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結局、選挙で、選択肢のない選択を行うことはできない――2014年大阪市長選挙、橋下徹氏再選を受けて

西田亮介社会学者/日本大学危機管理学部教授、東京工業大学特任教授

2014年の大阪市長選挙が終わった。「選択肢のない選択を行うことはできない」という感想だけが虚しく残った。

大阪市長選、橋下氏が再選…投票率23・59% : 選挙 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/election/local/news/20140323-OYT1T00422.htm?from=tw

出直し大阪市長選、橋下氏が当選 投票率は過去最低- 朝日新聞デジタル

http://t.asahi.com/eaof

大阪市長再選の橋下氏の得票は前回の半分- 47NEWS(よんななニュース)

http://www.47news.jp/FN/201403/FN2014032301001940.html

大阪市長選挙 開票速報∥大阪市選挙管理委員会

http://www.city.osaka.lg.jp/contents/wdu240/sokuho/kaihyo_data_10.html

2014年の大阪市長選挙は、最終的に投票率23.59%で、橋下徹氏の再選が決まった。一時期、あれほどまでに騒がれた、同氏と維新の会、そして大阪都構想だが、首都圏で生活していると、まったくといっていいほど、話題にならなかった。

投票率も確かに低い。この投票率の低さはおそらく話題になるだろうが、本質とはいえない。最終的には、「正統性を有する統治機構によって、良い政策が、適切なプロセスを経て実行され、それらが実現するか否か」が問題だ。

投票率の低さは、しばしば問題視されるが、今回の大阪市長選挙も形式的には正統性を満たしている。公選法は、下記のように有効得票数について定めている。

(衆議院比例代表選出議員又は参議院比例代表選出議員の選挙以外の選挙における当選人)

第九十五条  衆議院(比例代表選出)議員又は参議院(比例代表選出)議員の選挙以外の選挙においては、有効投票の最多数を得た者をもつて当選人とする。ただし、次の各号の区分による得票がなければならない。

一  衆議院(小選挙区選出)議員の選挙

有効投票の総数の六分の一以上の得票

二  参議院(選挙区選出)議員の選挙

通常選挙における当該選挙区内の議員の定数をもつて有効投票の総数を除して得た数の六分の一以上の得票。ただし、選挙すべき議員の数が通常選挙における当該選挙区内の議員の定数を超える場合においては、その選挙すべき議員の数をもつて有効投票の総数を除して得た数の六分の一以上の得票

三  地方公共団体の議会の議員の選挙

当該選挙区内の議員の定数(選挙区がないときは、議員の定数)をもつて有効投票の総数を除して得た数の四分の一以上の得票

四  地方公共団体の長の選挙

有効投票の総数の四分の一以上の得票

(強調は引用者による)

投票率ではなく、「有効投票の総数の四分の一以上の得票」とあるから、橋下氏の得票数は、この条件を満たしている。そもそも投票率は、何%なら、十分なのだろうか。投票率100%以外は、相対的にしかその高低を論じることはできない。

(とくに若者の)政治参加云々をいうなら、現象面としての投票率ではなく、具体的な阻害要因である立候補の年齢制限や供託金の金額の見直しに目を向けるべきではないか(とくに供託金の金額は、長いデフレ下にあるのだから、見直されるべき、という議論があってしかるべきにも思える。若年世代や無所属、新興政党ほど、負担感が思いはずだ)。投票率とその普及啓発の議論はしばしば行われるが、根本的な問題については棚上げされている(一般に、現職ほど慣れ親しんだ現行ルールを維持する動機が強く働く)。

今回の大阪市長選挙では、自公はじめ他の政党はそもそも候補者を擁立しなかった。勝算が見えていたので、あえて擁立しなかったともいえる。橋下氏への疑義を呈するのであれば、十分な数の白票を投じるという選択肢もありえなくはないが、それも行われていない。やはり、橋下氏がこの選挙に勝利したのである(マック赤坂氏らへの、暴行疑惑問題がお咎め無しで済めば)。

見方を変えれば、他の政党の不戦敗でもある。制度に課題があれば、制度の変更を行うこともできなくはないが、短期的には、現行ルールのもと戦うしかない。自公が候補者を擁立しないなら、他の政党にとっては尚更チャンスでもあった。最初から勝負を投げるべきではなかったのではないか。有権者は選択肢のない選択を行うことはできない。厳しい選挙戦が予想されただけに、もしも勝てれば、いろいろな風向きを変える起点になりえたかもしれない。その機会に挑戦すらしなかったことを、有権者は冷ややかに見ていただろうし、記憶もするだろう。

「一定の賛同を得た」「多数の横暴は許されない」といった文言は聞き飽きたし、有権者の支持を集められないことも、この数回の主要な選挙を振り返るだけでは明白だ。2015年の統一地方選挙、2016年の国政選挙もある。とくに、リベラル陣営はきちんと選挙に勝つことを考え直すべきだ。

社会学者/日本大学危機管理学部教授、東京工業大学特任教授

博士(政策・メディア)。専門は社会学。慶應義塾大学総合政策学部卒業。同大学院政策・メディア研究科修士課程修了。同後期博士課程単位取得退学。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科助教(有期・研究奨励Ⅱ)、独立行政法人中小企業基盤整備機構経営支援情報センターリサーチャー、立命館大学大学院特別招聘准教授、東京工業大学准教授等を経て2024年日本大学に着任。『メディアと自民党』『情報武装する政治』『コロナ危機の社会学』『ネット選挙』『無業社会』(工藤啓氏と共著)など著書多数。省庁、地方自治体、業界団体等で広報関係の有識者会議等を構成。偽情報対策や放送政策も詳しい。10年以上各種コメンテーターを務める。

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