猿之助さん一家「心中事件」と『女性セブン』セクハラ告発報道との気になる関係
社会に衝撃を与えながらいまだに真相がよくわからないのが、5月18日に明らかになった市川猿之助さん一家の「心中事件」だ。5月25日発売の『週刊新潮』『週刊文春』『女性セブン』の3誌が大特集を組んでいる。
『週刊新潮』6月1日号は「『猿之助』7つの謎」と題する9ページに及ぶ特集。記事中で、一命をとりとめた猿之助さんについて、自殺ほう助や同意殺人の容疑も考えられるという指摘がなされている。恐らくそうした捜査が行われているのだろうから、終結までは詳細は明らかにならないのかもしれない。
『女性セブン』が告発したセクハラ疑惑
気になるのは、事件が明らかになった5月18日に発売された『女性セブン』6月1日号が「歌舞伎激震の性被害!市川猿之助濃厚セクハラ」という告発記事を載せていたこととの関連だ。
その『女性セブン』の記事では、猿之助さんのセクハラ疑惑について、例えば関係者のこういうコメントを載せていた。
「猿之助さんの舞台に立った経験を持つある役者は、猿之助さんとの“関係性”にかなり苦悩していました。たとえば地方興行などの際、頻繁に猿之助さんのホテルの部屋に誘われ、お酒につきあわされていた。そればかりか“隣に寝なさい”と指示され、横になると布団の中に潜り込んできて、キスをされたり、身体を弄ばれたりと過剰な性的スキンシップをされるというのです」
昨年、映画界の性加害問題が次々と暴かれたが、歌舞伎の世界も同じだったというわけだ。
匿名の劇場関係者はこうもコメントしている。
「師匠と弟子、座長と役者・裏方の関係は絶対で、無言の圧力のなかで、間違っても口答えしたりすることはできません。性被害に悩んだ役者も“がまんするしかない”と無言で耐えていたといいます。厳然たる上下関係を感じ、泣き寝入りするしかないんです」
情報を提供した人物への「犯人探し」も
猿之助さんが『女性セブン』の取材を受け、自身への告発がなされることを気にしていた可能性はおおいにあるが、発売前にどんな対応がなされていたのか。『週刊文春』6月1日号「猿之助“心中”『次の世で会おうね』悲恋と性加害全内幕」はそれについても詳しく報じている。
それによると、『女性セブン』が5月15日に猿之助さんを直撃。その直後から関係者が対応に動き、発売前日には猿之助さんは一門の弟子を集めて「記事に対し、強く対応していこう」と語っていたという。
そしてセクハラ情報を週刊誌に提供した人物について「犯人探し」も行われていたと、記事中で関係者がこう証言している。
「歌舞伎の興行主である松竹の動きは早かった。五月十五日に猿之助さんが記者に直撃取材をかけた直後から“犯人探し”を行い、猿之助さんと共演経験のある役者が“告発者”であると見て、事情を聞いていた。セブンの取材を受けた彼は証拠となる資料などを提供したといいます。彼はセクハラを拒否したことで、猿之助が関わる舞台への参加が叶わなかったと周囲に話していました」
『週刊新潮』も含め、『女性セブン』の記事が何らかのきっかけになったのではないかという見方のようだ。
5月31日付「デイリー新潮」は、猿之助さんが警察の事情聴取に対して、5月17日の夜の経緯をこんなふうに話していると報じている。
〈午後4時半から家族での話し合いを始めました。結論が出たのは午後8時のことでした〉〈こんなことを書かれたら、もう生きていても意味がない。家族みんなで死のう、ということになりました〉
つまり、『女性セブン』の報道が原因だったという見方だ。セクハラ告発報道と「一家心中」に因果関係があるとなると、これはこれで考えるべき新たな問題を提起していると言えるかもしれない。
『女性セブン』第2弾に書かれた情報提供者のコメント
当の『女性セブン』は6月8日号に「市川猿之助 本誌だけが知る『宿縁と過ち』全真相」という記事を「独走第2弾」として掲載。同誌にセクハラの情報を提供したという匿名の人物がこう語っている。
「性的ハラスメントを受けたと声を上げたことがこのような悲劇が起きた一因になってしまった可能性を想うと、とても苦しい」
まだ真相は明らかになっていないから、現状で断定的な論評は難しい。ただ、これまで明らかになりつつある情報から、『女性セブン』のセクハラ告発報道が事件の引き金になったとすると、これはこれで深刻な事柄かもしれない。
実は週刊誌の報道には、猿之助さんのプライバシーに関わる情報がさらに書かれているのだが、そうしたことも含めてこの事件、報道のあり方を含めた大きな議論に発展しそうな気もしないではない。しばらく推移を見守っていきたいと思う。