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今や食品コンビニ…コンビニの食品種類別売上動向をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 最近では生野菜の販売すら珍しくなくなったコンビニだが(筆者撮影)。

・ローソンの売上の25.2%はたばこによるもの(2018年)。

・ローソンの売上の6割以上が食品によるもの。

・たばこは粗利益率が低い。同じ売上でも利益は数分の一。

食品コンビニ化への動きを見せる売上高動向

食品や日用品、たばこなど多様な商品を販売するコンビニエンスストア。そのセールス実態を、売上高では国内業界第3位の座にあるローソンの統合報告書(アニュアルレポート)から確認していく。

ローソンでは決算が2月締めであることから、「2018年」の場合は2017年3月1日から2018年2月28日までの値を意味している。まずは売上全体に占める主要商品区分別の割合をグラフ化し、状況を確認する。

なおローソンの統合報告書では2018年発表分から詳細な売上構成比や金額に関して、チェーン全店ではなく単体の値への開示へと手法を変えている。そのためさかのぼれる2014年分以降は単体(ローソン100などは含まず)の値で、それ以前はチェーン店全店での値となることから、一部のグラフでは2013年と2014年の間に小さからぬギャップが生じている。

↑ 商品群別売上高構成比率(2013年まではチェーン全店・2014年以降は単体、ローソン)
↑ 商品群別売上高構成比率(2013年まではチェーン全店・2014年以降は単体、ローソン)

2010年の売上構成比で「たばこ」は前年比でやや減退している。これは金額そのものは伸びているものの、伸び率は前年ほどではなく、他の分野の伸び具合に比べて大人しかったため、相対的に比率が落ちている次第。その年以外は2013年まで一様に「たばこ」の売上が占める比率は増加をしており、コンビニにとって「たばこ」は年々重要な商材として位置づけられていたのが分かる。また2010年の特異な動きとして「日配食品」が伸びているのが確認できるが、これは「ショップ九九」で該当項目商品が大いに伸びたのが原因。

震災直前となる2011年分(2010年3月~2011年2月)、そして震災時期を含む2012年(2011年3月~2012年2月)では多少の増減はあれど、中期的な動きに変わりは無い。食品販売の占める割合が大きく、「食品コンビニ」と表しても問題はなさそう。また2010年10月に大規模なたばこの値上げが実施され、これを受けて2011年以降の「たばこ」売上・シェアは増大。2012年では全売上の1/4に達している。

2013年に入るとこれまでとはやや変わった動きも生じている。「たばこ」の伸び、「加工食品(たばこ除く)」「非食品」の減少は相変わらずだが、「ファストフード」(※ローソンではカウンターフーズの他にお弁当や調理パンの類も「ファストフード」に該当させている)が大いに伸びを見せている。これはフライヤー食品をはじめとした惣菜の積極的な展開によるもの。類似商品の「日配食品」(ベーカリー・デザート・アイスクリーム・生鮮食品など)は比率こそ落としているが、金額面では小さからぬ伸びており、中食需要に確実に応え、売り上げに反映しているのが確認できる。

2013年に入るとこれまでとはやや変わった動きも確認できる。「たばこ」の伸び、「加工食品(たばこ除く)」「非食品」の減少は相変わらずだが、「ファストフード」(※ローソンではカウンターフーズの他にお弁当や調理パンの類も「ファストフード」に該当させている点に注意)が大いに伸びを見せている。これはコンビニ関連の記事で繰り返し解説している中食需要の拡大と、それに伴う(あるいはそれを誘発した)フライヤー食品をはじめとした惣菜の積極的な展開によるもの。類似商品の「日配食品」(ベーカリー・デザート・アイスクリーム・生鮮食品など)は比率こそ落としているが、金額面では小さからぬ伸びており、中食需要に確実に応え、売上に反映しているのが確認できる。2013年から2014年にかけて複数の項目で値が大きく動いているのは、グラフ生成時の対象店が変わっているため。

直近となる2018年分(2017年3月~2018年2月)では、前年から大きな変動は無い。たばこの構成比率は前年比で増加している。金額も伸びているがこれに関して報告書では「加熱式たばこ関連の売上が増加したことなどにより、前期の売上を上回りました」とあり、たばこ協会の報告書などで急速な売上の減少が確認できる紙巻きたばこの代替品として大きく注目されている加熱式たばこが、紙巻きたばこの減少分を補うほどの売上を計上した実情が確認できる。

