年収300万円未満では59.1%…世帯年収別にパソコンなどの普及率の現状をさぐる(2024年公開版)
インターネットへのアクセスの窓口はパソコンからスマートフォンやタブレット型端末へとシフトしつつある。若年層のインターネットの利用の仕方をはじめ、何かと注目されるそれらの端末の、世帯ベースでの普及率の実情を、内閣府の消費動向調査(※)の結果から世帯年収別に確認していく。
今回は二人以上世帯のみを確認の対象とする。世帯の構成種類となる単身世帯と二人以上世帯では世帯年収の意味合いが大きく異なるのに加え、主に若年層、とりわけ未成年者のパソコンやスマートフォンの利用機会に関する動向を確認するのが今回の目的であり、他方で未成年者の単身世帯というケースは想定しにくいからである。つまり今回は二人以上世帯において、子供=未成年者や成人の若年層が構成員として存在しているケースを想定している。二人以上世帯全部がそれに当てはまるわけではないが、今調査の結果では子供がいる・いない別の区分が無いため、もっとも近い値を精査できる二人以上世帯を対象とした。
次に示すのは直近の2024年における、世帯年収別パソコン、スマートフォン、タブレット型端末の普及率。1世帯に何台保有していても、あるか無いかのみでの回答なので、100%を超えることはない。なおグラフの表記上、一部の属性では「以上」を省略している。例えば「300~400万円未満」は「300万円以上400万円未満」を意味する。
全種類ともおおよそ高世帯年収ほど高普及率を示している。一方でスマートフォンは300~400万円未満で普及率がほぼ頭打ちとなる。この動きはいわばカウンターストップ、上限に近付いたためのものと考えられる。見方を変えるとスマートフォンは9割台が世帯普及率の上限と見てよいかもしれない。パソコンは漸増の動きだが、タブレット型端末は950-1200万円未満まで漸次増加し、1200万円以上では値がほぼ横並びになるので、6割強が事実上の上限のようにも見える。
いずれにせよパソコンやスマートフォンなどの普及率は、世帯年収で確実に違ってくる。もっともパソコンとスマートフォンの普及世帯がだぶっていることは多分にありえるため、「スマートフォンがパソコンの代替として用いられている」「スマートフォンがパソコンを取得できない世帯の代用品的立ち位置として存在する」などの立証は、今件データだけでは不可能。
保有世帯における平均保有台数を確認すると、普及率とは少々異なる動きを示しているのが分かる。
スマートフォンでは世帯年収とともに上昇する普及率は一定値で頭打ちになるが、それより上の世帯年収でも複数持ち世帯が増え、保有台数は増えていく。頭打ちとなるのは750~950万円未満の世帯。パソコン保有世帯では頭打ちも見られず、世帯年収の増加とともに、保有台数は増えていく。世帯人数の区分は元のデータでもされておらず精査は不可能だが、世帯台数が多ければ各世帯構成員がパソコンに触れる機会は増え、子供専用のパソコンが用意されている可能性も高くなる。タブレット型端末はスマートフォンと似たような動きだが、増加度合いは穏やか。
これらの数字を見るに、「パソコン、さらにはスマートフォンやタブレット型端末は世帯年収が高くなるほど普及率は高く、保有世帯における保有台数も多くなる」ことは大雑把ではあるが確定事項と見なしてよい。一方で「パソコンを持てない低年収世帯層が、その代替端末としてスマートフォンを取得するようになった」との仮説を裏付けるまでには至らない。
ただし、これまでパソコンを所有していなかった世帯が、スマートフォンの所有ではじめてインターネットへのアクセス機会を得る事例は多分に考えられる。何しろ世帯年収区分で最低額の層でも8割以上の世帯がスマートフォンを持っているのだから。
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※内閣府の消費動向調査
今後の暮らし向きの見通しなどについての消費者の意識や各種サービスなどへの支出予定、主要耐久消費財などの保有状況を把握することで、景気動向判断の基礎資料を得ることを目的としている調査。調査世帯は、二人以上の世帯、単身世帯毎に三段抽出(市町村・調査単位区・世帯)により選ばれた8400世帯。調査時期は毎月1回で、調査時点は毎月15日。毎月10日前後に調査対象世帯に調査票が届くよう郵送し、毎月20日頃までに届いた調査票を集計する。
毎月調査を実施しているが年1回、3月分において、他の月よりは細部にわたる内容を調査している。その中の項目の一つ「主要耐久消費財の普及・保有状況」を今件精査では用いている。これは「回答者の世帯において対象品目を回答時点(直近分の場合は2024年3月末時点)で持っているか否か」「持っている場合は保有数量はどれほどか」を尋ねた結果。具体的な利用状況は尋ねていない。
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