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週間MVP 驚愕の二刀流スタートを切った大谷翔平の勢いはどこまで続く?

豊浦彰太郎Baseball Writer
対戦相手の研究が進むと試練を迎えるのは打撃か。(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

「まるでフィクション」のような驚愕のスタートを切った二刀流大谷翔平。これから対戦相手は投打とも一層研究し対策を取って来るはずだ。今後を占ってみたい。

大谷翔平のパフォーマンスに日米のファンとメディアが狂喜乱舞した一週間だった。ぼくは、打者としての3連発は仕事の関係で帰宅後の動画確認だったが、日本時間2日と9日の登板は、ちょっと早起きすればライブ観戦できる午前5時過ぎの試合開始だったので、出勤前にしっかり観戦できた。

少なくとも投手としては、ケガさえなければ快進撃は続きそうだ。100マイル級の豪速球を持ちながらそれに過度に依存せず、オークランドでの初先発ではスライダーを、アナハイムではスプリッターをうまく使い三振の山を築いた。単に四球が少ないというだけでなく、狙ったスポットに投げ込めるいわゆるコマンドの良さをしっかりと持っている。ストライク先行の組み立てができているので、そこからスプリッターを投じれば相手打者は手を出さざるを得ない。好投は結果だけでなく、内容がしっかり伴っている。

投球パターンは、日本人投手に多い「フォーシーム&スプリッター」だ。この場合は、高めにグンと伸びるフォーシームを投げ込んでおいて低めのスプリッターで打ち取るというのが一般的だ。しかし、このコンビネーションでは高めのフォーシームが甘く入ると(タマ筋が素直なだけに)一発被弾の危険性が伴う。悪い時の田中将大がこのパターンだ。しかし、大谷は100マイル級のフォーシームを基本的に低めに投げ込んでいる。したがって、少々甘いコースでもホームランを浴びる危険性が低い。「高め&低め」でないため、高低差で眩惑はできないが、フォーシームもスプリッターも低めなので、決め球のスプリッターを見送るには一層難しくなる。現地実況でお馴染みになりつつある「スウィンガナミス! (Swing and miss 空振りのこと)」が多いのもこのためだ。

野球という競技においては、主体は投手で打者は受け身だ。したがって、互いに他の内を知らないうちは投手が有利だ。もちろん投手大谷もこれからしっかり研究されるのだが、基本的にストライク先行ができているので、相手打線に研究されることによって自分の配給パターンを乱される恐れが少ないと思う。この点も、投手としては今後も快進撃が続くことを期待させる理由だ。

メジャーのボール表面の滑りやすさやマウンドの硬さは、日本人投手が渡米時にぶちあたる試練だ。これにより、日本時代は絶妙の制球力を誇った松坂大輔もダルビッシュ有も当初は制球に苦しんだ(松坂の場合は最後までダメだった)。しかし、大谷はすでにこの問題を克服したようだ。

一方で、「受け身」の打者としてはどうだろう。徹底的に研究され始めるとそれにしっかり対応できるだろうか。ツーシーム主体の攻めが多いメジャーに対応すべく、右足を上げない(視線のブレを極小化し微妙にシンを外されることを回避する)ノンステップ打法に短期間でアジャストした大谷の適応能力がこれから再度試されるところだ。

ポテンシャルはともかく、現時点での完成度は投手に比べると一歩譲ることは間違いない。センターから反対方向に長打が出るのは大谷の美点だが、一方でライトスタンドにガツンと叩きこむことは日本時代から比較的少ない。100マイル近い剛速球でのえげつない内角攻め(投手でもある大谷に、少なくともいままでは相手投手はこれに関して遠慮気味だったようにぼくには思える)に力負けせず対応できるか。ここは期待しながら見守るしかないだろう。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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