7月豪雨が起きる前に。ハザードマップの「深くて長いイクラ」に注意。自宅にとどまれるかの判断基準はこれ
ここ数年「7月豪雨」と名のつく水害が4年連続で立て続けに起こっています。「令和2年7月豪雨」、「令和元年7月豪雨」、そして、西日本豪雨の正式名称は、「平成30年7月豪雨」で、「平成29年7月豪雨」は、九州北部豪雨でした。
そのため、7月に入ったことを機に、自宅や職場のハザードマップを読んでおこうと思っている方も多いのではないでしょうか。
でも、ハザードマップを見たものの、「自分が避難した方がいいのか、いつ避難すべきなのかよくわからない」という声も、お聞きします。私自身は、アウトドアで地図を見ることも多く、地図は楽しいと思うのですが、それでも、ハザードマップは、情報が豊富すぎて、色も多彩で、ポイントがわかりにくいかもと思っています。
そこで、小学生でも水害避難のポイントがわかるように、「深くて長いイクラ」に注意という説明をすることにしています。
「深くて長いイクラ」に注意。イクラって何?
では、「イクラ」って何でしょう?
内閣府防災担当が令和3年5月に発行した「避難指示で必ず避難」というフライヤーの最後に、水害の際、「『3つの条件』が確認できれば浸水の危険があっても自宅に留まり安全を確保することも可能です」とあります。
この3つの条件の1の部分に、「ハザードマップ が『家屋倒壊等氾濫想定区域』に入っていないこと」とあり、これが「イクラ」です。
国土交通省(国土地理院)重ねるハザードマップの凡例で、「家屋倒壊等氾濫想定区域」の「氾濫流」についてはイクラのような模様になっています。
マップ上では下記のように表されます。
イクラっぽく見えませんか?これに該当すると浸水の危険のある時(そのハザードマップが想定する雨量の雨が降った時など)、自宅にとどまることができなくなる可能性があります。そして、各自治体のハザードマップでは、「家屋倒壊等氾濫想定区域」の凡例にイクラ模様が使われるケースはわりと多めです。
また、国土交通省(国土地理院)重ねるハザードマップでは、「家屋倒壊等氾濫想定区域」の「河岸侵食」では、イクラほど似ていませんが、ややタラコ?明太子?っぽい凡例になっています。
黒丸のキャビアのような凡例のところもあります。
イクラ模様が多めですが、それ以外の魚卵系になっているハザードマップもあるので、自分の地域のハザードマップを確認してみてください。魚卵系ではないものもあります。
みなさんの地域のハザードマップの凡例が、イクラかそれ以外を含めて、「家屋倒壊等氾濫想定区域」になっているかをまずチェックしてみてください。
イクラだとどうなるの?
では、イクラっぽい模様がある「家屋倒壊等氾濫想定区域」に入っていると、どうなってしまうのでしょうか?
1つめは、家屋倒壊等氾濫想定区域(氾濫流)と言われ、これに当たると、「流速が速いため、木造家屋は倒壊するおそれがあります」。この場合、木造家屋の方は、自宅にとどまることは危険になります。
また、2つめは、家屋倒壊等氾濫想定区域(河岸侵食)と言われ「地面が削られ家屋は建物ごと崩落するおそれがある場合」です。この場合は、マンション等であっても建物ごと崩落してしまうため、自宅にとどまることが危険になる地域です。
流れと深さの関係
この家屋倒壊等氾濫想定区域(氾濫流)に該当するとされる場合の流速や、水深の関連については、以下のデータによって判断されています。
流れが速くなれば、水深が深くない場合であっても、家屋倒壊等氾濫想定区域(氾濫流)に該当することがあります。流速4m/sになると、2mの水深でも家屋倒壊が起こる可能性があります。また、海の事故の主な発生原因である離岸流について、離岸流を見分けられますか?という記事を書きましたが、離岸流の流速は、流速2m/sです。同じ速さの流速2m/sでは、3mの水深になれば、家屋を倒壊させてしまうのです。洪水の威力をイメージしていただけたでしょうか?
