライナへの侵略戦争の真っ最中における調査だったこともあり、多くの国でロシアとの回答値が抜きんでて高い結果が出ている、米英仏では5割超え、タイでも5割近く。
一方で中国と韓国ではロシアとの回答値はそれぞれ2割足らず・3割強でしかない。その中国ではアメリカ合衆国を挙げる人がもっとも多く、実に2/3強に達している。他の選択肢は1割足らずで、実質的には中国では「ロシアによるウクライナへの侵略戦争の真っ最中でも、世界平和への最大の脅威はアメリカ合衆国に違いない」と考えている人が絶対多数との現実が浮かんでくる。現在の中国の外交的立ち位置による事情もあるが、複雑な国情には違いない。
複雑といえば韓国も複雑。ロシアがトップの値には違いないが31.5%でしかなく、次いで中国と北朝鮮がほぼ同じ値で並ぶ。韓国が北朝鮮と緊張状態のままで隣接し、極めて近い距離にある中国との仲もよいとは言えないなど、外交的立ち位置や地政学的状況がよく分かる結果となっている。
今調査項目はロシアによるウクライナへの侵略戦争に合わせて今調査に臨時に設けられたものであるが、情勢次第では来年以降も問われることだろう。その時にはいかなる結果が出るだろうか。
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※諸外国における対日メディア世論調査
直近発表分はアメリカ合衆国、イギリス、フランス、中国、韓国、タイに対し、2022年11月から12月に行われたもので、アメリカ合衆国は電話調査とウェブ調査の併用、イギリス・フランス・韓国は電話調査、中国・タイは面接調査で実施されている。調査地域は中国・タイは都市圏、それ以外は全国。回収サンプル数は各国約1000件。グラフの年数表記は調査結果の発表年で統一している。過去の調査もほぼ同じ形式で実施されたが、2014年度分は中国において質問そのものができなかった項目が複数ある。またイギリスの2020年度分は新型コロナウイルスの流行悪化の影響で調査はできなかったため、回答値が一切無い。
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