中国人民最大の懸念事項は「公務員の腐敗・汚職」
日本からはその内情が伝わりにくい中国の人達。日々の生活の中でどのような懸念を抱いているのか。アメリカ合衆国の民間調査会社Pew Research Centerが2015年9月に発表した、中国における民衆の懸念事項に係わる調査報告書「Corruption, Pollution, Inequality Are Top Concerns in China」から確認していく。なお同調査は中国の主要都市で2015年4月15日から5月27日にかけて、対面方式で18歳以上の人に対して行われたもので、有効回答数は3649件。アメリカ合衆国の民間調査機関による調査で、対面調査ではあるが、同国の国家体制の特質上、国への批判的内容に関しては、さまざまな心境・情勢が回答時に作用しうることを留意する必要しておくがある。
次に示すのは中国で問題視、懸念されている事案を列挙し、それぞれについて回答者がどの程度懸念を覚えているかに関して、「大いに懸念」「懸念」「ささいな問題」「問題では無い」(+分からない、回答拒否)の中から一つを選択してもらい、そのうち前者2つ、つまり懸念派をまとめたもの。もっとも多くの人が懸念を抱いている事案は、公務員の汚職・腐敗だった。
この「公務員」の対象は広範囲に渡る。漏れ伝わる地方のお役所などにおける汚職事件の数々を認識し、あるいは実体験し、それらへの憂いを覚える人が5人に4人を超えていることになる。強い懸念を覚える人は44%。今設問では最大値。
次いで多いのは大気汚染、そして水質汚染。日本にも間接的、さらには一部地域では直接的にに影響が生じるこれらの問題に対し、中国の国民自身も強い問題意識を有している。
水質・大気汚染同様、日本でもしばしば報道される食の安全や商品の品質、医薬品の安全性に対する心配度も高い。国外へ輸出される商品だけでなく、国内流通品においてもまた、さまざまな問題が生じていることが容易に想像される。
一方、これらの問題に対して、中国の人達はどのような展望を抱いているのか。
主な項目のみではあるが、汚染や腐敗に関しては、かなり楽観的な想いを有している。6割強が状況の改善を見込み、悪化は2割にも満たない。他方、水質汚染や大気汚染、貧富格差については、状況の悪化と改善がほぼ同率で1/3程度、変化はないとする意見が2割強となっている。食の安全ではやや楽観派が多く、改善が4割強、悪化は3割近くに留まっている。
果たして国民の期待に沿えるような施策を打ち出して実行、そしてその効果が出るのか否か。今後の動向には大いに注目したいところではある。
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