続いて金額ベースで、積み上げ型のグラフにしたのが次の図。こちらも2013年から2014年にかけて対象が変わっているため、不規則な動きが生じていることに注意。そして「たばこ」そのものはかなりの額で金額をふくらまして「いた」。

↑ 商品群別売上高(2013年まではチェーン全店・2014年以降は単体、ローソン)(億円)
↑ 商品群別売上高(2013年まではチェーン全店・2014年以降は単体、ローソン)(億円)

コンビニでお世話になっている人も多いであろう「ファストフード」だが、ローソンに限れば「夕食の一品」「単身者や高齢者の方にも、おかずを一品増やしたい主婦の方にも」と多様な方向性、ターゲットを見据え、ブランド化と商品開発を進めているレジ横フライ物や厨房で逐次調理される総菜・お弁当が堅調に推移し、2018年では前年比で4.3%のプラスを計上した。「日配食品」は大きく伸びて6.6%のプラス。コンビニはますます食品コンビニ化の様相を示しつつある。

そして「たばこ」だが、ローソンに限定すれば直近では前年比プラス267億円(プラス5.7%)。食品群に負けじと劣らぬ伸びを計上しているが、これは上記にある通り加熱式たばこの堅調さを受けた結果である。

たばこは儲かるのか否か

売上高の上昇が続いていた「たばこ」だが、他の商品と比べて「たばこ」の粗利益率は低い。言い換えれば「儲けが少ない」商品。同じ売上をお弁当とたばこで計上した場合、利益はおおよそたばこがお弁当の1/3から1/4との計算になる。人件費を考えると、色々と頭の痛い話に違いない。なおこちらは以前から単体のデータが計上されているため、連続性に問題は無い。

↑ 商品別総粗利益率(単体、ローソン)
↑ 商品別総粗利益率(単体、ローソン)

他のカテゴリの粗利益率が高いのに対し、たばこを含む「加工食品」は一段と低い値。最新のレポート中ではたばこの粗利益そのものに関する直接的言及は無いものの、「粗利益率の低いたばこ」との表現があり、たばこの粗利益率が他商品と比べて低い実情がうかがえる。

実際、たばこの販売店マージン(手数料)は10.0%であり、他商品と比べて段違いの低さとなっている。「儲け」の観点では「たばこは儲かりにくい」と評しても問題はあるまい。たばこはむしろついで買い、リピート率の高さが魅力なのだが、その力のピークはすでに過ぎている。以前と比べて各コンビニ店でたばこのラインアップを増強したり、積極的な宣伝活動をしているのは、少しでもその減少の影響を薄めようとしていると考えれば、理解はできる。

データの継続性・蓄積性や情報公開度合いを考慮し、ローソンのデータを基に精査を行ったが、他のコンビニでも状況に大きな変化はないものと考えられる。たばこ販売動向の月次データを見る限りでは、「値上げ分が売上本数減少分をカバーする」時期はすでに過ぎている。コンビニでもたばこの売上額は、今後継続的に落ち込むことになる。

各コンビニとも商品単価の高いアイテムや、独自の付加価値を織り込むことで、粗利益率アップを模索している。ローソンの「ウチカフェスイーツ」に代表されるような自社ブランドによる甘味系新商品の大規模展、他分野で人気のあるアイテムとの共同開発・イベントの実施などが好例である。

見通しが立ちにくい状況となった主軸商品の一つ「たばこ」の代替品として、ローソンも含めコンビニ大手ではカウンターに設置した専用機器によるドリップコーヒーの販売を拡大している。さらに関連商品の積極開発やイートインコーナーの展開など、キャラクタアイテム、スイーツに続き、コンビニの集客・売上向上を支える大黒柱的存在としてドリップコーヒーを位置づけている。その上、そのコーヒーとの連動性の高いドーナツを相次ぎ導入し、注目を集めている。中華まんやおでんと比べ、通年販売が可能なことに加え、多様な商品展開が容易にできるため、柔軟性の高い「ついで買いアイテム」として、その注力度合は並々ならぬものがある。

多数のサービスを集約し、地域社会に浸透した「よろずや」的存在感をますます強めつつあるコンビニ。高齢化社会の到来や「買物困難者問題」など、小売業に関わり合いのある問題への対応をも見せながら、各種施策がどこまで功を奏するのか。流行のアンテナ的な立場をも持つコンビニ各社の動向に、今後とも注目していきたい。

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(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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