コロナ病棟に増えていく高齢者 現場の声
コロナ病棟に入院している患者さんのほとんどが高齢者になってきました。「入院患者に提供されるべき看護の必要量」、すなわち看護必要度が高い患者さんが多いと、相対的に看護師の人手が不足してしまいます。多くのコロナ病棟が今その問題に直面しています。
コロナ病棟に増え続ける高齢者
当院は新型コロナの軽症中等症病床を運用しており、大阪府では、現在入院対象を重症化リスクが高い高齢者や酸素飽和度が低下した中等症IIにしぼっています。
第6波のように若年層から始まり高齢者に余波を広げるパターンとは異なり、第7波は全年齢層で始まりました。そのため、波の初期は若年層や高齢者層がごちゃ混ぜで入院してきました。
今が第7波のどのあたりなのか、もちろん後になってみないと分かりませんが、現在は80歳以上の高齢者が入院患者さんの半分を占めます。
当院に入院する患者さんの年齢をみてみると、第7波の年齢中央値は過去最高でした(表)。
もちろん病院ごとの機能もあるため、全国一概にこうだと言えるわけではありませんが、「90歳で寝たきりの認知症、どこにも搬送を断られ、おたくで10件目です」という依頼はよくあります。
当院において、酸素投与が必要な中等症II以上の患者さんは全体の約4割です。高齢者が多いため、重症化しても重症病床に転院になることはほとんどありません。
この理由は、重症病床は人工呼吸器やエクモを装着する患者さんを対象としており、機械の装着を希望しない高齢者は搬送対象外になるからです。
延びるコロナ病棟の在院日数
新型コロナのパンデミック初期は、「PCR検査の2回陰性確認」が退院条件でしたが、現在は「発症後10日間かつ症状軽快後72時間が経過」していれば、退院可能です。自治体によっては、病床逼迫時に同基準を満たす前に自宅療養に切り替えることも容認されています。
施設内クラスターで入所者がたくさん病院に入院してしまった施設では、その後コロナ病棟で退院基準を満たして施設に戻ってくる際、一度に受け入れることができず、手続きが滞ることがあります。
また、新型コロナにかかって、何とか車椅子生活を保っていた人が寝たきりに近い状態になって、自宅や施設に戻れないということもあります。
目詰まりの解決策として、自治体ごとに後方支援病院のような医療機関が存在しますが、受け皿としては決して大きいとは言えず、また、コロナ病棟に10日間、残り数日間を別病院、という形は現実的に手続きが多い現状があります。
そのため、新型コロナの軽症中等症病床では高齢者がなかなか退院できずに残留してしまう現象が起こります。この構図は、第4波の頃と比べると改善したものの、現場には「解決した」というほどの安心感はありません。
当院の新型コロナ患者さんの平均入院期間は10.5日間です。しかし年齢を重ねるごとに在院日数が延びていき、70歳以上で平均11.6日、80歳以上で平均14.1日になっています(図)。
そのため、いつも波の後半では、コロナ病棟は高齢者がたくさんいる病棟と化してしまい、現場の看護師の業務はなかなか大変なものとなります。
40歳が50人入院しているのと、80歳が50人入院しているのでは、看護師の業務逼迫に天と地ほどの差があります。
そのため、看護必要度が高い患者さんが多い現在、患者さん1人あたりにとられる看護師のマンパワーが相対的に不足しています。
診療情報がないまま診療を開始することも
施設から新型コロナの患者さんが入院になると、基本的には施設の医師や連携医が「診療情報提供書」という紹介状を書くのが一般的ですが、土日や夜間に入院になる場合、この提供が遅れることがよくあります。
特に、施設内クラスターが発生すると、その全員分の診療情報を提供するのは大変な仕事であり、少し遅れて医療機関に情報が届いてしまうことになります。
ゆえに、本人が認知症などでうまく情報が伝えられなかったり、そもそも家族がいなかったりする高齢者では、「診療情報がないまま診療を始めざるを得ない」事態が起こります。
持ってきたお薬手帳の処方内容を見ながら、「この疾患かな」と類推しながら注意深く診療することもよくあります。
まとめ
入院全体に占める高齢者の割合が増えるほど、看護師の業務は逼迫します。この状態で医療機関の職員クラスターが起き、特にコロナ病棟の勤務者が複数感染してしまうと、新規の新型コロナ患者さんの受け入れをストップせざるを得なくなります。
実際、職員の感染によってコロナ病棟の稼働が止まっている医療機関の話も耳にします。そうなると、現在受け入れている医療機関の逼迫がさらにすすむという悪循環に陥ります。
新型コロナ病棟の最前線で頑張っているのは、看護師です。今この瞬間も汗を流して働いている、全国の看護師に感謝しています。