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消費量トップは中国でその54%は石炭、次いで米国・インド…各国のエネルギー政策(2024年公開版)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
ダムによる水力発電も地形に左右され、国によって利用度合いが変わる(写真:イメージマート)

か一次エネルギー消費量のトップは中国

世界各国のエネルギー政策・事情を知るため必要となる観点の一つが、エネルギーの源としてどのような一次エネルギー(石油や石炭など)を利用しているか、その動向。今回はエネルギーに携わる人々のための公認専門会員組織であるエネルギー協会「the Energy Institute」が発行しているエネルギー白書「Statistical Review of World Energy」を基に、状況を確認する。

「一次エネルギー」とは自然界に存在するそのままの形を用い、エネルギー源に使われているものを指す。化石燃料(石油、石炭、天然ガスなど)、ウラン、そして水力、火力、さらには太陽熱・太陽光・地熱などの再生可能エネルギーが該当する。他方「二次エネルギー」も存在するが、これには電気やガソリンなど、一次エネルギーに手を加えて得られるエネルギーなどが対象となる。今回は「一次エネルギー」を対象にしているため、「国内外を問わず、どのような自然の恵みをどれだけ用い、エネルギーを取得・消費しているか」を知ることになる。

まずは消費量動向。単位のEJ(エクサジュール)はJ(ジュール)の10の18乗を意味する。例えば東日本大震災のマグニチュードは9.0だが、その際に放出されたエネルギー総量は2.0EJとされている。

↑ 主要国一次エネルギー消費量(EJ)
↑ 主要国一次エネルギー消費量(EJ)

2023年に至る動向だが、多くの国でエネルギー消費量は増加を示している。これは曲がりなりにも景況感の回復により、エネルギー消費量が増加したことを意味する。無論景気だけがエネルギー消費を左右するわけではないが、大きな要素であることには違いない。

特に中国は第2位のアメリカ合衆国に大きな差をつけており、新興国の伸び具合が大いに注目される状況となっている。中国は今資料の限りでは世界最大の一次エネルギー消費量を示し、さらに大きな増加の動きを止めていない(米中間の順位はすでに2009年時点で逆転している)。

直近年における序列としては中国、アメリカ合衆国から大きく差をつけられる形ではあるが、インドとロシアが続き、そして日本がようやく入ってくる。

全世界では石油と石炭で6割近く

続いて各国の一次エネルギー源分布。石油や天然ガスなどに区分し、どの一次エネルギーをどのくらいの割合で用いているかを示している。「再生可能」項目は太陽光や風力その他をすべてまとめたもの。「自然エネルギー」とも呼ばれる類の総計である。こちらも上記のグラフと同じく、直近年における総消費量上位10位の国のもの+αについてまとめてある。

↑ 主要国の一次エネルギー消費割合(エネルギー供給元別)(2023年)
↑ 主要国の一次エネルギー消費割合(エネルギー供給元別)(2023年)

・中国は5割強が石炭。

・ロシアは5割強が天然ガス。

・インドは精査対象国中では一番石炭使用率が高い。

・日本は2023年時点で原子力が4%。

・イランやサウジアラビアでは石油と天然ガスでほぼすべての一次エネルギーがまかなわれている。

上位10位にはないものの特異な構成のためグラフに加えたフランスだが、同国ではエネルギー面でも独立独歩的な政策を現実のものとするため、そして電力の他国への販売を一大ビジネスとしているため、他国に関与されにくい原発を促進している。ちなみに2023年におけるフランスの総消費エネルギーのうち35%は原発起因であり、今回取り上げた諸国では最大の比率である。

中国は一次エネルギー源の過半数が石炭。石炭は安価で経済性に優れているものの、「適切」で比較的「高い技術力」による処理をしないと、二酸化炭素の排出量など環境面での負担も大きい。中国の二酸化炭素排出量がアメリカ合衆国を超えて世界一となっているのも、石炭によるエネルギー確保がメインの構造が大きな要因と考えて問題はない。

↑ 世界の二酸化炭素排出量比率(IEA調べ、直近年上位国比率)(2021年)
↑ 世界の二酸化炭素排出量比率(IEA調べ、直近年上位国比率)(2021年)

日本の場合は石油への依存度がかなり高い。しかもそのほぼすべてを輸入に頼っている。エネルギー戦略上決して好ましい状況ではないのは言うまでもない。さらに2011年の震災を経て、エネルギー政策上多様なハードルが積み重なった関係で、昨今の情勢は多分にひずみが生じている。

↑ 日本の一次エネルギー消費量(EJ)
↑ 日本の一次エネルギー消費量(EJ)

問題点の多い石油を用いる火力発電がセーブされていることもあり、石油の消費量は減少傾向にあった(2020年以降は漸増に転じているが)。天然ガスは漸減しているものの、石炭は高い水準のまま。再生可能エネルギーは漸増しているものの、状況の変化に追いつかない状態である。しかも今件数字では表現できないが、再生可能エネルギーは得てして出力の調整が難しく、他のエネルギーと同様に単純に数字を比べるのには難がある。

国民の生活を支えるエネルギーは、それぞれの国ごとに、その国が持つ事情を考慮した上で、その国にもっとも適切で、他国の動向に振り回されることのない、中長期的かつ正しい戦略の構築が必要不可欠となる。その場しのぎでない、安心して日々が過ごせる、バランスのとれたエネルギー戦略の実現を願いたいものだ。

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(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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