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レッズからリリースされた秋山翔吾が見舞われた3つの不運

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
レッズからリリースされた秋山翔吾選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【マイナー降格を受け入れずFAの道へ】

 レッズは現地時間の4月5日、秋山翔吾選手のリリース(解雇)を発表した。この結果秋山選手はFAとなり、日米問わず全チームと契約交渉できる立場になった。

 レッズは秋山選手と3年契約を結んでおり、リリースした後でも契約最終年となる今シーズンの年俸800万ドル(約9.8億円)の支払い義務を負うことになる。

 秋山選手はつい先日、チームから開幕ロースターの28人に入れないことを通達されており、通常ならレッズはMLB在籍日数が3年未満の選手対しマイナーに降格させるオプション権を有しているため、秋山選手もマイナーに降格させ、そこでシーズンを迎えればいいはずだった。

 ところが秋山選手の場合は契約にマイナー降格拒否権が含まれていたため、今回は彼がそれを行使。そのためレッズとしては28人ロースターに入れるか、リリースするかの二択しかなかった。

 現在はどのチームも、4月8日のシーズン開幕に向けロースターの整理を行っている最中で、新たな選手補強に動きにくい状況にある。ただし秋山選手と最低年俸で契約できるため、大きなリスクを負わず左打者を獲得できるメリットもあるのは確かだ。

【この2年間で激変した秋山選手を取り巻く環境】

 2020年1月にレッズ入りが決まった際、秋山選手がこんなかたちでチームを去ることになるとは誰も予想していなかっただろう。

 ここ数年で広島の菊池涼介選手、日本ハム(当時)の西川遥輝選手がMLB挑戦を表明しながらも納得するオファーが届かず断念していることからも、MLBでの日本人野手の評価は決して高くはなかった。

 そんな中で、どちらかというと低予算チームのレッズが3年総額2100万ドル(約25.8億円)で秋山選手を迎え入れたのは、大きな期待の表れでもあった。

 だが秋山選手を取り巻く環境は、この2年間で急激に変化してしまった。すでに米メディアが報じているように、昨シーズン終盤でもレッズは秋山選手にマイナー降格を打診していることからも、チーム内での彼の評価はかなり下がっていたと考えざるを得ない。

【秋山選手が見舞われた3つの不運】

 もちろん秋山選手が期待通りの活躍をしていれば、こんなかたちでレッズを去ることはなかっただろうし、昨シーズンの主力外野手だったニック・カステヤノス選手やジェシー・ウィンカー選手が抜けた今シーズンは、チームの主力として期待されていただろう。

 ただ秋山選手側から見れば、なかなか自分の実力を発揮できる場所と時間が与えられなかった面もある。それは3つの不運に見舞われたからだ。

 まず1つ目が、新型コロナウイルスだ。MLB移籍1年目で様々な環境に適応しなければならない大切なスプリングトレーニングが途中で打ち切られた上、何とかシーズン開幕が決まった後も短い準備期間の末60試合の短縮シーズンになってしまった。

 同じく移籍1年目だった筒香嘉智選手も期待通りの成績を残せなかったことからも、短期間でMLBに適応するのは簡単ではなかった。

【負傷離脱中に外野陣が固まってしまった昨シーズン】

 そして巻き返しを目指した昨シーズンは、スプリングトレーニング中に左ハムストリングを負傷し、開幕前から長期離脱を余儀なくされてしまった。

 その一方で、チームは上記の2選手に加えタイラー・ナイキン選手の3選手が、すっかり先発外野手に定着し、さらにアリスティーディス・アキノ選手がすべての守備位置に入れる控え外野手として機能していたため、復帰後の秋山選手の出場機会は2020年シーズンよりも減少することになった。

 前述したように、チーム内の秋山選手の立ち位置はまったく変わってしまい、シーズン終盤にマイナー降格を打診されることになったというわけだ(この時もマイナー降格拒否権を行使してメジャーに残っている)。

【完全に若手中心のチーム再建に乗り出したレッズ】

 そして最後の不運は、レッズの方針転換だ。

 ロックアウトが解除された後、レッズが真っ先に行ったのが、ソニー・グレイ投手とウィンカー選手の主力2選手のトレードだった。またFA市場にほとんど手を伸ばすことはなく、積極的な選手補強も行わなかった。

 むしろ年俸高額選手を整理し、前年よりも年俸総額を下げる結果になった。それはつまり、今シーズンからレッズは若手中心としたチーム再建期に入ったことを意味している。

 もしレッズが今シーズンもポストシーズン進出を目指していたのなら、グレイ投手とウィンカー選手をトレードするはずはなかったからだ。

 つまりレッズとしては今シーズン終了後に契約延長の考えない秋山選手をこのままチームに残すよりも、800万ドルを無駄にしてでも積極的に若手選手を起用した方が、チームの将来にプラスだと判断したのだ。

 秋山選手としては、このままMLB挑戦を諦めるのは無念でしかないだろう。果たして次のチームはどこになるのだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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