流れがあれば、危険が増える
水害を想像する時、水たまりのような静水をイメージしている方もいるかもしれません。イメージが静水になっていると、マンホールに落ちないように杖を持ち、運動靴さえ履けば、例え浸水していても避難できると勘違いしてしまいがちなのですが、危険です。
速さと深さによっては、上記のように家屋も倒壊してしまう力が想定されているのです。球磨川の水害では、「津波のようだった」という被災者の声もありました。流れがあると、足首くらいの深さでも歩けなくなったり流されてしまうこともあります。通常の川の水圧については、国土交通省のRPG風こども向け水難防止動画が秀逸!親子で見てで、実験動画も掲載しています。浸水してからの避難は、このような流れの速さも含め、様々なリスクがあります。浸水するより前に避難しなければ、どんな装備でも身を守れない可能性が高まってしまうことを、知っておいていただければと思います。
まだ情報が反映されていないだけの自治体もあります
ところで、家屋倒壊等氾濫想定区域の情報は、最新情報でもあるので、まだ自治体のハザードマップに反映されていない場合があります。イクラなどの記載がないからと言って、家屋倒壊等氾濫想定区域が、その地域にないと言い切れないことに注意が必要です。
「深くて長いイクラ」に注意 深さって何?
イクラ模様があるかどうかをチェックしたら、次に確認するのは、浸水の深さです。ただ、深さは一番気になる部分だと思うので、多くの方が最初に見ている項目だと思います。
2階建ての家の場合は、水深が3m以上になるかどうかが自宅以外に避難するかどうかの基準になります。3mを超えると、2階が床上浸水になるので、2階建ては自宅以外に避難します。
また、1階のみの浸水であっても、家具が浮いてしまい、上の階への避難を妨げることが東京理科大学 土木工学科 二瓶泰雄教授の調査や実験からわかっています。実験映像が、朝日デジタルからYouTubeでも配信されており、2階まで浸水していなくても、なぜ主に高齢者の方が自宅で亡くなってしまうのかが、わかる映像になっています。家具の固定は地震対策だけでなく、水害対策としても有効です。
マンションの場合も、浸水深と居室の階層を比べてみてください。5m以上の浸水があれば3階も床上浸水になります。
想定の浸水深より自宅が低い場合は、自宅にとどまるのではなく、別の場所に避難します。
「深くて長いイクラ」に注意 長いって何?
最後のチェック項目の長いというのは、浸水継続時間です。
これも、ハザードマップに記載されている地域とまだ記載されていない地域があるので、注意してください。
例えば、東京都の江東5区では、海抜0m以下地域も多くあります。
このような地域では、一度浸水すると水がなかなか引かないため、2週間など、長期間、浸水が継続することが想定されています。
この場合、浸水継続時間以上の備蓄があれば、自宅にとどまることも可能です。ただ、江東5区のような人口密集地の場合、もし救助が必要になったとしても、全ての人を救助するのに時間がかかります。そして、2週間全く外に出られず外部から支援も難しくなる状況は過酷です。
そのため、江東5区では、浸水のおそれがない地域への広域避難が勧められています。
江戸川区のハザードマップでは、「ここにいてはダメです」と表紙でわかりやすく広域避難が勧められています。
ハザードマップに色や模様がなくても安全を意味するわけではありません
誤解が多いのは、洪水ハザードマップに色や模様がついていない場合、うちは安全と思ってしまうことです。白くても「安全」を意味するわけではありません。他の想定を加味したり、想定外が起こった場合などには、浸水被害はありえます。
コロナ禍での避難は、避難所・避難場所以外の避難も検討を
最後に「避難」とは「難」を「避」けることなので、小中学校や公民館に行くことだけが避難ではありません。自宅にとどまれない場合であっても、どこかによい避難候補地がないか、被災する前に、あらかじめ検討しておくと、いざという時にスムーズです。防災講座の参加者の中には、知人宅だけでなく、これを機に、水害の心配のない、ワインが美味しい宿泊施設に避難すると決めた方もいました。
以上、自宅にとどまれるかどうかは、「深くて長いイクラ」をチェックしてみてください。これから、どの地域のものであっても、ハザードマップを見る時は、イクラのにぎり寿司(軍艦巻き)をイメージしていただければ嬉しいです。
そして、「イクラ」「深さ」「長さ」は、災害が来る前にご確認ください。災害時、WEB上のハザードマップはアクセスしにくくなったケースもありました。お読みいただいたご縁ということで、今日中によかったら確認していただければいいなと思っています。