スーパーやデパートで取り扱う商品の移り変わりをさぐる
商品の販売シェアは大きな変化を見せる
多種多様な商品が並ぶスーパーやデパート。世の中の流れの中で商品構成も変化を見せている。その実情を経済産業省の商業動態統計調査の公開情報から探る。
主要品目別売上構成比だが、公開データを元に算出した結果、次のようなグラフになった。かつては衣料品の方がウェイトは大きかったが、「デパ地下」といった言葉が露出しはじめた20世紀末から21世紀初頭にかけて、食料品が伸び、衣料品・食料品間でシェアにおける逆転現象が起きている。
衣料品と食品とでは「商品単価」が大いに異なる。そして商品の回転率も別物。売り場によって明確な区分がされているとはいえ、百貨店やスーパーのビジネススタイルや集客状況が少しずつ変化するに連れ、商品の売上高構成比も様変わりしている様子が分かる。あるいは逆で、売り上げ(≒消費者の需要)の伸び縮みの影響を受け、デパートそのものが進化を遂げている部分もあるだろう。
デパートは少しずつ「衣料品のデパート」から「衣料品も売る、食品のデパート」のスタイルに移り変わりつつあると見た方が間違いがない。2009年以降は食料品だけで売上の過半数に達していることから、「デパ地下」だけでデパート全体の半分の売上をまかなっていることになる(食品売り場が地下にないデパートもあるが)。
ちなみに直近の2016年では、衣料品21.3%(前年比マイナス0.7ppt)、食料品58.4%(前年比プラス2.1ppt)、住関品など19.3%(前年比マイナス1.4ppt)。衣料品の漸減、食料品の漸増は10年単位での継続傾向だが、ここ数年奮闘していた住関品などが再びシェア縮小の動きに転じており、ますます「食品デパート化」の色合いが強くなりつつある。さらにここ数年では食料品のシェア、および後述する金額が大いに伸長しており、消費者の利用性向、そしてライフスタイルに大きな変化(主に中食文化の普及浸透)が生じていることをうかがわせる動きが確認できる。
具体的な売上の額面
続いて売上高の積み上げグラフを作成する。これを見ると「衣料品と食料品の売上高構成比順位が入れ替わる」タイミングで、総売上高が天井を打ち、その後は漸減している状況が分かる。なお直近の7年間分(震災直前年と震災年、その後)を抽出したグラフも別途作成した。
やはり売上高の面から見ても、1990年後半がデパートなどのターニングポイントと考えるのが妥当。今世紀に入ってから、特にこの数年の不景気の中でデパートなどの経営悪化が取り沙汰されているが、問題そのものは10年前ほど前から、あるいはさらにさかのぼり、衣料品の構成比が減少を見始めた1990年前後(20年以上前)からのものであったことが分かる。
またシェア動向を示すグラフでも明らかだが、すでにデパートは食料品が販売品のメイン。衣料品と住関品などを合わせても、まだ食料品には届かない実態が、最新値となる2016年の売上状況で改めて確認できる。その直近の2016年を含む7年間の推移でも、衣料品の売り上げは引き続き減少し、食料品は有意に増加している。住関品はまだふらつき気味な動きのように見えたが、ここ数年で減退トレンドにシフトしたようだ。
昨今の売上不調が「デパート」としての店舗スタイル上の問題なのか、それとも単に周辺環境の変化に応じた改善の模索と実行が足りないのか。このデータだけでは判断は難しい。無論、何もせずに手をこまねいているだけでは、状況の改善を期待できないことは間違いない。
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