Yahoo!ニュース

【使える防災教えます①】子どもと家族を本気で守るなら、新年度の防災はココが大事!

冨川万美NPO法人ママプラグアクティブ防災事業代表理事
(写真:アフロ)

それで大丈夫?学校書類記入の落とし穴

急な初夏モードで、新学期の1年生も早々に半袖で登校する光景が見られます。

とはいえやっと始まった新学期。新学年。

子どもを送り出した後の開放感は誠にありがたいものですが、同時に新学期の山のような書類に追われた方々も多いのではないでしょうか。

その中でも結構面倒なのが、「緊急時引き取り者カード」(学校によって名称は別)や、個人登録用の書類(家の地図を書いたり、保護者の職業などを記入するもの)などですよね・・

とりあえず提出しなければと、適当に済ませてしまってはいませんか?

例えば、緊急引き取り者の欄を自分たちの名前だけで済ませてしまったり、実家の両親で二人埋めてしまった心当たりはありませんか??

実は、あの書類、とってもとっても大切なものなんです。

東日本大震災、熊本地震など過去の震災で数多くのご家族の体験談を伺ってきましたが、

どの災害でも共通して、圧倒的に災害時に家族を悩ます不安の種は、

ズバリ「家族の安否」です。

防災というと、どうしても食料の備蓄をはじめ、ハード面に思考が行きがちなのですが、実はそれ以前に、

「家族の安否がいつまでもわからず、途方に暮れた」という声が非常に多いことを忘れてはなりません。

特に、地震は、家族全員がバラバラの時間に起きてしまう可能性があります。

そんな時、今家族がどうしているか検討もつかない状態というのは絶対に避けたいもの。

逆を言えば、ある程度見当がつけば、その後スマホなどの情報ツールがなくても再会しやすくなりますし、お互いの安心に繋がります。

そのためにも、先述した「緊急時の引き取り」が非常に大切になってきます。

ある都内の小学校の先生と保育園の園長さんが口を揃えておっしゃったことがあります。緊急時の連絡先に、地方のご実家を記入される方が多いということです。

仮にもし、東京都内で大地震が起き、両親が共に職場に留まり、子どもたちが学校に居るという事態が発生した時、地方の方は間違いなく子どもを引き取りには来られません。

けれども、それを強制的にしてしまうと、面倒になって提出されなくなってしまう・・

結局そのまま放置されているケースがほとんどなのです。

あの欄には誰を記入するべきなのか

答えはもちろん、「確実に引き取れる人」です。条件は、

  • 住まいが学校の近所であること
  • 子どもと信頼関係ができていること
  • 自分と信頼関係ができていること

どなたか思い当たる方はいらっしゃいますか?

(もちろん、ご両親が祖父母が実際に引き取り可能であればそれで構いません)

私の息子が通っている小学校では、緊急時の引き取り先がそれまで4名の記入欄だったところ、ある年から10名に増えました。

10名!は正直多い。。が、何が起きたかというと、ママ友のLINEグループで「ここに名前書かせてもらって良い?」という会話が始まりました。4名だと、両親と祖父母で済むところ、あと6名も記入欄があるとさすがに白紙で出しにくいということで、何名分かは埋めておきたいという心理。

小学校入学以来初めて、連絡先をお互い記入し、

「私は日中なら家にいることが多いから、うちに居させておくねー」

「いざというときにはお願いしまーす」というやりとりをグループですることに。

子どもにも、

「地震が来たり、何かあってママとパパがなかなか帰って来られなかったとき、◯○君の家に居てね」と言うのは、そんなに難しいことではありませんよね。

大切なのは「見当がつく」こと

実際に、災害が起きたときに役に立つのはこのやり取りです。

職場で途方に暮れたとき、自分の子どもがどうしているか見当がつく。それだけでも次の行動が冷静に起こしやすくなります。

学校や保育園など、子どもを預けていらっしゃる方は、新学期の今、ぜひチェックしてほしいことがあります。

  1. 預け先が災害時にどのような対応をするのか把握すること
  2. 自分の職場や家族の職場が災害時にどのような対応をするのか把握すること
  3. 確実に引き取ってくれる相手とタッグを組むこと
  4. 子どもや家族とその情報を共有すること
  5. SNSのDMでのやり取りや、災害時伝言ダイヤルをお互いの連絡ツールとして共有すること

以上のことを、ぜひ家族で話し合ってみてください。

お友達同士で話しあってみてください。

もし、思い当たる相手がいない時、または災害時の話なんて言いにくいという時は、この記事を使ってみてください。

これから新学期で保護者会なども開催されるかと思います。

その際に、ぜひ「こんな記事見て気になったんだけど」と話のきっかけにしてみてください。

すでに提出されてしまったタイミングであっても、追加で記入してもらうことももちろん可能です。

学校や園側も、現実的に災害時に使える情報を求めているのです。

防災と一言で言っても、

いざという時に使えない備蓄、使えないルールでは意味がありません。

自然災害の脅威だけは、私たちに避けることができないもの。

けれど、備えておけば必ず不安も被害も軽減されます。

NPO法人ママプラグアクティブ防災事業代表理事

青山学院大学卒業後、大手旅行会社・PR会社勤務を経てフリーランスに転向。東日本大震災の母子支援を機に、子連れや家族のための防災を啓発するためにNPO法人ママプラグ設立に携わる。被災体験を元にした「アクティブ防災」を提唱し、全国各地でのセミナー・自治体との連携・イベント・企業との協働・書籍の出版及び監修など様々な分野で活躍中。東京都「東京くらし防災検討・編集委員」、農林水産省「あってよかった家庭備蓄」委員、厚生労働省「非常時における児童館の活動に関する調査・研究」委員、東京都「帰宅困難者対策に関する検討会」委員などを務める。主な著者に、「子連れ防災BOOK」、監修本に「いまどき防災バイブル」

冨川万美の最近の記事