直近で食料品は67.2%…百貨店やスーパーで取り扱う商品の移り変わり(2023年公開版)
・百貨店やスーパーの売上は、昔は衣料品がメインだったが、今では食料品がメイン。
・百貨店やスーパーの売上は1990年代後半がピークで、それ以降はおおよそ少しずつ減少。
商品の販売シェアは大きな変化を見せる
多様な商品が並ぶ百貨店やスーパー(※)。世の中の流れの中で商品構成も変化を見せている。その実情を経済産業省の商業動態統計調査の結果から確認する。
主要品目別売上構成比だが、公開されているデータを基に算出した結果、次のようなグラフになった。かつては衣料品の方がウェイトは大きかったが、「デパ地下」といった言葉が露出しはじめた20世紀末から21世紀初頭にかけて、食料品が伸び、衣料品・食料品間でシェアにおける逆転現象が起きている。
衣料品と食品とでは「商品単価」が大いに異なる。そして商品の回転率も別物。売り場によって明確な区分がされているとはいえ、百貨店やスーパーのビジネススタイルや集客状況が少しずつ変化するに連れ、商品の売上高構成比も様変わりしている実情が分かる。あるいは逆で、売上(≒消費者の需要)の伸び縮みの影響を受け、デパートそのものが変化をしている部分もあるだろう。
デパートは少しずつ「衣料品のデパート」から「衣料品も売る、食品のデパート」のスタイルに移り変わりつつあると見た方が間違いがない。2009年以降は食料品だけで売上の過半数に達していることから、「デパ地下」だけでデパート全体の半分以上の売上をまかなっていることになる(食品売り場が地下に無いデパートもあるが)。
ちなみに直近の2022年では、衣料品15.1%(前年比プラス1.1%ポイント)、食料品66.2%(前年比マイナス1.5%ポイント)、住関品など18.1%(前年比プラス0.3%ポイント)。新型コロナウイルスの流行により衣料品や住関品を購入する目的での来店機会そのものが減じたことに加え、内食特需による食料品への需要急増が生じた2020~2021年の反動があったようだ。とはいえ、「食品デパート化」の色合いが強い状態なことに変わりはない。
具体的な売上の額面
よい機会でもあるので、全売上高に対する比率だけでなく、単純に売上高の積み上げグラフを作成する。これを見ると「衣料品と食料品の売上高構成比順位が入れ替わる」タイミングで、総売上高が天井を打ち、その後は漸減している状況が分かる。なお直近の10年間分を抽出したグラフも別途作成した。
やはり売上高の面から見ても、1990年後半がデパートなどのターニングポイントと考えるのが妥当。今世紀に入ってから、特にこの数年の不景気の中でデパートなどの経営悪化が取り沙汰されているが、問題そのものは10年前ほど前から、あるいはさらにさかのぼり、衣料品の構成比が減少を見始めた1990年前後(30年以上前)からのものであったことが分かる。
またシェア動向を示すグラフでも明らかだが、すでにデパートは食料品が商品のメイン。衣料品と住関品などを合わせても、まだ食料品には届かない実態が、最新値となる2022年の売上状況で改めて確認できる。その直近の2022年を含む10年間の推移でも、衣料品の売上は引き続き減少し、食料品は有意に増加している。住関品はまだふらつき気味な動きのように見えたが、2015年に大きく落ち、そこからわずかずつ回復の動きを見せる程度。さらに2020年以降においては新型コロナウイルスの流行が各品目に大きな影響を与えたことがよく分かる形となっている。特に衣料品の落ち込み、食料品の伸長が著しい。衣料品と住関品などは2021年以降少しずつ回復しているが、それでも事実上2020年の落ち込みを完全には穴埋めできてはいない。
昨今の売上不調が店舗スタイル上の問題なのか、それとも単に周辺環境の変化に応じた改善の模索と実行が足りないのか。このデータだけでは判断は難しい。無論、何もせずに手をこまねいているだけでは、状況の改善を期待できないことは間違いない。
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※百貨店やスーパー
経済産業省・商業動態統計調査では百貨店とスーパーの合計値となる大型小売店の値が計上されているため、今回はその値を用いる。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
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